100均で始まる恋もある2

三森のらん

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8.クリスマスツリー

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 クリスマスイブの日曜日。今日もテルくんはバイトに行ってしまった。稼ぎ時、というのもあるだろうが、都合よく使われている気がしないでもない。
 彼を見送った後、家のことを一通り終えると、買い物に出た。クリスマスイブなだけに、街中は活気にあふれている。今まではその空気の中にいるのも辛く感じていたが、今の俺は、楽しむ余裕すら出てきていた。

 買い物を終えて家に戻ると、俺は久しぶりに外にある物置のドアを開けた。
 薄暗い物置の中は、少し埃っぽかったが、意外に整然と整理されていた。生前のさおりがきちんとしていたのだろう。一人暮らしになってからは、滅多にここを使うこともなかったせいもある。
 目当ての物はすぐに見つかった。奥の方に仕舞い込んでいたものの、箱の形や大きさや、デザインのせいもあってか、すぐに目に入ってきたのだ。いくつかの荷物をよけて、箱を取り出す。薄暗い物置だけに、箱には日焼けの跡もない。白いクリスマスツリーにサンタクロースの絵が描かれた大きな箱を抱えると、物置のドアを静かに閉めた。
 リビングに持ち込んで、箱の中から取り出す。一度しか使っていないから、大した汚れも傷もない。

「こんなにでかかったっけか」

 一通り組み立てて、電飾を飾っていくと、静流と一緒になって飾ったことが思い出される。俺の記憶の中で、ツリーの大きさと静流が同じくらいに思えたのは、記憶補正だったのかもしれない。俺の腰より小さいそれは、思いのほか大きかった。
 電飾の色は青一色で、点灯の確認をした時の灯りに、ホッとした。そして、テルくんの嬉しそうな顔が一瞬浮かんだ。さおりや静流ではなく、テルくんの笑顔だった。
 そんな穏やかな気分の俺を現実に引き戻す音がした。携帯のメールの着信音だ。
 昨夜、小島から来ていたメールを思い出し、顔を顰めてしまう。今日の夜、店を貸し切りにしてのクリスマスパーティに誘われていたが、その場で断りの返事をしていた。まさか、また? と思ったら、案の定だった。

『遠藤さんとか葛木くんも来ます。社内の人間も多いので、ぜひ課長も来てください』

 行かない、と返事をしたにも関わらず、再び誘ってくる小島に、溜息が出る。すぐに返事をするのも憚られるので、そのまま部屋の片付けを続けた。
 すっかり日も落ちた頃、小島にもう一度、『行かない』という返事をした。今度は『若い者だけで楽しんで』という一言を添えて。その一方で、テルくんへメールを送る。『今日も来るよね?』と。
 たぶん、テルくんなら来てくれる。そのつもりで、夕飯の買い出しにも行ってきたし、クリスマスツリーも出してきたのだ。しかし、ちゃんとした約束をしていないから、不安にもなる。テルくんからの返事はすぐには来ないだろう。
 俺はテルくんを迎えに出かけることにした。
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