100均で始まる恋もある2

三森のらん

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8.クリスマスツリー

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 商店街の中ほどにあるケーキ屋の前で、俺は足を止めた。
 静流がここのショートケーキが好きで、この店の営業時間に間に合った時だけ、お土産に買って帰ったものだった。あまり甘すぎなくて、俺もここのショートケーキは好きだった。しかし、一人になってからは、すっかりこの店のことを忘れていた。

 狭いケーキ屋の中には、すでに数人のお客がひしめき合っている。カランカランと、ドアについている小さな鐘のような音が低く響き、親子と思われる客が出ていく。その手には大きな赤い箱。見るからにクリスマスケーキの入っているのがわかる。俺は思わずドアの取っ手を掴むと、店の中へと入った。

「いらっしゃいませ」

 ガラスケースの前は客で見えないのに、店員は俺が入ってきたのに気づいたのだろう。大きな声で言ってくる。サンタの帽子をかぶりながらの接客の様子に、嫌でもクリスマスを意識する。
 店の中は甘い匂いで充満している。ここはケーキだけではなく、焼き菓子なども置いている。店内のディスプレイは、すっかりクリスマス仕様で、色々な焼き菓子もプレゼント用に包装されて置かれている。
 俺はなんとか隙間から覗き込む。ホールのケーキはさすがに売り切れのようで、小さなケーキたちがいろいろと並んでいる。

「ありがとうございました」

 その声で視線を向けると、先ほどの親子のように赤い箱を、客が嬉しそうに受け取っている。ガラスケースの奥は、赤い箱にいくつものメモが貼られている。きっと事前に予約していたものを、受け取りに来ているようだ。
 俺は受け取りの波の様子を見ながら、外のほうにも目を向ける。
 テルくんが家に来るなら、必ず、ここの前を通るからだ。時間的にもそろそろ通ってもおかしくはない。ガラスケースに再び目を戻し、テルくんは何が好きだろうか、と考える。単純にクリスマスというだけではなく、彼がどんなものが好きなのか、が気になった。
 何気なく外へ目を向けた時、テルくんらしき姿が見えた気がした。慌ててドアを開ける。ちょっとぼんやりした顔をしたテルくんが店の前を通り過ぎようとしていた。

「テルくん」

 俺の声に、テルくんは驚いて周囲を見渡すと、店のドアを開けて立っている俺に気付いてくれた。

「えっ!? ど、どうしたんですか?」

 目を大きく見開いて、びっくりしている様が可愛くて仕方がない。俺は笑顔を浮かべながら彼を店の中へと誘う。

「迎えに来たついで。せっかくのクリスマスだからね。ケーキでも買おうかなって」
「ええっ?」

 顔を真っ赤にしながらも喜ぶテルくん。結局、俺が好きなショートケーキを二つ買い、店を出た。

 商店街を抜け、家路を急ぐ。早く二人きりになりたい。まるで若い頃のような恋の高揚感に、俺自身もだいぶ浮かれているようだ。すっかり人影がなくなったところで、空いている方の手でテルくんの手を握った。

「え、そ、外ですよ?」

 慌てて周囲をキョロキョロと見回すテルくんに、「あと、ちょっとだから。ね?」と少しばかり強引に手を握りしめる。実際、もうすぐ我が家が見えてくる。恥ずかしそうに俯くテルくんに、愛おしさが溢れそうになった。
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