100均で始まる恋もある2

三森のらん

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9.酒のつまみ、再び

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 テルくんが乗ってくる特急が到着する時間に間に合うように、俺は家を出る。彼からプレゼントしてもらった手袋を両手にすると、駅への道を急いだ。
 彼の到着するターミナルの駅まで、乗り換えを考えると、小一時間かかる。正月休みの時期の夜だけに、それほど混んでいないのは助かる。1日ずれただけで、たぶん帰省ラッシュに巻き込まれたに違いない。
 夜の闇と繁華街の灯りが交互に現れる窓の外に目を向ける。ガラスには、期待に満ちた顔をした自分が映っている。

 駅に着いてみると、到着時刻よりも15分近く余裕があった。しかし、移動中に乗っていた電車に比べると、さすがターミナル駅、人が思いのほか多い。ホームからエスカレーターを使って、コンコースへと昇る。人ごみを避けるように壁際へと移動する。
 ここからは、電車の発車時刻の電光掲示板がよく見える。しかし、テルくんの特急の到着時刻はわからない。俺は携帯を取り出して、テルくんの乗っているはずの電車の時刻と到着ホームを検索した。到着ホームは、俺が降りたホームとは反対側の端の方にあるらしい。その上、もうすぐ到着時刻のようだ。
 足早に人波を抜けながら、俺はテルくんのスマホに電話をかけるが、何コールかかっても、なかなか出ない。もしかして、バッグの中に仕舞い込んでしまったのだろうか。せっかく迎えに来たのに、すれ違いになってしまうのではないか、と不安になってきた頃、ようやくテルくんが電話に出てくれた。

『崇さん?』

 こっちが名乗る前に、テルくんが焦ったように電話に出た。

「ああ、もう着いた頃かと思って電話したんだけど」
『え、まだ〇〇駅ですけど』

 俺が迎えに来たとは思ってもいないらしい。

「今、どこ?」
『え?』
「迎えに来たんだけど」

 そう答えた俺の言葉に、テルくんは一瞬、言葉をなくす。でも、すぐに頭を切り替えたテルくんは、すぐに自分のいる場所を告げた。

『16番線のホームから階段上がったところです』

 まさに、俺が向かっている方向だ。これならすぐに会えるかもしれない。

「16番線……わかった。近くに何がある?」
『え、えーっと、カウンターのある飲み屋さんみたいなのと……洋食屋さんと、お寿司屋さん……かな?』
「とりあえず、見つけやすそうなのは、どこ?」
『あ、じゃ、じゃあ、お寿司屋さんのところにいます』

 テルくんの電話を切ると、俺は周囲を見渡した。すでに16番線のホームに繋がる階段の上にまで来ていたが、周囲にはそれらしき寿司屋が見当たらない。
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