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9.酒のつまみ、再び
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ジャージにいつものパーカーを羽織り、右手にガラスの置時計を持ちながら、俺は仏壇の置かれている和室へ向かった。ひんやりと冷えた部屋の電気をつける。ガラスの置時計を仏壇の目の前に置くと、置きっぱなしにしていた湯呑を手にして、台所へと向かう。
軽く水洗いをしてから、新しい水をいれて、仏壇に供えた。静かな和室に、鈴の音の清らかな音が響く。
「さおり、静流……」
ゆるやかに細く立ち昇る線香の煙。俺は仏壇に飾られた二人の写真に目を向ける。
「許してくれるか」
答えが返ってくるわけではないけれど、問いかけずにはいられなかった。
写真の中の二人は、あの頃と変わらない嬉しそうな笑顔を浮かべたままだ。
俺自身、元々男に興味があったわけじゃない。
それでも、テルくんに対しての想いは、さおりたちへの想いと変わらない。いや、今では、それ以上のもののように感じている。そして、彼とこの先も共にいたいと、考えている俺がいる。
たとえ、二人が許してくれなくても、今の俺はテルくんを選ぶだろう。それでも、彼女たちに、ちゃんと断りをいれなければならないと思った。もういない二人ではあっても……ここは彼女たちの家でもあったのだから。
「……よし」
胸の中で区切りをつけると、仏壇の引き出しから、この家のスペアキーを取り出した。これは、もともと、さおりが持っていたスペアキーだった。俺はそれを握りしめると、ジャージのポケットに仕舞い込む。
仏壇の前に置いておいたガラスの置時計を再び掴むと、俺は二階へと静かにのぼっていき、寝室の前にある部屋のドアを開けた。
そこは静流の子供部屋だった。長い間、雨戸の閉められたままの部屋は、少し埃っぽい臭いがした。部屋の電気をつけると、時が止まっていたかのように、静流が死んだ時のままの状態が残されていた。青い幼稚園に着ていくスモックと黄色い帽子、小さな通園用の黄色いショルダーバッグが、壁に掛けられたままだ。気の早い義父母から、幼稚園にあがったばかりの頃に贈られた勉強机。その上には、静流のお絵描き帳が置いてあった。
俺はその勉強机の上に、静かにガラスの置時計を置いた。この部屋は、滅多に使うことはない。開かずの間のようなものだった。ここなら、さおりも許してくれるだろう。
部屋の電気を消し、ゆっくりとドアを閉める。そして反対側の寝室のドアを静かに開ける。薄暗い部屋のベッドには、掛布団がこんもりと盛り上がっている。まだテルくんは眠っているのだろう。ホッとした俺は、彼を起こさないようにドアを閉めると、朝食を作るために階下へと向かった。
軽く水洗いをしてから、新しい水をいれて、仏壇に供えた。静かな和室に、鈴の音の清らかな音が響く。
「さおり、静流……」
ゆるやかに細く立ち昇る線香の煙。俺は仏壇に飾られた二人の写真に目を向ける。
「許してくれるか」
答えが返ってくるわけではないけれど、問いかけずにはいられなかった。
写真の中の二人は、あの頃と変わらない嬉しそうな笑顔を浮かべたままだ。
俺自身、元々男に興味があったわけじゃない。
それでも、テルくんに対しての想いは、さおりたちへの想いと変わらない。いや、今では、それ以上のもののように感じている。そして、彼とこの先も共にいたいと、考えている俺がいる。
たとえ、二人が許してくれなくても、今の俺はテルくんを選ぶだろう。それでも、彼女たちに、ちゃんと断りをいれなければならないと思った。もういない二人ではあっても……ここは彼女たちの家でもあったのだから。
「……よし」
胸の中で区切りをつけると、仏壇の引き出しから、この家のスペアキーを取り出した。これは、もともと、さおりが持っていたスペアキーだった。俺はそれを握りしめると、ジャージのポケットに仕舞い込む。
仏壇の前に置いておいたガラスの置時計を再び掴むと、俺は二階へと静かにのぼっていき、寝室の前にある部屋のドアを開けた。
そこは静流の子供部屋だった。長い間、雨戸の閉められたままの部屋は、少し埃っぽい臭いがした。部屋の電気をつけると、時が止まっていたかのように、静流が死んだ時のままの状態が残されていた。青い幼稚園に着ていくスモックと黄色い帽子、小さな通園用の黄色いショルダーバッグが、壁に掛けられたままだ。気の早い義父母から、幼稚園にあがったばかりの頃に贈られた勉強机。その上には、静流のお絵描き帳が置いてあった。
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部屋の電気を消し、ゆっくりとドアを閉める。そして反対側の寝室のドアを静かに開ける。薄暗い部屋のベッドには、掛布団がこんもりと盛り上がっている。まだテルくんは眠っているのだろう。ホッとした俺は、彼を起こさないようにドアを閉めると、朝食を作るために階下へと向かった。
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