100均で始まる恋もある2

三森のらん

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9.酒のつまみ、再び

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 米を炊飯器にセットした俺は、炊きあがる前にと、軽くシャワーを浴び、薄っすらと伸びた髭を剃ると、着古したロングTシャツにジーンズに着替えた。
 しばらくテルくんと会ってなかったこともあり、我が家には大した食材がないが、あるもので見繕うしかない。朝食が出来上がる前に、テルくんは起きてきた。

「おはようございます」

 心なしか、不安そうな声に聞こえた俺は、料理の手を止め、振り返る。少し青ざめて見える顔つきに、やはり少し調子が悪いのだろうか、と心配になった俺は、彼をすぐに座らせた。
 料理をしている間、背中にテルくんの視線を感じている俺。どんな想いで見つめているのかわからないが、彼の関心が点けっぱなしにしていたテレビの番組ではなく、俺の方にあるということに、変な優越感を感じていた。
 テーブルの上に出したのは、いつもと変わらない、平凡な朝食。目玉焼きにソーセージ、タクアン。白いご飯にワカメと油揚げの味噌汁だ。そんなものでも、テルくんは目を輝かせて箸を運ぶ。
 ひたすら無言で食事を続けるうちに、俺の方が先に食べ終えてしまう。湯呑を手にしながら、一生懸命に食べているテルくんの姿を見つめる。彼が美味しそうに食べる姿に、満足を覚える。さおりも、こんな気持ちで俺と静流を見つめていたのかもしれない。

「……ごちそうさまでした」
「ん」

 俺は綺麗に平らげた二人分の食器を流しへと運ぶ。二人分といってもたいした量ではない。すぐさま食器を洗いだした俺に、テルくんが声をかけてきた。俺は返事をしながらも、そのまま食器を洗い続ける。

「あの……時計、どこに……」

 やはり、彼は気づいてしまったか。それは、彼があのガラスの置時計の存在を気にしていたということだ。

「……片づけた」
「えっ」

 驚いたような声に、テルくんはやっぱり、優しい子だな、と思う。それはそうだ。いつも、家に来るたびに、さおりたちに線香をあげてくれる子なのだ。こんな子を、あの二人が嫌うことなど考えられない。むしろ、泣かしたら二人から怒られそうだ。

「でも、あれは」
「……今の俺にはね、テルくんの悲しい顔を見ることのほうが辛いんだ」

 水道を止め、タオルで手を拭きながら振り返る。テルくんは泣きそうな、それでいて嬉しそうな複雑な顔をして俺を見つめている。

「あ、そうだ」

 俺はさっき仏壇から取り出したスペアキーをジャージのポケットに入れっぱなしにしてたのを思い出した。慌てて風呂場の脱衣所に戻った。
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