100均で始まる恋もある2

三森のらん

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9.酒のつまみ、再び

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「危ない、危ない……」

 ジャージのポケットから取り出したスペアキーを握りしめ、洗面台の鏡の自分の顔を見る。アラフォーのオッサンが、いつになく真剣な顔をしている。

「よしっ」

 気合を入れて戻ると、テルくんは椅子に座ったまま、俺の戻りを待っていた。
 彼が拒むはずがない、と思っていても、少しばかり不安に思うのは、年齢なりに、色々な現実を知っているせいだろうか。

「これ……テルくん、受け取ってくれるかな」
「なんですか?」


 差し出された俺よりも少し小さくて綺麗な白い掌に、スペアキーを落とす。

「鍵?」
「うちの鍵」
「えっ!? これって……合鍵?」

 テルくんは驚いた顔で、スペアキーと俺の顔を何度も往復して見る。そう何度も見比べられると、こっちが恥ずかしくなる。頭をかきながら、テルくんへと視線を向ける。

「なかなか会う時間がないから……よかったら」
「え、え、えと。いいんです……か?」
「ああ。テルくんが嫌じゃなければ」

 目をキラキラさせて可愛い顔で見つめるテルくんが、嫌なわけないとは思う。それでも、オッサンには、不安なのだ。
 そんな気持ちを吹き飛ばすかのように、テルくんは椅子から立ち上がると、俺に思い切り抱き着いてきた。

「お、おっと!」
「嬉しいですっ」

 この華奢な身体も、この優しい声も、俺を見つめる甘い眼差しも、全て俺のモノだ。俺は欲望を抑え込みながら、テルくんを抱きしめる。
 
「……こんなのもらっちゃったら、僕、ずっとここに居ついてしまうかもれません」

 耳元で、そんな嬉しいことを呟くテルくん。それこそ、俺の方が大歓迎だ。

「構わない、って言ったら?」
「えっ!」

 ころころと表情を変えて見せるテルくんに、俺の方は思わず笑みが零れる。優しく唇を重ねれば、トロンとした眼差しで見つめ返してくる。

「すぐにとは言わない。でも、ちょっとだけ考えてくれるかな」
「……はい」

 恥ずかしそうに返事をすると、俺の肩に顔を隠すように伏せてしまう。
 この愛しい存在は、大人であろうとする俺の気持ちを、容易く乱高下させる。そんなことに気付いているだろうか。
 ずっと彼の心を繋ぎとめ、この温く甘い時間を味わい続けるには、どうしたらいいのだろうか。俺はそんな幸せな悩みを考えつつ、笑みを浮かべながら、テルくんの身体を優しく抱きしめ続けた。


 ▶END◀
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感想 2

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みんなの感想(2件)

saaya
2023.06.22 saaya

めちゃくちゃよかったです‼ほのぼのしているけど、ちょっぴり切ないところもあったり、だけどお互いだいすきで、大切に思っていることが伝わってきて、読んでいてしあわせでした。日常が愛おしく感じるような作品でした。すごくだいすきな作品になりました‼その後の2人もまた書いてほしいです。ぜひよろしくお願いします‼

解除
あおい
2021.11.03 あおい

いつも楽しみに読ませてもらってます☺️
更新のお知らせがくるのを今か今かと待ってす笑
山本さんが一見落ち着いている年上男性と思わせてテルくんの可愛さに内心しっかりデレデレになってるのがたまりません!!🥰🥰
これからも更新楽しみにしてます!!

解除

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