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2.印鑑
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その週の金曜日の夜、山本さんは酒のつまみを買いにやってきた。
酒のつまみのある食品の棚は、僕が入っているレジからは見えない。それでも、時々チラッとだけ見える、棚の端にみえる見慣れたスーツに気が付くと目がいってしまう。
やはり、昼間に見た山本さんよりも、会社帰りの山本さんは少しだけ疲れて見える気がする。仕事が大変なんだろうな、ということくらいしか、僕には想像できないし、そもそも僕のできる想像なんて、たかが知れている。
僕も、そのうち就職したら、あんな風になるのかな、と思いながらも、でも、山本さんみたいに渋い感じの大人の男には成れそうにはない。
そんなことを思いながら、僕はどんどん流れてくるお客さんをさばいていく。今日はタイミングが悪く、山本さんは僕のレジではなく、もう一台のレジのほうに行ってしまった。
ちょっと残念に思いつつも、チラリと今日は何を選んだんだろうとチェックしてしまう。今日は、ミックスナッツ、いわしせんべい、ごまわかめ? 山本さんは、一人で晩酌派なのか、それとも奥さんだったり彼女が相手をしてくれるのだろうか。
そんなことを考えて、一瞬、胸がチリッとする。そんな自分に首を傾げたくなる。
「お願いします」
僕の目の前に20代後半くらいの小柄な女性が立ち止まった。彼女も山本さん同様、仕事帰りなのか、少し疲れた顔をしていた。僕は彼女の差し出した商品を数えながらバーコードをスキャンしていると、彼女は「あ、これって」と、レジ脇に置いてあったエアプランツに手を伸ばした。
もうすでに、いくつか売れていて今はここに出ているだけしかない。ここに置いておくと、けっこうな確率でお客さんが気づいて手に取るから不思議だ。
「エアプランツです」
僕は商品を袋に詰めながら、その女性に話しかける。話しかけるというよりも、僕が呟いているだけのような気もしないでもない。
「土とかなくても育ちます」
「水は?」
「時々、霧吹きを使ってあげたほうがいいです。お店でも、一応、かけてます」
僕の声は、普段はあまり大きくはない。意識して声を出さないと、小さい声で聞き取りにくくなることがあるようだ。僕が説明していると、隣のレジから向けられる視線に気が付いた。もうすぐ会計が終わろうとしている山本さんが、なぜか僕のほうを見ていた。
「へぇ……」
女性は興味ありそうにエアプランツの一つを手に取った。だけど、僕がもう商品の袋を持って待っていたせいか、そのまま置いてあった場所に戻すとレジから離れていった。
「ありがとうございました~」
離れていく女性に声をかけながら、気が付けば、すでに山本さんの姿もなく、少しだけ残念な思いをしている僕がいた。
酒のつまみのある食品の棚は、僕が入っているレジからは見えない。それでも、時々チラッとだけ見える、棚の端にみえる見慣れたスーツに気が付くと目がいってしまう。
やはり、昼間に見た山本さんよりも、会社帰りの山本さんは少しだけ疲れて見える気がする。仕事が大変なんだろうな、ということくらいしか、僕には想像できないし、そもそも僕のできる想像なんて、たかが知れている。
僕も、そのうち就職したら、あんな風になるのかな、と思いながらも、でも、山本さんみたいに渋い感じの大人の男には成れそうにはない。
そんなことを思いながら、僕はどんどん流れてくるお客さんをさばいていく。今日はタイミングが悪く、山本さんは僕のレジではなく、もう一台のレジのほうに行ってしまった。
ちょっと残念に思いつつも、チラリと今日は何を選んだんだろうとチェックしてしまう。今日は、ミックスナッツ、いわしせんべい、ごまわかめ? 山本さんは、一人で晩酌派なのか、それとも奥さんだったり彼女が相手をしてくれるのだろうか。
そんなことを考えて、一瞬、胸がチリッとする。そんな自分に首を傾げたくなる。
「お願いします」
僕の目の前に20代後半くらいの小柄な女性が立ち止まった。彼女も山本さん同様、仕事帰りなのか、少し疲れた顔をしていた。僕は彼女の差し出した商品を数えながらバーコードをスキャンしていると、彼女は「あ、これって」と、レジ脇に置いてあったエアプランツに手を伸ばした。
もうすでに、いくつか売れていて今はここに出ているだけしかない。ここに置いておくと、けっこうな確率でお客さんが気づいて手に取るから不思議だ。
「エアプランツです」
僕は商品を袋に詰めながら、その女性に話しかける。話しかけるというよりも、僕が呟いているだけのような気もしないでもない。
「土とかなくても育ちます」
「水は?」
「時々、霧吹きを使ってあげたほうがいいです。お店でも、一応、かけてます」
僕の声は、普段はあまり大きくはない。意識して声を出さないと、小さい声で聞き取りにくくなることがあるようだ。僕が説明していると、隣のレジから向けられる視線に気が付いた。もうすぐ会計が終わろうとしている山本さんが、なぜか僕のほうを見ていた。
「へぇ……」
女性は興味ありそうにエアプランツの一つを手に取った。だけど、僕がもう商品の袋を持って待っていたせいか、そのまま置いてあった場所に戻すとレジから離れていった。
「ありがとうございました~」
離れていく女性に声をかけながら、気が付けば、すでに山本さんの姿もなく、少しだけ残念な思いをしている僕がいた。
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