100均で始まる恋もある

三森のらん

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2.印鑑

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 おじさん、改め、山本さんの会社の名前を見て、会社があるのは駅を挟んだ反対側なのはすぐにわかった。ネームカードに書かれていた会社名は、かなり大きい会社でこの駅を利用している人なら、必ず目にしている建物だ。
 きっと仕事も忙しいんだろう。だから週末前の金曜の夜には、あんなに疲れ果ててるのかもしれない。
 それにしても、いつも会社帰りにうちの店にくるということは、山本さんはこの駅の近くに住んでいるんだろうか。
 電車に乗るなら、わざわざ改札を横目に駅ビルの中にくる必要はないはず。僕が住んでるアパートも、こちら側にある。もしかして、ご近所さんだったりして。そんなことを考えたら、なんだか一人で楽しくなる。

「濱田くん、珍しいわね。何かいいことでもあったの?」
「えっ?」

 同じく隣のレジに入ってた中村さんが、面白そうな顔で僕に声をかけてきた。
 ちょうどお客さんの流れが途切れたタイミングで、レジのお金をコインケースに入れている時だった。

「いや、なんか楽しそうな顔してるから」

 山本さんのことを考えてて、確かに楽しくなってたのは事実なので、つい顔が赤くなってしまう。

「別に、何もないです」
「なんか、顔赤いんだけど。もしかして、彼女のことでも考えてたりして」

 いいなぁ、若いって、と、僕なんかより中村さんのほうが楽しそうにしているように見える。

「か、彼女なんかいないですよ」

 僕は顔をそむけると、急いでお金を詰めようとしたけれど、うまく詰められない。そうなると、どんどん慌ててしまうことになる。

「お願いします」
「あ、いらっしゃいませ」

 お客さんの一声で、中途半端に詰めたケースをレジにしまいこんだ。
 今は目の前のお客さんの対応をしなくちゃいけない。僕は商品を受け取り、会計することに集中した。
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