100均で始まる恋もある

三森のらん

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4.花火

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 結局、僕は週末になっても山本さんの家には行かなかった。
 賞味期限の当日、自分の部屋で山本さんのために買ってきたお土産の包装紙を破いた。
 山本さんが甘いものが好きかどうか、考えもせず買ってきたもの。一人で食べきれそうな小さい箱のものを選んだけど、これを自分で食べることになるとは思わなかった。
 冷えた麦茶を飲みながら、半分くらいまで食べてから、一人で食べるには意外に量が多かったかも、と、気が付いた。夕方からバイトの予定があるから、その前に小腹が空かないようになっていいか、と思ったけれど、むしろ、夕飯すらいらないかもしれない、と思った。

 若干、胃もたれを感じながらも、僕はフロアに出ると同じ時間に入った長谷川さんに挨拶をした。

「あ、お疲れ~。濱田くんさぁ、明日の夜とかって空いてる?」
「空いてるといえば空いてます」

 金曜日の夜だけれど、今回も僕はシフトに入ってない。山本さんは、またお酒のつまみを買いにくるのだろうか。

「急なんだけど、夜のシフト、変わってもらえるかなぁ」
「え? どうかしたんですか?」

 フリーターの長谷川さんは、ガッツリ仕事を入れてる人なだけに、休むとか考えられなかった。

「ちょっと知り合いの仕事、頼まれちゃって」
「はぁ」
「ほら、明日、花火大会じゃない?」
「え? そうなんですか?」

 アパートとバイト、あとは大学の図書館に行くくらいで、地元の情報に関心が薄い僕。そういえば、ここの花火大会って見たことなかったなぁ、と思い出す。
 去年も一昨年も自分の部屋でテレビを見ていたりして、外がドンドンとうるさいと思ったら、花火が上がってた、というパターン。そもそも、人が多そうなところに出向く気がしれない。

「で、知り合いの酒屋さんが、立ち飲みやるから手伝えって言われちゃって」
「へぇ、そんな急に?」
「そう思うよねー? なんか、手伝いを頼むつもりだった彼女と急に別れちゃったとか言ってさ。その代打とか、超ムカつくんですけど」

 そう言いながら、顔を赤らめて嬉しそうに見えるのは、僕の気のせいではないと思う。長谷川さん、その酒屋さんのことが好きなのだろうか。

「いいですよ。どうせ、僕も暇してますし」

 今年も花火大会に行くつもりはないし、そもそも一緒に行く相手もいない。

「ごめんね。今度、何かおごるから。うちの商品で」
「いや、それ、いいですから」

 僕は苦笑いしながら、レジの前に立った。
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