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4.花火
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山本さんの家にお世話になった日以来、僕は山本さんと会うことがなかった。
本当は、ちゃんとお礼をしたかったのだけれど、夏休みの時期のせいで、金曜日の夜のシフトに長谷川さんや海老原さんが入ってしまい、僕は他の曜日の遅番だったり、中番だったりで会うことができなかった。
そして、山本さんは、やっぱり金曜日の夜しか、来ないんだなっていうのを改めて実感する日々だった。
山本さんのお礼にと買ってきたお土産の賞味期限が、あと一週間くらいとなった時。もしかしたら週末とかは、自宅にいるんじゃないかって考え始めた。
本当は店で渡せればよかったのだけれど、そんな機会は訪れそうもない。今更お礼も何もないかもしれないけれど、やっぱり、そういうのはちゃんとしないと、と自分の中で軽く言い訳をしている自覚はある。
本当は、ただ、山本さんの顔が見たいんだってこと。
できたら、山本さんの声が聞きたいこと。
それが自分の正直な気持ちなんだってこと。
だけど、やっぱり自宅まで行くとかって、図々しいんじゃないか、と、悶々としながらお菓子の棚の商品を補充していた時、OLさんたちが、きゃあきゃあ言いながら僕の背後を通り過ぎて行った。
「だからさぁ、山本課長も呼ぼうよ」
「えぇ? あの人、こういうの来ないでしょ?」
「そうだよ、この前だって、本当に珍しかったんだよ?」
『山本』という名前が同じなだけかもしれないのに、その名前だけでドキンとする。手に持っていた商品を危うく落とすところだった。
彼女たちは大量に飴が並べられている壁際に立ち止まりながら、話を続ける。
「だったら、今度だって来るかもじゃない?」
「何、綾子ってば、山本課長狙いなの?」
「え、オジサン好きなわけ?」
「山本課長はオジサンじゃないわよぉ」
「って、狙ってるのは否定しないんだ」
同じ人じゃない、きっと違う、そう思おうとするのに、どうしても山本さんの顔が思い浮かぶ。手が止まって呆然としている僕に追い打ちをかける言葉が、降ってきた。
「ほら、山本課長、奥さんとお子さん、亡くしてるじゃない?」
その言葉で僕はチラリと彼女たちのほうを見た。
「そのせいかぁ、ちょっと哀愁漂うっていうかぁ、なんか守ってあげたいっていうかぁ」
山本さんのことを語っている人は、肩くらいまでの茶色いストレートの髪をした可愛らしいワンピース姿。両サイドにいる二人はもっとキチッと仕事をしている女性のように見えるけれど、彼女は少しばかり雰囲気が柔らかい感じがする。
「母性本能?」
「そうそう! それよぉ!」
「ていうか、守られるのは綾子のほうじゃないの?」
「えー、でもぉ」
そう言いながら、彼女たちはレジのほうに歩いていく。話が盛り上がっているのか、彼女たちの声は聞こえてくるけれど、具体的な内容までは聞き取れない。
なぜなら、僕の頭の中では山本さんとあの女の人が仲良くしている妄想が走り出してしまったから。 あんな可愛い感じの女の人が山本さんのことを好きだったりしたら、きっと、きっと、山本さんは嬉しいんじゃないかって、考え出してしまったから。
まだあの山本さんのことだと決まったわけではない。
だけど、もう、これはほぼ確定事項じゃないかって思ったら、なぜか僕は、床に力なくぺたりと座り込んでしまった。
本当は、ちゃんとお礼をしたかったのだけれど、夏休みの時期のせいで、金曜日の夜のシフトに長谷川さんや海老原さんが入ってしまい、僕は他の曜日の遅番だったり、中番だったりで会うことができなかった。
そして、山本さんは、やっぱり金曜日の夜しか、来ないんだなっていうのを改めて実感する日々だった。
山本さんのお礼にと買ってきたお土産の賞味期限が、あと一週間くらいとなった時。もしかしたら週末とかは、自宅にいるんじゃないかって考え始めた。
本当は店で渡せればよかったのだけれど、そんな機会は訪れそうもない。今更お礼も何もないかもしれないけれど、やっぱり、そういうのはちゃんとしないと、と自分の中で軽く言い訳をしている自覚はある。
本当は、ただ、山本さんの顔が見たいんだってこと。
できたら、山本さんの声が聞きたいこと。
それが自分の正直な気持ちなんだってこと。
だけど、やっぱり自宅まで行くとかって、図々しいんじゃないか、と、悶々としながらお菓子の棚の商品を補充していた時、OLさんたちが、きゃあきゃあ言いながら僕の背後を通り過ぎて行った。
「だからさぁ、山本課長も呼ぼうよ」
「えぇ? あの人、こういうの来ないでしょ?」
「そうだよ、この前だって、本当に珍しかったんだよ?」
『山本』という名前が同じなだけかもしれないのに、その名前だけでドキンとする。手に持っていた商品を危うく落とすところだった。
彼女たちは大量に飴が並べられている壁際に立ち止まりながら、話を続ける。
「だったら、今度だって来るかもじゃない?」
「何、綾子ってば、山本課長狙いなの?」
「え、オジサン好きなわけ?」
「山本課長はオジサンじゃないわよぉ」
「って、狙ってるのは否定しないんだ」
同じ人じゃない、きっと違う、そう思おうとするのに、どうしても山本さんの顔が思い浮かぶ。手が止まって呆然としている僕に追い打ちをかける言葉が、降ってきた。
「ほら、山本課長、奥さんとお子さん、亡くしてるじゃない?」
その言葉で僕はチラリと彼女たちのほうを見た。
「そのせいかぁ、ちょっと哀愁漂うっていうかぁ、なんか守ってあげたいっていうかぁ」
山本さんのことを語っている人は、肩くらいまでの茶色いストレートの髪をした可愛らしいワンピース姿。両サイドにいる二人はもっとキチッと仕事をしている女性のように見えるけれど、彼女は少しばかり雰囲気が柔らかい感じがする。
「母性本能?」
「そうそう! それよぉ!」
「ていうか、守られるのは綾子のほうじゃないの?」
「えー、でもぉ」
そう言いながら、彼女たちはレジのほうに歩いていく。話が盛り上がっているのか、彼女たちの声は聞こえてくるけれど、具体的な内容までは聞き取れない。
なぜなら、僕の頭の中では山本さんとあの女の人が仲良くしている妄想が走り出してしまったから。 あんな可愛い感じの女の人が山本さんのことを好きだったりしたら、きっと、きっと、山本さんは嬉しいんじゃないかって、考え出してしまったから。
まだあの山本さんのことだと決まったわけではない。
だけど、もう、これはほぼ確定事項じゃないかって思ったら、なぜか僕は、床に力なくぺたりと座り込んでしまった。
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