100均で始まる恋もある

三森のらん

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4.花火

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 お盆の時期に実家に戻っている間は、案の定、子守りで散々な思いをさせられた。
 母と姉は、いわゆる友達親子のようで、実家に帰ってくるたびに、二人で買い物に行ったり、遊びに行ったりしている。
 その間、旦那さんに子守りでもさせればいいのに、子守りは僕に丸投げで、旦那さんは姉と母のお付きのようについて回っている。それなら、父が面倒みればいい、と言いたいところなんだけれど、母がいないのをいいことに父は父でパチンコ屋にこもる日々。
 もともと実家に戻ったところで、特別に仲が良かった友達がいるわけでもないから、誰かと会う予定もなかった。そういう意味では、子守りでもしてなきゃ、実家にいても仕方がなかったのかもしれないが……それにしたって、なのだ。

「これ、お土産です」

 バイト先に顔を出したのは、帰省から戻ってきてすぐだった。

「何、濱田くん、遊び疲れ?」

  事務所の中でパソコンの画面で在庫の情報を見ていた大福顔の矢島さんが、羨ましそうな顔で僕を見た。

「……遊ぶ暇なんてありませんでした」
「えー、実家に戻ってたんでしょ?」
「ひたすら子守りしてました」

 お土産の名物のクリーム入りの饅頭の包装紙を破きながら、ぶつぶつと姉の子供のお守りをさせられてたことを話すと、今度はニヤニヤした顔で僕を見た。

「なんですか」
「いやぁ……濱田くんが、なかなか苦労した夏休みを過ごしているようで……うれしいなぁと」
「……なんですかぞれ」
「だってさぁ、僕だけがこんな苦労してるとか、ずるくない?」

 空調は効いてるはずの事務所で、額に汗をにじませている矢島さん。「ずるくない?」とか、可愛く言ってるつもりだろうけれど、30代のおっさんが言っても可愛くはない。それに言ってることも、可愛くない。

「それが社会人ってもんなんじゃない」

 僕の背後から、呆れたような声で言ったのは、同じように額に汗をにじませていた尾賀さんだった。矢島さんの汗と違って、尾賀さんのは体を動かしてるからこその汗なのは、僕でもわかる。

「あ、お疲れ様です。お土産、置いときます」
「おー!ありがとう~、これ美味しいのよねぇ」

 そう言って、さっそく一つ手にとった尾賀さん。

「だいたいさぁ、それなりに金もらってるんだから、それなりの仕事してよね。矢島ちゃん」

 饅頭を一口で口の中に放り込むと、事務所の中に置かれている小さめの段ボールを2つほど抱えると、僕の脇をさっさと通り過ぎて行った。尾賀さんのフットワークの軽さがあるから、この店、回ってるんだよなぁ、とつくづく思う。

「くぅ……尾賀さんに言われると、何も言い返せない……」

 悔しそうに言ってる矢島さん。そんなことを言ってる暇があったら、仕事したら? という言葉を飲み込んで、僕もフロアに出るためにエプロンを手に取った。
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