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5.ネクタイ
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「いや、谷敷ちゃん、若いから大丈夫」
「そ、そういう問題じゃないですっ」
「そういう問題だって」
おばさんとおねえさん、二人に揶揄われてワタワタしている彼女が、少し可哀そうになってくる。
「はい、大丈夫です。谷敷さん、お疲れ様。もういいですよ」
僕の声にホッとしたのか、これ以上揶揄われないように「お先に失礼しますっ」と、小さく挨拶をすると、そそくさとレジから離れていった。
「あんまり揶揄うと、いじけちゃいますよ」
僕がこそっと注意すると、長谷川さんはペロリと舌を出し、中村さんは「えへっ」と笑って誤魔化した。
「これで辞められちゃったら、僕が休むとかいうレベルじゃなく困るんですからね」
あまり強く言ったつもりはないけれど、僕がいつになく真面目に注意したせいなのか、二人ともが、ごめんね、と言ってきた。
「なんかネクタイしてるせいか、いつもより大人びて見えるからかなぁ。濱田くんの言うこと、ちゃんと聞かなきゃって思っちゃった」
「なんですか、それ」
「そうですよ。なんですか、それ。ちゃんと僕の注意も聞いてくださいね」
突如として、珍しくスーツ姿の店長の矢島さんが現れた。さすがに、この時間じゃパリッとした感じには見えないけど、一応は社員っぽくは見える。
「あら、今日、こっち来る日ですっけ? 確か今日は本社で店長会議じゃ?」
引き継ぎの終わった中村さんが、レジのカウンターの中から出てきながら、矢島さんに話しかけた。
「僕、夕方から寄りますって、LINEで連絡しましたけど」
「あー、ごめん、見てなかったわ」
「いいですけど、別にぃ」
少しばかり拗ねながらも、矢島さんは中村さんと話しながら事務所のほうに向かってく。
「……あの人もさぁ、なんか残念だよねぇ。貫禄不足っていうか」
「はぁ……」
「濱田くんは、あんな風になっちゃダメよ」
恰幅のいい二人の後ろ姿を目で追いながら、僕は苦笑いをした。
やっぱり、続けて仕事をするというのは、少しばかり疲れるようだ。
やっている仕事のタイプは全然違うのだけど。どちらかといえば、こっちの仕事のほうが肉体労働。それに、少しばかり気を遣う。
「いらっしゃいませ」
山盛りのカゴを受け取って、ため息をつきそうになるのを、なんとか抑え込む。一つ一つをスキャンして、袋に詰め込む。今日は、なんだか、たくさん買うお客さんが多くないか?
「ありがとうございました」
自分でも声に力がないのがわかる。ついレジに表示されている時間に目をやってしまう。閉店までは、まだ1時間くらいある。げんなりした気分でいると、また新しいお客さんが目の前にカゴを置いた。
「いらっしゃいませ」
僕は無意識に声を出しながら、次のお客さんに目を向けた。
「お疲れ様」
そこに立っていたのは、僕同様に疲れ果てた山本さんだった。
「そ、そういう問題じゃないですっ」
「そういう問題だって」
おばさんとおねえさん、二人に揶揄われてワタワタしている彼女が、少し可哀そうになってくる。
「はい、大丈夫です。谷敷さん、お疲れ様。もういいですよ」
僕の声にホッとしたのか、これ以上揶揄われないように「お先に失礼しますっ」と、小さく挨拶をすると、そそくさとレジから離れていった。
「あんまり揶揄うと、いじけちゃいますよ」
僕がこそっと注意すると、長谷川さんはペロリと舌を出し、中村さんは「えへっ」と笑って誤魔化した。
「これで辞められちゃったら、僕が休むとかいうレベルじゃなく困るんですからね」
あまり強く言ったつもりはないけれど、僕がいつになく真面目に注意したせいなのか、二人ともが、ごめんね、と言ってきた。
「なんかネクタイしてるせいか、いつもより大人びて見えるからかなぁ。濱田くんの言うこと、ちゃんと聞かなきゃって思っちゃった」
「なんですか、それ」
「そうですよ。なんですか、それ。ちゃんと僕の注意も聞いてくださいね」
突如として、珍しくスーツ姿の店長の矢島さんが現れた。さすがに、この時間じゃパリッとした感じには見えないけど、一応は社員っぽくは見える。
「あら、今日、こっち来る日ですっけ? 確か今日は本社で店長会議じゃ?」
引き継ぎの終わった中村さんが、レジのカウンターの中から出てきながら、矢島さんに話しかけた。
「僕、夕方から寄りますって、LINEで連絡しましたけど」
「あー、ごめん、見てなかったわ」
「いいですけど、別にぃ」
少しばかり拗ねながらも、矢島さんは中村さんと話しながら事務所のほうに向かってく。
「……あの人もさぁ、なんか残念だよねぇ。貫禄不足っていうか」
「はぁ……」
「濱田くんは、あんな風になっちゃダメよ」
恰幅のいい二人の後ろ姿を目で追いながら、僕は苦笑いをした。
やっぱり、続けて仕事をするというのは、少しばかり疲れるようだ。
やっている仕事のタイプは全然違うのだけど。どちらかといえば、こっちの仕事のほうが肉体労働。それに、少しばかり気を遣う。
「いらっしゃいませ」
山盛りのカゴを受け取って、ため息をつきそうになるのを、なんとか抑え込む。一つ一つをスキャンして、袋に詰め込む。今日は、なんだか、たくさん買うお客さんが多くないか?
「ありがとうございました」
自分でも声に力がないのがわかる。ついレジに表示されている時間に目をやってしまう。閉店までは、まだ1時間くらいある。げんなりした気分でいると、また新しいお客さんが目の前にカゴを置いた。
「いらっしゃいませ」
僕は無意識に声を出しながら、次のお客さんに目を向けた。
「お疲れ様」
そこに立っていたのは、僕同様に疲れ果てた山本さんだった。
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