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5.ネクタイ
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会社で見かけた時は、パリッとシャキッとしていて、今、目の前にいる山本さんとは別人みたいだった。会社にいる時の山本さんは、それはそれで、とても格好よかったけれど、僕には、今の山本さんのほうが見慣れているせいか、ちょっとヨレヨレな山本さんのほうがいい。
「お、お疲れ様です」
僕は少し照れながら、カゴの中身を手に取った。中に入ってるのはお酒のつまみ。今日は、かわはぎに、メンマ、焼き鳥の缶詰。いつもと同じ、ということに、ホッとして口元が自然と緩む。
「ネクタイしたままでやってるんだ」
「は、はい。あ、324円です」
金額を言いつつ、僕は小さめな袋につまみを入れていく。
「何時ごろ、仕事終わったの?」
スーツのポケットから小銭の入っている財布を取り出しながら、山本さんが聞いてきた。今まであまり、続けざまに話しかけられたことがなかったから、一瞬、それが僕への質問だと気が付かなかった。
「え?」
「気が付いたら、もういなかったようだからさ」
僕の手のひらにちょうどの金額を渡す。いつもなら、カルトンの上に置くのに。
「あ、えと、5時前には終わったので……」
「そうか。ちょうど、打ち合わせをしに行ってる間だったか」
僕からつまみの入った袋を受け取ると、山本さんは手持ちのカバンを開けて、ゴソゴソと何かを探し始めた。
その後ろにお客さんが並びそうになってて、僕としては気が気ではなかった。だけど、それでも、今、目の前に山本さんがいてくれることが嬉しくて、僕は心の中でだけ、お客さんに『ごめんなさい』と呟いた。
「ああ、あった。これ」
そう言って山本さんが僕に渡したのは、小さめの缶。ジュースかな? と思ってよく見てみると。
「……シュークリーム?」
「ああ、面白そうだな、と思って」
疲れた顔の山本さんなのに、そう言って僕に話す顔は、楽しそうで少しだけ僕に素な部分を見せてくれているような気がした。
「これって」
「ちょうど打ち合わせから戻る途中にある自販機にあったもんでね」
缶に描かれたおじさんの顔は、確か有名なシュークリームのお店の顔だった気がする。
「甘いものは好きじゃないかい?」
山本さんは、少しばかり心配そうな顔をした。あ、こんな表情もするんだ。また一つ、山本さんの表情を見れたことに、僕の胸はキュンとする。
「い、いえ、す、好きです」
「よかった。私もまだ飲んでないんだけどね。糖分とったほうがいいかな、と思ってね」
僕のことを気にかけてくれる山本さんに感動してた僕は、山本さんの後ろに並んでるおばさんに睨まれてることに気が付いた。
「あ、ありがとうございますっ」
「今度、感想聞かせてね」
そう言うと、後ろにいたおばさんに軽く会釈して、その場を去っていった。僕は慌てて山本さんの背中に、頭を下げた。
『今度』
山本さんは、そう言った。また、僕に話しかけてくれるということか。それだけで、嬉しくなってる僕が山本さんを見つめ続けてると、「ちょっと、まだ?」と、おばさんに不機嫌そうに言われてしまった。
「す、すみませんっ」
僕は急いでエプロンのポケットの中に、シュークリームの缶を入れると、おばさんの差し出したカゴから商品を取り出し始めた。おばさんの視線はとても痛かったけれど、それでも、僕のニヤニヤ笑いは止められなかった。
「お、お疲れ様です」
僕は少し照れながら、カゴの中身を手に取った。中に入ってるのはお酒のつまみ。今日は、かわはぎに、メンマ、焼き鳥の缶詰。いつもと同じ、ということに、ホッとして口元が自然と緩む。
「ネクタイしたままでやってるんだ」
「は、はい。あ、324円です」
金額を言いつつ、僕は小さめな袋につまみを入れていく。
「何時ごろ、仕事終わったの?」
スーツのポケットから小銭の入っている財布を取り出しながら、山本さんが聞いてきた。今まであまり、続けざまに話しかけられたことがなかったから、一瞬、それが僕への質問だと気が付かなかった。
「え?」
「気が付いたら、もういなかったようだからさ」
僕の手のひらにちょうどの金額を渡す。いつもなら、カルトンの上に置くのに。
「あ、えと、5時前には終わったので……」
「そうか。ちょうど、打ち合わせをしに行ってる間だったか」
僕からつまみの入った袋を受け取ると、山本さんは手持ちのカバンを開けて、ゴソゴソと何かを探し始めた。
その後ろにお客さんが並びそうになってて、僕としては気が気ではなかった。だけど、それでも、今、目の前に山本さんがいてくれることが嬉しくて、僕は心の中でだけ、お客さんに『ごめんなさい』と呟いた。
「ああ、あった。これ」
そう言って山本さんが僕に渡したのは、小さめの缶。ジュースかな? と思ってよく見てみると。
「……シュークリーム?」
「ああ、面白そうだな、と思って」
疲れた顔の山本さんなのに、そう言って僕に話す顔は、楽しそうで少しだけ僕に素な部分を見せてくれているような気がした。
「これって」
「ちょうど打ち合わせから戻る途中にある自販機にあったもんでね」
缶に描かれたおじさんの顔は、確か有名なシュークリームのお店の顔だった気がする。
「甘いものは好きじゃないかい?」
山本さんは、少しばかり心配そうな顔をした。あ、こんな表情もするんだ。また一つ、山本さんの表情を見れたことに、僕の胸はキュンとする。
「い、いえ、す、好きです」
「よかった。私もまだ飲んでないんだけどね。糖分とったほうがいいかな、と思ってね」
僕のことを気にかけてくれる山本さんに感動してた僕は、山本さんの後ろに並んでるおばさんに睨まれてることに気が付いた。
「あ、ありがとうございますっ」
「今度、感想聞かせてね」
そう言うと、後ろにいたおばさんに軽く会釈して、その場を去っていった。僕は慌てて山本さんの背中に、頭を下げた。
『今度』
山本さんは、そう言った。また、僕に話しかけてくれるということか。それだけで、嬉しくなってる僕が山本さんを見つめ続けてると、「ちょっと、まだ?」と、おばさんに不機嫌そうに言われてしまった。
「す、すみませんっ」
僕は急いでエプロンのポケットの中に、シュークリームの缶を入れると、おばさんの差し出したカゴから商品を取り出し始めた。おばさんの視線はとても痛かったけれど、それでも、僕のニヤニヤ笑いは止められなかった。
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