100均で始まる恋もある

三森のらん

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8.クリスマスツリー

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「それだけでいいのかい?」

 山本さんが、驚いたような顔で聞いてくる。

「は、はい」

 覗き込むように声をかけられて、僕の方は心臓がどきどきして、すぐに顔を俯いてしまった。山本さんは、もう一度メニューのほうに向かうと、何か頼んでるようだったけど、僕の方は、もう山本さんのほうを見られなくなってしまった。

 山本さんは、コース料理でも頼んだのか。料理が徐々に目の前に並んでいく。
 豚の煮凝りみたいなのと、オリーブオイルで漬けたオリーブとトマト、それに生ハム。

「濱田くんも食べて。生ハムは嫌い?」
「え、いえ、大好きですっ……」

 勧められたら断れないし、実際、生ハムは美味しかった。つい、もう少し食べたいかも、って思ってしまった。
 続いて牛頬肉のトマト煮込みに、ジェノベーゼのパスタに、僕が頼んだミートソースのパスタとテーブルの上が食べ物でいっぱいになっていく。

「あ、あの、これ、全部食べるんですか?」
「二人で食べるなら、大丈夫だよ。あ、濱田くんのミートソース、俺ももらってもいいかな?」
「は、はい……」

 そう言うと、目の前におかれた料理を取り皿にわけると、それぞれの目の前に置いてくれる。なんか、まるで、母親みたいだ。ふと、そう思って山本さんの顔を見ると、やっぱり、少し様子がおかしい気がした。

「あの、山本さん?」
「ん? あ、さぁ、食べようか」
「……はい」

 僕たちは食事中、あんまり話をしなかった。でも、時々目が合うと、どちらともなく微笑みがこぼれて、照れ臭くなっては食べ物に向きあう。そんな静かな時間に、幸せを感じる。
 それでも、ちょっとした食事の合間に、お互いのことを、少しずつ話をした。
 山本さんの年齢が41歳だということ。若い頃にご両親は他界されているということ。唯一の家族だった奥さんと娘さんを、8年前に一度に交通事故で亡くしたこと。そのことを聞いて、あの仏壇の奥さんと娘さんの写真を思い出す。

「実はね」

 食事を終えて、コーヒーとデザートが目の前に置かれると、山本さんがやっぱり困ったような顔をしながら話をしだした。

「この店は思い出の店なんだよ」
「え?」
「家族3人で、最後に食事をした店なんだ」

 それでか。

 山本さんの今までの困惑気味な表情の意味がわかって、ストンと納得がいった。と、同時に、その店に僕なんかと来てしまって、よかったんだろうか、と不安になった。
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