100均で始まる恋もある

三森のらん

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8.クリスマスツリー

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 ああ、山本さんって、こんな顔もするんだ、そう思ったら、少し嬉しくなって、つい、微笑みが零れてしまった。

「……ズルいな」

 そう言った途端、山本さんの唇が僕の唇に重なった。
 柔らかい、山本さんの唇の感触。何度も、触れては離れを繰り返していくうちに、山本さんの舌が僕の唇の隙間に入り込んできた。ぬるりと入り込んできたそれは、僕の舌を巻き上げ、なぞり、吸い上げる。ぐちゃぐちゃと僕の口内を蠢くそれに、僕の力が抜けていく。
 生まれて初めてこんな濃厚なキスをした。
 なんとか必死に、山本さんのコートに縋りつきながら、山本さんのキスにこたえようとする。だけど、経験不足の僕には力不足みたいで、唇が離れた時には、息も絶え絶えになってしまった。
 そんな僕とは正反対に、余裕の表情に見える山本さん。もう一度軽くキスをすると、再び、僕を強く抱きしめた。

「続きは、また今度ね」

 僕の耳にそう囁くと、僕の肩を抱いて路地から連れ出した。僕のほうは、キスだけで下半身がガチガチになってしまって、危うくイッてしまうところだった。コートのおかげで、山本さんには悟られてはいないと思いたい。

「また、濱田くんから誘ってくれると嬉しいな」

 そう言った山本さんは、本当に嬉しそうな顔をしている。

「じ、じゃあ、ク、クリスマスイブは?」 

 山本さんの言葉尻を捕らえるように、僕は縋るようにそう言った。
 まだ、小島さんとは約束してないはず……。彼女に限らず、その日は他の人と一緒にいてほしくない、僕は子供みたいにそう思った。

「イブ?」

 山本さんは、そういえばそんなイベントもあったね、といいながら、あっさりと、いいよ、と答えてくれた。

「でも、イブは日曜日だよね……」
「あ、は、はい」
「次の日は月曜日だから、あまり遅くまでは一緒にいられないけど」

 そう言って、少し考えてから、山本さんは僕の耳元で囁いた。

「それじゃ、金曜日の夜は、俺のためにあけといてくれる?」
「え?」
「バイト終わるころに、迎えに行くから」

 僕の頭をポンポンと、いつも通りに軽くたたくと、やっぱり、いつも通りにおでこにキスをして帰っていった。

「金曜日の夜……」

 僕は、山本さんの感触を思い出すように唇に指を這わせた。
 もしかして、金曜日の夜って……。さ、最後までとか、しちゃうんだろうか……。そう思ったら、恥ずかしくなって、声にならない叫びをあげてしゃがみ込んでしまった。

「ヤバイ、どうしよう」

 僕は小さくなっていく山本さんの背中を見送りながら、金曜日の夜のことを妄想して胸がドキドキしてしまった。
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