100均で始まる恋もある

三森のらん

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9.酒のつまみ、再び

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 何か言うべきなのかもしれないけど、上手く言葉にできない。
 自分でもわかっているつもりなのだ。

 きっと、結婚式の記念の物なのだろう。
 きっと、捨てることなんて出来ない物なのだろう。 
 きっと、僕がいるから裏返してくれてたんだろう。
 きっと、普段はそんなに意識しないで、普通に使っている物なのだろう。
 だから、今も無意識に見てしまったのだろう……
 
 頭では理解してても、やっぱり僕の中では少しばかり……いや、かなり、ショックな物だった。

「……ごめんよ」

 崇さんは大人だから、僕に何も言わせずに、ただずっと頭を撫で続けてくれた。そのおかげもあってなのか、崇さんの温もりのおかげなのか、再び瞼がゆっくりと落ちていき、次に目が覚めた時には、もう崇さんはベッドの中にはいなかった。
 カーテンの隙間からは日の光が漏れている。今が何時なのか、時計を見るために、ぼーっとしながらも、サイドテーブルに視線が自然といってしまう。

「あ、あれ?」

 寝る前にはあった、あのガラス製の時計。それが今はなくなっていた。
 もしかして、僕が変な反応をしてしまったから、崇さんが気にしてしまったのか。僕はかなり焦りながら、腰に重だるさを感じつつ、服に着替えると、崇さんを探しにゆっくりと階段を降りた。
 キッチンのほうからは、何か香ばしいいい匂いがしてきた。僕は引き寄せられるように入口に立つと、そこでは崇さんが朝食の用意をしてくれていた。

「おはようございます」

 崇さんの背中に声をかけると、少し驚いた顔で崇さんが振り向いた。

「ああ、おはよう……身体、大丈夫?」

 手をタオルで拭くと、僕のそばに寄り、背中に手を回してくれる。優しく撫でられると、キュンと胸がときめいて、さっき湧き上がった罪悪感が、より深くなる。

「だ、大丈夫です。それよりも、あの……」
「ああ、ちょっと待ってて。もう出来るから、座って」

 僕の言葉を途中で遮ると、椅子をひいて、僕に座るように促した。僕は仕方なく、素直に座ると崇さんの背中を見、それからリビングのほうを見た。テレビでは、最近人気が出てきた芸人がMCを務めてるバラエティ番組が映っていて、テレビの端に表示されてる時間を見て、まだ10時前だというのがわかった。

「はい、お待たせ。たいしたもんじゃないけど」
「い、いただきます」

 目の前に出された料理を見た途端、食欲のほうが勝ってしまう僕。僕たちは黙々と箸を動かした。
 いい感じに焼けたソーセージをパリパリと噛む音。少しカリッと焼けてしまった目玉焼きの端っこを箸でサクサクッと切る音。黄色いタクアンをポリポリと噛む音。
 その間を流れるのは、BGMのようになってしまっているテレビからの声。
 無言で食事をしていたせいで、あっという間に食事は終わってしまう。僕は最後に味噌汁をずずっと飲み終えると、コトリとテーブルに置いた。

「……ごちそうさまでした」
「ん」

 先に食べ終えてしまっていた崇さんは、優しく微笑むと綺麗に空になった食器を片付け始めた。
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