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幕間その1

幕間 第四章~第五章まとめ

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第4章『富国弱兵』まとめ

●あらすじ
 アレキサンダー男爵領に帰還したクローリーたちは予てからの行動を始める。
 交易で大量の金貨に支えられた彼らはインフラ整備を始める。
 上水道の整備や銀行の設置である。
 泉の精鋭イズミによる温泉も重なり好景気に沸き始める。
 公共事業の労働力となる移民や出稼ぎ労働者も集まってきた。
 また、一方ではヒンカか中心となって外来作物を植えて、芋類の増産による食糧不足解決の道筋も立ち始めた。
 そこで先を見て専売制度を始める。
 塩や砂糖をはじめ、香辛料や石鹸などを安めで販売し、自国通貨である男爵通貨アレキサンダ-・コインを数種類発行。
 国庫の半分以上を税金以外で賄うことを目標に動き始めた。
 資本革命による産業革命を視野に入れているのだった。
 そこにふとしたことからクローリーはルシエから構成要素マテリアル・コンポーネント素材の話を聞いた。
 硝酸カリウム……硝石である。
 賢者セージは火薬が作れると狂喜するが、沙那とヒンカは農業肥料として注目した。
 この世界には存在していない化学肥料の一要素なのだ。
 これにより農業生産は増大していくが……その影で陰謀が動きつつあった。
 いまだに軍備は考慮されていない中に……。

 リシャルは隣国のカストリア子爵家を併呑するために長女アリシアとクローリーとのお見合いを画策するが……。


●登場人物
 ▼ガイウス
 アレキサンダー領で鍛冶工房を構えるドワーフ。
 彼がこの地にいるのはミスリル鉱脈を発見したからだった。
 クローリーたちが思いつき出いろな注文を出してくることに四苦八苦していたが、次第に強く興味を持つ。
 排水ポンプや鍛造プレス機械などはそのまま鍛冶の助けになるからだった。
 彼は勢いで様々な開発に手を染めて行ってしまう。

 ▼パーチス
 謎の行き倒れの振りをしてクローリーの元に潜り込んだイストのスパイ……だったはずだが。
 生来の人の好さとクローリーと沙那の人柄に触れて転向する。
 混血ミックスの日本人で教員だった過去を持つためか、子供に優しい。
 自分の緊急脱出用として開発した物を兵器として転用する羽目になったり、応用力が高いために色んな兵器を考案してしまうが、基本的には平和主義者で技術の武器転用を嫌う。
 彼だけは賢者セージがただの気持ち悪い存在としてではなく、知識と知能が高いことに気付いている。
 結果として彼が提案した鍛造技術などは兵器生産の要になってしまうのだが……。

 ▼アリシア
 カストリア子爵令嬢アリシア・ヴィクトリア・アデライーデ・ワインベルデ。
 10代後半の美姫ですが、男勝りの野心家。
 どうせ政略結婚させられるなら優れた男性が相手が良いと情報収集をしていた。
 クローリーの見合い相手となったが……沙那の暴走のせいで有耶無耶になってしまう。
 その後、アレキサンダー男爵家の危機に乗じて、クローリーの弟リシャルとの婚約を勝ち取る。
 第一次辺境紛争では女英雄になるべく出陣するが……沙那に横取りされてしまう。
 もしも男に生まれていれば歴史を変えたかもしれない人物。

 ▼親衛ぺんぎん隊
 クローリーが沙那の護衛兼遊び相手として作った小型の自律型泥人形ゴーレム
 形状モデルは沙那の話の中にあったぺんぎんをクローリーが想像して作ったもの。
 性格はクローリーをコピーしたとされている。
 身長は1m足らず。
 ぺんぎんソード(金属棒)やぺんぎんバズーカ(単発マスケット銃)などの武装を持つ。
 「テン」「ジョウ」「ヨウ」「カイ」の4体がいて、名前は沙那が付けた。
 度々騒動の原因にもなる。
 沙那様をお守りする!を合言葉にお風呂にも入ってくる。
 「きゅー」と鳴く。


 クローリーの念願だった豊かな領地へのスタート。
 優秀な頭脳が考えることが何でも上手くいくかというとそうではない。
 常に規格外の存在がぶち壊す。



第5章『第一次辺境紛争』まとめ

●あらすじ
 第一部の最終章。
 イストの暗躍で動き出した蛮族と人族。
 気軽に考えていたのと異なり雪だるま式に拡大していく。
 パーチスの鉄炮によって一度は敵を撃退したクローリーたちだったが、その様子を眺めていた伯爵も動き出す。
 イストが全く想像もしていなかった蛮族の中の貴族だった。
 伯爵は油断することなく、チューソン率いる飛行魔獣の先遣隊を送り込む。
 人族の実力を調べるためでもあった。
 圧倒的な力の飛行魔獣たちに打つ手なしに見えたクローリーたちだったが……。
 紗那の思い付きで強力な範囲攻撃を成功させる。
 飛行魔獣部隊が一瞬で全滅したことを知った伯爵は侵攻を断念する。
 エルフの大魔法と思い込んだのだった。

 一方、ダークエルフのノワールの率いる暗殺部隊がクローリーたちを急襲する。
 紗那を狙ったものだったが、ルシエとパーチスの活躍で防がれてしまう。
 パーチスは瀕死の重傷を負ったが、これで最初の辺境紛争は終結した。




●登場人物
 ▼三騎士
 アレキサンダー男爵家に仕える三人の正騎士。フランクル、ベルガイヤ、オルテガ。
 クローリーには好感を持ち合わせておらず、リシャルを担ぎ上げようとしていた。
 フランクルとベルガイヤはそのリシャルによって処分され、オルテガは後に戦死した。
 これで男爵家に仕える騎士はいったんいなくなった。

 ▼ルネ・ディ・リュー
 アレキサンダー男爵家に隣接するバラント男爵家の当主。
 イストの誘いに乗ってアレキサンダー男爵領に攻め込むが……。
 かなり優れた智謀を持っているはずだが、蛮族に裏をかかれた上に悲惨な末路を歩む。
 この敗戦で事実上表舞台から去った……ハズ。

 ▼アルベヒト
 アリシアの父にしてカストリア子爵。
 善良で影の薄い人物。
 アリシアの個性の前には翳んでしまうが、無能な人物ではない。

 ▼チューソン
 有翼魔ヴロックのリーダー。
 伯爵の先遣隊として参戦する。
 慎重かつ大胆な指揮官で、アレキサンダー男爵家の兵力の3分の1を殲滅する。
 しかし、まさかの沙那の思い付きで部下とともに戦死する。
 
 ▼伯爵
 名前はまだ出ていない。
 吸血鬼ヴァンパイアであり遥か昔から生きている。
 狡猾な野心家ではあり油断のならない人物。
 アレキサンダー領にほど近い蛮族領サッサバルの暗黒城に住んでいる。
 混乱に乗じて150年ぶりの人族との戦争に乗り出すが……。

 ▼ノワール
 ダークエルフの美女。
 もちろん、ぼんきゅっぼん。
 伯爵の懐刀で、危険な存在の沙那の命を狙って襲撃するが、パーチスに邪魔をされ死亡。
 増やし過ぎたキャラを整理するような死に方に見えますが、初期の予定通り。
 彼女の存在は本物のエルフが存在する証明でもあった。

 ▼ラベル
 人間の奴隷で、異世界召喚者ワタリ。壮年くらい。
 褐色肌の男性で、治安の悪い世界最貧国で生まれ育った。
 ゲリラやマフィア紛いの生活をしていたが異世界に迷い込む。
 ただ辿り着いたのが蛮族領内であったために捕らえられ奴隷にされている。
 第一次辺境紛争では非常食料兼荷役夫として駆り出されていた。
 今回は登場だけで、以後第二部から本格的に活躍しはじめる。


●その他
 ▼鉄炮
 パーチスが本来は自分の脱出用に用意した兵器。
 モンゴル人が用いた鉄炮に近いが、パーチスの考えでより凶悪な兵器になっている。
 榴散弾の類であり、弩砲などで打ち出せばちょっとした大砲。

 ▼粗製デリンジャー
 呼び名は仮称です。
 ヒンカの古い拳銃をコピーしようとしたら技術的に困難過ぎたので、作れる部品とアイデアで作り出した拳銃。
 形や性能はデリンジャーそのもの。
 強度を確保するためにミスリル鉱で製作された。
 紗那とヒンカに護身用として与えられ、ペッパーボックス(多銃身)にしたものをルシエが所持している。
 生産数は数えるほど。
 実用有効射程は10mほどしかない。

 ▼タネガシマ
 名前は未登場。
 賢者セージが欲してやまなかった火縄銃。
 かつての日本と同様にネジが判らずになかなか完成しなかった。
 ヒンカやパーチスに指摘されて、銃身の後ろにネジをつけて叩いて鍛造するという荒業で解決した。
 性能は典型的なマスケット銃。
 実用有効射程は100mに満たない。
 第一次辺境紛争でも使用されたgが、効果はいまいちでした。
 初期の銃は弾幕射撃での制圧武器ですしね。
 金属実包と回転式(ネジ)閉鎖装置の開発ができれば性能向上が見込めるが……。
 ライフリングより前に解決しなくてはならない技術的課題が多すぎるようです。
 
 ▼銃弾
 再現したくても実物がないので金属実包はいまだに作れません。
 銅や真鍮の薄い板が必要なのに生産するための鍛造機械がないのです。
 そして何よりも、信管プライマーが作れません。
 速射や連射できる銃を作るのは遥か先でしょう。
 方法はあるのですが……現状ではコストに見合いません。 
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