不死身の遺言書

未旅kay

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四章.

1話.虚空

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 『ってことなんだぁ。すまねぇ、照望』

 「ああ、わかった。検討してみよう」

 私は総一郎との電話を終えると、先程から扉の影から覗いている最愛の存在である━━矢子 日和に声をかけた。

 「どうしたんだい?」

 「照望さん、━━染毬ちゃんから照望さんと何があったのか教えてもらいました」

 染毬ちゃん……染毬に『ちゃん』付け……。

 「ってことは、染毬の生い立ちを聞いたのかい?」

 「はい。……私には少し難しかったんですけど、悪い科学者さんに染毬ちゃんが今の姿にされて……えーーっと、照望さんが染毬ちゃんを助けたんですよね」

 「ああ、助けたなんて恰好のつくものでは……なかったが」

 アレでも精神年齢は積んでいる染毬のことだ━━天才科学者王色染毬の名に相応しい言葉選びで日和に語ったのだろう。

 「楽しかったかい?」

 「はい!興味深かったです!」

 「それは良かった」

 「三階うえに戻りますね!おやすみなさい!」

 「おやすみ」

 元気よく階段を駆け上がる足音が、ゆっくり静寂を生み出した。


 「……日和」


 壁に貼り付けられたコルクボードに留められた私と日和の写真が視界に入った。あまりにも素直に育ってしまったものだと私は感慨に耽る。血縁でもない私が日和を引き取り育てているのは、単なる自己満足に過ぎないはずなのに。
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