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一章.
1話.31度目の自殺
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一人の素直な魔女は恋をした。
その想いは、一途で美しかった。
いつか、この想いは魔法になる。一人の魔女。否、乙女は願うのだ。
そして、その願いは 永遠の呪いになった。
for you この物語をあなたに捧げる。
乾ききり、冷たい。 燻んでしまった真珠色のタイル。私は床から、ゆっくりと頭を持ち上げた。手元に置いておいた 三十一枚目の遺書を見つめてから、口元を流れて凝固してしまった血を拭う。
元は廃墟であった建物の無機質なコンクリートの壁。大きめの窓から照らす光が神々しく蛍光灯の切れた薄暗い部屋を照らす。これが天からの迎えだったら、どれだけ良かったことだろう。私はせせら笑うのだ。 我が身を俯瞰していないのであれば、 尚更神々しく見えていたはずの光が少しずつ 霞んでいく。
「全く、困ったものだ……」
同じ体勢で三日もうつ伏せになっていた所為か、身体中が軋む。だが、それも数分で感じなくなる事は既知の事実だ。大きい月ごとのカレンダーを片目で見つめて私は、軽い頭痛を感じた。
本当に痛みを感じるわけでは無い。もしかしたら、悩みのタネが寝ていた三日間に芽生えて根でも生やしたのだろうか。黒かったはずの私のタブレット端末が自然と十月十日と表示された。それは、必然的に何かしらの通知が来ていると考えて良い。
しかし、通知数六十件という知らなくてもよい情報を目にして、溜息をついた。こうも、電子機器というヤツはどうでもいい事ばかりお節介に主張してくる。
床に落ちていた自分の名刺を拾い上げた。 涼川 照望と書かれた名刺。自分の名前を思い出した。立派な━━校長室でよく見かけるような茶色い椅子に座る。高性能なタブレット端末でグランドピアノの白鍵のように連なる通知の一つを人差し指で左にスワイプした。
そこには、可憐な制服姿の特定の少女がこれ見よがしにと送信してきたであろう写真が、無料通話チャットアプリのトーク画面を滝のように流れていく。
「……はぁ。」
再び溜息をつく。全ての写真の左下に既読という文字が浮かんでいる。『……しまった』私が 己の愚行に気づいた時にはもう遅い。
『あ!やっと見た』
スタンプ機能があるというのに、言葉の後ろには趣味の悪い顔文字が送られてくる。悪寒と共に扉の外の階段を。タンタンタンと乾いたコンクリートを靴底で叩きつけながら駆け上がってくる何者かの足音がこちらに向かってくる。
バタンと勢いよく開く扉からは、私も用意を手伝った三泊四日分の多過ぎる荷物の入った肩掛けバッグを両手で持ち、一見清楚な……白いブレザーにチェックのスカートを着たショートヘアーのお嬢様。
否、嫁入り前の娘が駆け寄って、私のデスクに前傾姿勢で前のめり、赤い胸元のリボンを揺らす。私をひたすら問いただしてくるのだ。
この時、私は後悔する。一つ目の後悔は、私が意識を失っていたのは三日間ではなく四日間であったこと。そして、もう一つは玄関の施錠をかけ忘れていたことだった。
その想いは、一途で美しかった。
いつか、この想いは魔法になる。一人の魔女。否、乙女は願うのだ。
そして、その願いは 永遠の呪いになった。
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乾ききり、冷たい。 燻んでしまった真珠色のタイル。私は床から、ゆっくりと頭を持ち上げた。手元に置いておいた 三十一枚目の遺書を見つめてから、口元を流れて凝固してしまった血を拭う。
元は廃墟であった建物の無機質なコンクリートの壁。大きめの窓から照らす光が神々しく蛍光灯の切れた薄暗い部屋を照らす。これが天からの迎えだったら、どれだけ良かったことだろう。私はせせら笑うのだ。 我が身を俯瞰していないのであれば、 尚更神々しく見えていたはずの光が少しずつ 霞んでいく。
「全く、困ったものだ……」
同じ体勢で三日もうつ伏せになっていた所為か、身体中が軋む。だが、それも数分で感じなくなる事は既知の事実だ。大きい月ごとのカレンダーを片目で見つめて私は、軽い頭痛を感じた。
本当に痛みを感じるわけでは無い。もしかしたら、悩みのタネが寝ていた三日間に芽生えて根でも生やしたのだろうか。黒かったはずの私のタブレット端末が自然と十月十日と表示された。それは、必然的に何かしらの通知が来ていると考えて良い。
しかし、通知数六十件という知らなくてもよい情報を目にして、溜息をついた。こうも、電子機器というヤツはどうでもいい事ばかりお節介に主張してくる。
床に落ちていた自分の名刺を拾い上げた。 涼川 照望と書かれた名刺。自分の名前を思い出した。立派な━━校長室でよく見かけるような茶色い椅子に座る。高性能なタブレット端末でグランドピアノの白鍵のように連なる通知の一つを人差し指で左にスワイプした。
そこには、可憐な制服姿の特定の少女がこれ見よがしにと送信してきたであろう写真が、無料通話チャットアプリのトーク画面を滝のように流れていく。
「……はぁ。」
再び溜息をつく。全ての写真の左下に既読という文字が浮かんでいる。『……しまった』私が 己の愚行に気づいた時にはもう遅い。
『あ!やっと見た』
スタンプ機能があるというのに、言葉の後ろには趣味の悪い顔文字が送られてくる。悪寒と共に扉の外の階段を。タンタンタンと乾いたコンクリートを靴底で叩きつけながら駆け上がってくる何者かの足音がこちらに向かってくる。
バタンと勢いよく開く扉からは、私も用意を手伝った三泊四日分の多過ぎる荷物の入った肩掛けバッグを両手で持ち、一見清楚な……白いブレザーにチェックのスカートを着たショートヘアーのお嬢様。
否、嫁入り前の娘が駆け寄って、私のデスクに前傾姿勢で前のめり、赤い胸元のリボンを揺らす。私をひたすら問いただしてくるのだ。
この時、私は後悔する。一つ目の後悔は、私が意識を失っていたのは三日間ではなく四日間であったこと。そして、もう一つは玄関の施錠をかけ忘れていたことだった。
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