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小説家になりたいマン

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──この世界は退屈だ。
この世に生を受けて、16年。
この世界には、魔法や、超能力、未知の世界、そんなものが何一つない。いや、無くなっただけなのかもしれない。大陸の果て、海の果て。そんなものも昔は解明されてなかった。昔の人とっては海の果てなど、宇宙の果てに何があるのかと言っている様なものだったのかもしれない。
宇宙の果てには興味があった。解明してみたいという気持ちもあった。しかし、今の技術ではどう足掻いてもそこに至れないし、未来にも宇宙の果てに行く手段などないだろうと思う。
すでに地球上の目に見える様な事象が物理的、化学的に証明されたこの世界には、僕のような頭の悪い人間は介入する余地なんてないのかもしれない。
僕は何のために生まれたのか、怠惰に変わらない日常を過ごすために生まれたのか、いや違う。
探した。新境地を。まだ見ぬ世界を。
そして、2年前にアニメという一種の娯楽を発見した。その世界は自分の日常とは全く違っていて、その世界観に魅力された。ライトノベルにも手を出した。皆独特の世界観を持っていた。
そして現在・・・・・・やはり退屈だった。
いくら憧れてもその世界に自分は入れないのだとすぐに理解する。しかし、それでも世界観への憧れは捨てきれず、小説家になろうというサイトの見慣れた世界観に魅了され続けた。

あ、今日って1月23日!?しまった!
今日は『異世界に召喚されたんだが!?www』の新刊発売日だ!
普段なら、Amazoonで頼むのだが、どうやら新刊には特装版があるらしく、それはアニメート限定らしい。なんと面倒なことだろう。
早く買って読まないと。そして、誰よりもはやくレビューを出すのだぁ!
途端に布団の中の気持ちよさを吹き飛ばす。布団から飛び出た時のあの名残惜しさを感じながらも、いつものコーディネート、上下ジャージーに着替え、家を出る。小走りでアニメートへの道を走っている途中、いつもの妄想が始まった。
そうそう、こういう細い十字路って事故が起きやすいんだよねー。ここで、JKがトラックに弾かれそうになるところを僕が助けて、転生して・・・・・・。ぬふふ、ファンタジーな世界に行ってそこから僕の第二の人生が・・・・・・。
ここを通る時の僕の顔のキモさはかなりのものだと思うがそれでも止められない。
ふと、前を見るとJKが!おっ?おっおっおっおっ!?(^ω^ ≡ ^ω^)おっおっおっ!?!?
これは転生ワンチャンあるんじゃないか?
両脇に控えるカーブミラーをサッと確認することにした。右!こない…。左!こない…。はぁ、今日もダメか。よく考えたら僕はただの自殺志願者なんじゃないか?と俯き、自嘲気味に心の中で笑いをこぼす。
まあ、そんなことが起こるわけないよなぁ・・・・・・。
・・・・・・ん?気づいてしまった。まじで?ほんとにトラックが右から来てる・・・・・・。前の女の子は気づいていない・・・・・・。え、やばくないかこれ。状況がどんどん最悪になっていくに連れて、焦りが増していく。僕が・・・・・・飛び込んで助ける・・・・・・?無茶を言うなよ・・・・・・。無理だ、僕には・・・・・・。
何度もシミュレーションしてきた光景なのに、いざその状況下に置かれると体が動かなくなる。本当に転生して第二の人生を俺は楽しみたいのか・・・・・・?この恐怖の前に自分が如何に無力かを知る。女の子を見る。友達と電話しているようだ。電話を耳に当て幸せそうに笑っている。彼氏と話してるのかな・・・・・・。幸せそうだ・・・・・・。自分の下らない命で幸せな未来を守れるならそれでもいいんじゃないか・・・・・・?そうだ・・・・・・、第二の人生とかそんなことよりもっと大事なことがあるだろう。自分は何をやっているのか。
そう思った途端、体は自分の迷いとは裏腹に全力疾走を始めた。あの子を守る!突き飛ばした。弾かれる寸前にしてギリギリのところで突き飛ばした。そして、自分は宙を舞っていた。
意識が遠のいていく・・・・・・。死ぬのかな、俺。
でも、もしかしたらファンタジーな世界が待っているのかもしれないな・・・・・・。そう考えるとこの死も怖くはないかも知れないな、はは・・・・・・。自嘲気味に笑おうとする。しかし、最早自分の肉体は動くことすら許してはくれなかった。
──さようなら人生、さようなら退屈な世界


少年は亡くなった。
結果として、ファンタジーの世界に行くことも、第二の人生を謳歌することも叶わず、

──少年は、無に帰した。
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