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一章
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ここのところ天気が悪いというのは、空を見ればすぐにわかる。太陽の光は届かない、灰色に染まった世界。
約五日の間、二人は野宿しては歩き、野宿しては歩いての繰り返しだった。
携帯食料が尽きてしまったため、道中で魔物を倒して調理したりもした。
その手伝いをしていたおかげか、クロノアはこの周辺に出没する魔物、そしてその群れとの戦い方や何処の部位が食用として使えるのか、大抵はわかるようになっていた。
二人は洞窟《ダンジョン》まであと残り僅か、という所まで差し掛かっている。
クロノアは天を仰ぎ、直後グリエマに軽く視線を寄越す。
どうやら何か、少し顔色が悪いようだ。
「エマさん、顔色悪いですよ。調子悪いんだったら休憩しませんか?」
「そうか?いたって普通だが」
声にも若干だが覇気がないように思える。声量が落ちているのがその証拠だ。
「………でも」
「クロノア君、わたしのことはあまり気にするな。
君は、君の事だけに集中しろ」
「……はい。わかりました。でも……あまり無理はしないでくださいね」
突き放すような言い方に思わず肯定してしまう。
続けて忠告に似た言葉を言い放つが、グリエマは何も返してはくれなかった。
(俺の正体、バレたかな?いや、それはないと信じたいが……)
二人は歩く。
対して代わり映えのしない景色を視界において、ゆっくりと。
グリエマは相変わらず無表情だ。しかしその瞳の奥には、何か相反した感情がうずめ射ているように見える。
クロノアはそんなグリエマを見て、はやり少し心配である気持ちを抑えきれずにいた。
そんな動作を繰り返して、いると、周りと少し色の違う建物が目に映った。
「……あれが、ダンジョン」
「そうだ。通称……最奥の祠、一番下に到達した者はいないらしい、非常に危険なダンジョンだ」
クロノアはそんな説明を聞き、思わず固唾をのむ。そして表情を大きく変化させた。
「そんなとこ入るんですか!?めちゃくちゃ不安なんですけど……俺、死にたくないんですけどぉ……」
「問題ない。君は十分に強い。それに、何かあったら私が君を守るから」
「エマさんがそこまでいうなら……あ、でも」
「自分の身も、ちゃんと守ってくださいよ?あなたが死んだら、俺一人で帰れるかどうかわからないですから」
「君なら帰れるさ。十一歳という年齢で超越者に目覚めた君が、そう簡単に死ぬわけがないだろう」
「いや…わかりませんよ、そんなの」
そこから会話は一向に進展しなかった。
グリエマの背丈よりも幾分か高いダンジョンの天井。中を目を細めて見てみると、う数ぐらいはずの洞窟《ダンジョン》内にはかすかに光が灯っていた。
ぎこちない沈黙に心地悪さを覚えたクロノアは、たまらず足を前に出した。
「――ほら、行きましょうエマさん!」
一人でぐんぐん足を進めていくクロノア。
「え………あぁ」
一歩のみ足を出したグリエマは、そこで数センチも動かなくなる。
「やっぱり、捜索は――――」
「どうしたんですか、エマさん!早く助けに行きましょう?」
ダンジョンの僅か外、声が反響しない場所でグリエマが呟いていると、足を止めて振り返ったクロノアが声を響かせて言った。
「………あぁ、そうだな」
目を丸くさせて見てきたグリエマに不信感を募らせるも、クロノアは気にしないことにした。この人が、絶対に自分の口から何かを言わないとわかっていたからだ。
脚を交互に踏み出し進んでいくグリエマ。
彼女は、直前にバッグを入り口付近に置き、腰に挟まれた鞘を、左手で強く握りしめていた。
「行こう」
彼女は続けて、哀愁漂う瞳で吐き捨てた。
約五日の間、二人は野宿しては歩き、野宿しては歩いての繰り返しだった。
携帯食料が尽きてしまったため、道中で魔物を倒して調理したりもした。
その手伝いをしていたおかげか、クロノアはこの周辺に出没する魔物、そしてその群れとの戦い方や何処の部位が食用として使えるのか、大抵はわかるようになっていた。
二人は洞窟《ダンジョン》まであと残り僅か、という所まで差し掛かっている。
クロノアは天を仰ぎ、直後グリエマに軽く視線を寄越す。
どうやら何か、少し顔色が悪いようだ。
「エマさん、顔色悪いですよ。調子悪いんだったら休憩しませんか?」
「そうか?いたって普通だが」
声にも若干だが覇気がないように思える。声量が落ちているのがその証拠だ。
「………でも」
「クロノア君、わたしのことはあまり気にするな。
君は、君の事だけに集中しろ」
「……はい。わかりました。でも……あまり無理はしないでくださいね」
突き放すような言い方に思わず肯定してしまう。
続けて忠告に似た言葉を言い放つが、グリエマは何も返してはくれなかった。
(俺の正体、バレたかな?いや、それはないと信じたいが……)
二人は歩く。
対して代わり映えのしない景色を視界において、ゆっくりと。
グリエマは相変わらず無表情だ。しかしその瞳の奥には、何か相反した感情がうずめ射ているように見える。
クロノアはそんなグリエマを見て、はやり少し心配である気持ちを抑えきれずにいた。
そんな動作を繰り返して、いると、周りと少し色の違う建物が目に映った。
「……あれが、ダンジョン」
「そうだ。通称……最奥の祠、一番下に到達した者はいないらしい、非常に危険なダンジョンだ」
クロノアはそんな説明を聞き、思わず固唾をのむ。そして表情を大きく変化させた。
「そんなとこ入るんですか!?めちゃくちゃ不安なんですけど……俺、死にたくないんですけどぉ……」
「問題ない。君は十分に強い。それに、何かあったら私が君を守るから」
「エマさんがそこまでいうなら……あ、でも」
「自分の身も、ちゃんと守ってくださいよ?あなたが死んだら、俺一人で帰れるかどうかわからないですから」
「君なら帰れるさ。十一歳という年齢で超越者に目覚めた君が、そう簡単に死ぬわけがないだろう」
「いや…わかりませんよ、そんなの」
そこから会話は一向に進展しなかった。
グリエマの背丈よりも幾分か高いダンジョンの天井。中を目を細めて見てみると、う数ぐらいはずの洞窟《ダンジョン》内にはかすかに光が灯っていた。
ぎこちない沈黙に心地悪さを覚えたクロノアは、たまらず足を前に出した。
「――ほら、行きましょうエマさん!」
一人でぐんぐん足を進めていくクロノア。
「え………あぁ」
一歩のみ足を出したグリエマは、そこで数センチも動かなくなる。
「やっぱり、捜索は――――」
「どうしたんですか、エマさん!早く助けに行きましょう?」
ダンジョンの僅か外、声が反響しない場所でグリエマが呟いていると、足を止めて振り返ったクロノアが声を響かせて言った。
「………あぁ、そうだな」
目を丸くさせて見てきたグリエマに不信感を募らせるも、クロノアは気にしないことにした。この人が、絶対に自分の口から何かを言わないとわかっていたからだ。
脚を交互に踏み出し進んでいくグリエマ。
彼女は、直前にバッグを入り口付近に置き、腰に挟まれた鞘を、左手で強く握りしめていた。
「行こう」
彼女は続けて、哀愁漂う瞳で吐き捨てた。
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