冥界革命~死神になって冥界のルール変えちゃいます~

雪莉月花

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人間編

琥珀色の瞳

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「美咲ー、もうそろそろ八時だから起きろよー」




 ドアをノックする音と父親の声に目が覚め、私は大きなあくびをした。目を擦ると、真っ先に目に入ったのがカレンダーだった。赤い色をした三。今日は十一月三日、文化の日だ。祝日ということで、今日は高校もお休み。ということで二日後に控えている父の誕生日に備えて、プレゼントを買いに行く。ちなみにまだプレゼントは未定。そこはお店を回ってから決めるということでいいだろう。





 私が誰かって?そりゃぴちぴちのJK様だ。だがしかし、こんなおっさん臭い言い方をする女子高生が存在するのだろうかと疑うものもいるのだろう。全く、愚かだ。だからざっと説明することにした。これを読めばいかに私が魅力的な女子高校生かということが分かる。私を疑った者全員、今に見てろよ。しかし私についてどう説明したら良いか迷ってしまう。むろん、誰だって自分を紹介しろと突然言われたら戸惑うだろう。それと同じで私はこの十六年間、他人に一から自分の紹介をしたことがない。ふむ、これが丸裸にさせる感覚なのか。こんな時私はどこから制服を脱げば良いのか。ソックスか? ニーハイソックスか? しかし残念ながら私の高校はくるぶし辺りの長さの靴下が主流だ。昔はよくアニメをみてミニスカニーハイソックスに憧れたものだ。肌が透けるくらい薄いタイツも劣らないが。





 ごたごた考えた結果、家族構成をまず紹介することにした。





 まず父。佐藤修司は染めたことのない黒髪の短髪がよく似合う、自慢の父だ。娘の贔屓目かもしれないが顔がそこそこ整っている四十二歳。髭は毎朝の洗顔と共に残さず剃って、毎朝ご飯を炊きながら味噌汁を混ぜるいいお父さんだ。(私がファザコンということはまず置いといて)身長は小学生の時に聞いた時点で百七十七センチ。体重は知るよしもなく…。だが太ってはいない。少し細いな、って思うことはあるがたまに覗く風呂場では良い体をしていた。胸から腹にかけて美しい曲線。かといって全てが筋肉に包まれていない、脂肪が程よく乗った横腹。そしてなにより私と鉢合わせしたときに見せる控えめな笑顔と淡いピンクに染まった頬。とてつもなくそそる。一つ言っておくが、変態じみた行動をしているわけではない。ただ畳んだ洗濯物を入れようとするときたまに鉢合わせするというだけだ。まぁ、狙っているのだが。そして何より風俗に行ったような痕跡もなく、正真正銘清潔な父だ。まぁあの性格で毎晩女遊びをする父であったら、期待と興奮で胸が高まるが。さておき、もっと父を紹介したいが、ここで止めよう。








 次に弟。佐藤修真は十一歳小学六年生。顔は父親似で年齢のわりには素直で、可愛らしいやつだ。どれくらい素直というかって? 私が買ったエロ本たちを見つけても父にいいつけない良い子だ。全く、誰の教育の賜物だろうか。間違いなく、私だ。そして驚く程白い肌を持ち合わせている。そりゃもう私の肌とは比べものにならないくらいだ。顔も世のショタコンがほっとかないくらい可愛らしい顔をしている。余談だが、昔修真は知らないおじさんに声をかけられたことがあるらしい。それも「お菓子とゲームをあげるから、こっちおいで」という誘拐犯のベターなセリフを言われたらしい。それ以来修真が外出するときは私がついていってあげている。(本人は中学生になるのを機に、辞めて欲しいと言われているのだが、あの容姿では説得力がない)






 最後に私。佐藤美咲は今年高校に進学したばかりの十六歳。体型はごく普通。胸は成長途中で、恋人ナシ。好きなものは父と筋肉とかわいいもの。最近はまっているものは登校途中のジムに入っていくお気に入りの人を鑑賞すること。特に大腿四頭筋が魅力的なナイスガイ。多分二十代後半だろう。毎日念入りにセットしているであろうツーブロックは、私を刺激させた。ちなみに父、弟、ツーブロさんの説明を読めば、私が男好きと勘違いしてしまうのだろう。好きなもの好きだ。だが私は女性にも興味がある。実際、初恋は保育園のちえ先生だ。柔らかな胸によく子どもながらに抱きついたものだ。そこから、女性の胸に興味を持ち始めたのは確か。中学生の頃に、クラスメイトに悪戯して怒られていたのは甘酸っぱい思い出だ。






 私と弟には母がいない。数年前、私が小学生に上がった直後、母が蒸発した。相手は見るからに悪そうなグラサンをかけた大男。はっきり言って父の方が魅力的だ。母曰く、「あなたのセックスはただ優しいだけ、刺激が足りないのっ」らしい。全く、小学生の娘のいるリビングでよくそんなセリフを言えたな、とつくづく感心してしまう。今でもあの、小娘みたいにきゃんきゃん騒いだ母の姿が目に焼き付いている。いつもリップなんてつけなかった母が、口紅という言葉が似合う赤を唇につけていたときはぞっとした。鳥肌がたった、とはこのことだ。母が飛び出した後、私は家族を守ることに決めた。小学生が、笑っちゃうよな。だけど父の顔が忘れられないのだ。夜中に目が覚めて水を飲みに行った時、リビングには父がいた。明かりも付けずに、暗闇に溶け込む父。お父さん、と声をかけると父は泣いていた。「ごめんな、美咲にこれから寂しい思いをさせてしまう」と震えながら笑った父の顔が、どうしても忘れない。綺麗な琥珀色が滲んだような、目。元々、私は父親似。あれから私は鏡を見る度に、自身の瞳が好きになった。父に似ていない、弟。だけど瞳だけは、父そっくりな弟。






 守りたい、何があっても。正義とか、関係なく、綺麗な宝石ひとみを守りたいと思った。そのためなら私は手段を選ばない。宝石が湿るのは、とてつもなく美しい。だけど、もう悲哀な涙は御免だ。決して泣かせはしない。それが、私の業なのだから。




 

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