しっかり者がダメ男に惹かれる法則(2)

坂田 零

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ACT3  ローマは一日にして成らず、そう言った先人まじすげー3

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 今日のレッスンもハードだった。
 ぐったり疲れたけど、嫌な疲れではなくて、きっと多分、人生に二度目ぐらい真剣に音楽やってる気がしてる。
 
『Breathless 息ができない
 たとえ地球が止まっても この思いは消せない
 大地が光を求めるように あなたを求める
 
 Stranger 彷徨う思い
 たとえ命がついえても この心は留まり
 月が闇で輝くように あなたを照らす』


 俺とあおいは、自社ビルのロビーでタクシーを待ちながら、さっきからどこかに電話をかけている大沢さんを尻目に、二人で【Breathless】を唄っていた。
 
 レッスン終わりに、あのマーボさんが目を丸くして

「あたなたたちって・・・もしかして、すごく相性いいのかしらね?
今日が初めての音合わせとは思えないほど、絶妙なハーモニー・・・・
これならいけそうね、オーケストラでも!」

 そう言っていたことは、案外当たっているのかもしれない。

「てっちゃん今音外した!」

「すまん知ってた・・・・w」

 唄いやめて、そんな会話をしつつ、妙に近い場所であおいは満面の笑顔を俺に見せた。

「思った以上に、これは仕上がり早くなりそうだねw
デモオケはすぐ上げてくれるってマーボさん言ってたし、出来上がり楽しみだね!」

「この曲良い曲だよな~歌詞はあおいが作ったの?」

 俺はそう聞きつつ、禁煙中でなんとなく口寂しくなるんで、ミンティアをポケットから出して、2粒口に放り込む。
  
「そうだよ!でもねぇ・・・いつも手直しされちゃう!
言葉にインパクトないんだってさww」

 そう言いながらも、あおいはさしてそれを気に止めてる様子もなかった。
 俺は思わず笑った。

「言葉にインパクトがないねwwなるほどww」

「そういえばさ、あたし、てっちゃんのバンドの曲、きぃちゃんに聞かせてもらったんだ」

「おお!まじかw」

「うんうん、てっちゃんてさ、なんか良い歌詞書くよね?」

「そうかな?」

「そうだよ!
ねぇ、てっちゃん・・・?」

「なんだよw」

「これからさ・・・色々、一緒に頑張ってこう?
あたし・・・・なんか、てっちゃんがいると、妙に安心しちゃうんだよね・・・」

 あおいはそう言うと、少しうつむき加減になって、ぎゅっと俺のジャンパーの袖を掴んだ。

「なんだよそれwそれは人気アーティストの言葉じゃなくないか?
どしたのおまえ?w」

「・・・今夜はそんな気分なの!」
 
 あおいはちょっとだけ拗ねたような表情になって、何故か俺の背中に自分の背中を押し付けて寄りかかってくる。
 その時ちょうど、電話していた大沢さんが戻ってきた。

「Marin、タクシーきたよ!
明日は朝からファッション誌の表紙撮影だから、9時には迎えにいくんで起きててね!」

 あおいは、ふぅっと大きく息を吐いて、俺の背中から自分の背中を離した。

「あーあ、行かなくちゃ・・・なんだかシンデレラな気分」

 その言葉に俺は思わず笑った。

「はははwシンデレラとかww
あおい、案外乙女なのなww」

「なによぉ、あたしは元から乙女です!もぉ!」

 そんなことを言いながら、あおいはにっこり笑って、ぴょんっと跳ねるように俺の前に立つと、そのまま大きく腕を伸ばして俺の首に抱き着いてくる。
 俺は驚いて、目を丸くした。

「!?」

「てっちゃん、一緒に歌うのすっごく楽しかった・・・っ
次に会うの・・・楽しみにしてるねっ!
あたしもいっぱい練習しとくから、てっちゃんもサボっちゃダメだよ!」

 抱きついてきたあおいの体を受け止めると、ふんわりと香って来る香水の匂い。
 その香りが、妙に男の本能をくすぐる感じで、余計にどきっとしてしまう。
 元からあおいはアーテぃストで、凡人にはない謎の引き寄せオーラを持ってるから、やたらめったらどきどきした。

 先日、家に帰ったら何故かきなこがいた訳だが・・・
 あの日、一緒に同じベッドで寝たのがあおいだったら・・・
 多分、きっと、余計なことしてたな・・・とか、ついそんなことを考えた。

 そんな男の本能的な部分をくすぐったあおいは、一度ぎゅーっと俺を抱きしめてから、またにっこり笑って体を離した。

「またね!」

「おおう」
 
 大沢さんに促され、あおいは自動ドアに向かって早足で歩いていく。
 俺はその背中を、なんとなく追いかけながら、やはり自動ドアを出た。
 あおいを乗せたタクシーが、銀座の喧騒に消えていく。
 駅に向かって歩きながら、俺はそのタクシーを見送った。

 その時・・・

 人通りの中に、やはり、俺と同じ方向を見ながら、スマホを構えて立ち尽くすサラリーマン風の男を見つけた。
 あおいが乗ったタクシーを撮影してるようにも見える・・・

「なんだ、あいつ・・・?」

 俺はそう思ったが、まぁいいか・・・と、駅に向かって歩き出した。
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