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第一節 開戦の調べ3
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「本当に、随分とじゃじゃ馬な姫君だな?あの姫君は?あれじゃ、スターレットもてこずるはずだ・・・・」
実に愉快そうな口調で、あたふたするウィルタールに声をかけてきたのは、他でもないラレンシェイである。
その美麗で妖艶な顔を、可笑しくてたまらないと言ったように綻ばせて、彼女もまた、傍らで草を食んでいたリタ・メタリカの軍馬の手綱を取るのだった。
そんな彼女に振り返りながら、ウィルタールは、半ばやけになって叫んだのである。
「もう!なんて事を言ったのですか、貴女は!!?それじゃなくても不機嫌だったのに!!余計なことを言わないで下さいよ!!」
「何を言うか?ただ、本当のことを言ったまでではないか?あの姫君、あまりにも感情が露骨ゆえ、つい面白くて
な」
何の悪気もなさそうにそう答えると、ラレンシェイもまた、傍らにいる騎馬の鞍へと機敏な仕草で飛び乗ったのである。
「おぬしも早く来い、あの姫を守るのがおぬしの役目であろう?」
妖艶な唇で艶やかに微笑して、馬上から片手を伸ばすと、ラレンシェイは、半ば強引にウィルタールの腕を掴んだのだった。
「うわ!?」
女性とは思えぬほどの豪腕で腕を引き上げられ、ウィルタールの華奢な体は、いつの間にか、腹這いの状態で鞍の後輪に乗せられていたのである。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!僕はまだ!スターレット様に・・・!!」
「スターレットとは後でゆっくり話もできように?よく掴まっておるのだぞ」
抗議の声を上げたウィルタールを全く無視しきって、異国の女剣士のブーツが馬腹を蹴る。
「うわぁ!?」
危うく振り落とされそうになったウィルタールが、咄嗟に鞍の下を掴んだ。
軽快な馬蹄を響かせて、ラレンシェイの駆る騎馬が炎上するサーディナに向けて、海岸線を疾走し始める。
長く見事な紅の髪が、しなやかに引き締まる彼女の背中で弾むように揺れていた。
そんな彼女を睨むように見て、ウィルタールが怒ったように声を上げる。
「一体どういう人なんですか貴女は!?酔狂にも程がありますよ!?」
「そう言えば、スターレットにも似たようなことを言われたな?」
しかし、全く物怖じしない彼女は、なにやら愉快そうに一笑するとそう答えて言ったのだった。
騎馬が足を踏み出す度に揺れる、明るい茶色の前髪の下で、怒ったように眉根を寄せながら、ウィルタールは、尚も抗議の声を上げたのである。
「スターレット様を呼び捨てにしないでくださいよ!あの方は仮にも、ロータスの大魔法使いなんですよ!?」
「別によいではないか?私があやつをどう呼ぼうと、おぬしには関係あるまい?細かい奴だな?」
「そりゃ、確かに関係ないかもしれませんが・・・・!でも、礼儀というものがあるではありませんが!?」
「礼儀も何も・・・・・私はあやつの部下でもなんでもないからな・・・それに」
「それになんですか!?」
「ある意味私は・・・おぬしよりも、あやつの事を知っているかもしれぬしな」
「はぁ!?」
何やら意味深な含みを持ったその言葉の意味が判らず、ウィルタールは、鞍に掴まりながら、実に怪訝そうな顔つきをして、その唇をヘの字に曲げたのだった。
炎上するサーディナの街に、今、けたたましい馬蹄が急速近づいていく。
海鳴りの轟く最中、天空を渡る風の精霊は、未だに、激しい警告の声を上げ続けていた・・・・
実に愉快そうな口調で、あたふたするウィルタールに声をかけてきたのは、他でもないラレンシェイである。
その美麗で妖艶な顔を、可笑しくてたまらないと言ったように綻ばせて、彼女もまた、傍らで草を食んでいたリタ・メタリカの軍馬の手綱を取るのだった。
そんな彼女に振り返りながら、ウィルタールは、半ばやけになって叫んだのである。
「もう!なんて事を言ったのですか、貴女は!!?それじゃなくても不機嫌だったのに!!余計なことを言わないで下さいよ!!」
「何を言うか?ただ、本当のことを言ったまでではないか?あの姫君、あまりにも感情が露骨ゆえ、つい面白くて
な」
何の悪気もなさそうにそう答えると、ラレンシェイもまた、傍らにいる騎馬の鞍へと機敏な仕草で飛び乗ったのである。
「おぬしも早く来い、あの姫を守るのがおぬしの役目であろう?」
妖艶な唇で艶やかに微笑して、馬上から片手を伸ばすと、ラレンシェイは、半ば強引にウィルタールの腕を掴んだのだった。
「うわ!?」
女性とは思えぬほどの豪腕で腕を引き上げられ、ウィルタールの華奢な体は、いつの間にか、腹這いの状態で鞍の後輪に乗せられていたのである。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!僕はまだ!スターレット様に・・・!!」
「スターレットとは後でゆっくり話もできように?よく掴まっておるのだぞ」
抗議の声を上げたウィルタールを全く無視しきって、異国の女剣士のブーツが馬腹を蹴る。
「うわぁ!?」
危うく振り落とされそうになったウィルタールが、咄嗟に鞍の下を掴んだ。
軽快な馬蹄を響かせて、ラレンシェイの駆る騎馬が炎上するサーディナに向けて、海岸線を疾走し始める。
長く見事な紅の髪が、しなやかに引き締まる彼女の背中で弾むように揺れていた。
そんな彼女を睨むように見て、ウィルタールが怒ったように声を上げる。
「一体どういう人なんですか貴女は!?酔狂にも程がありますよ!?」
「そう言えば、スターレットにも似たようなことを言われたな?」
しかし、全く物怖じしない彼女は、なにやら愉快そうに一笑するとそう答えて言ったのだった。
騎馬が足を踏み出す度に揺れる、明るい茶色の前髪の下で、怒ったように眉根を寄せながら、ウィルタールは、尚も抗議の声を上げたのである。
「スターレット様を呼び捨てにしないでくださいよ!あの方は仮にも、ロータスの大魔法使いなんですよ!?」
「別によいではないか?私があやつをどう呼ぼうと、おぬしには関係あるまい?細かい奴だな?」
「そりゃ、確かに関係ないかもしれませんが・・・・!でも、礼儀というものがあるではありませんが!?」
「礼儀も何も・・・・・私はあやつの部下でもなんでもないからな・・・それに」
「それになんですか!?」
「ある意味私は・・・おぬしよりも、あやつの事を知っているかもしれぬしな」
「はぁ!?」
何やら意味深な含みを持ったその言葉の意味が判らず、ウィルタールは、鞍に掴まりながら、実に怪訝そうな顔つきをして、その唇をヘの字に曲げたのだった。
炎上するサーディナの街に、今、けたたましい馬蹄が急速近づいていく。
海鳴りの轟く最中、天空を渡る風の精霊は、未だに、激しい警告の声を上げ続けていた・・・・
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