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第一節 開戦の調べ17
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禍々しく神々しくきらめく金色の刃を、真っ直ぐに視線の先に向けながら、不敵に微笑するジェスターが、サングダ―ル語で低く言った。
「地獄に落ちたい輩は・・・・・遠慮なくかかって来い・・・・」
国王付きの護衛達が、罵声を上げて一斉に刃を振りかざした。
朱の衣の長い裾が流れるように揺れ、迅速で翻された鋭利な金色の斬撃が、正面の兵士の首を両断し、そのまま、左舷の兵士の喉を項まで貫き通す。
瞬時に刃を引き抜くと、俊敏な動きで身を低く落し右舷からの斬撃をまんまと避けきって、恐れも知らず刃を向けてきた輩の腹を、鋭く迅速い一線で横に薙ぎ払った。
血まみれの腹わたを流出させ、その場に倒れ伏した兵士の背後から、別の兵士が豪速で刃を振り下ろしてくる。
鮮やかで美しい緑玉の瞳が炎の如き煌きを放つと、しなやかに空を舞った閃光の弧が、火花を上げてそれを弾き返し、間髪入れずに振り上げられた長い足が、敵兵の顔面をしたたかに蹴り飛ばしたのだった。
刹那、素早く突き出された金色の刃の切っ先が、そのまま、その眉間を貫き通す。
顔中を血まみれにした兵士が、ぴくぴくと体を痙攣させながら、絨毯の上に力なく倒れ伏した。
ふんと鼻で笑ったジェスターの背後から、今度は、また別の兵士が切りかかり、同時に、低く鋭い唸りを上げて左舷からも白刃が翻った。
野を駈ける獣の如き柔軟な肢体が、助走もつけずに軽く宙を舞い、ものの見事にそれを避けきると、落下しながら翻された豪速の刃が、背後から迫った輩の首を撥ね飛ばし、着地と同時に左舷の輩の肩を甲冑ごと胸まで切り下ろしている。
その秀でた身体能力は、その辺りの兵士如きが容易に真似できるものではない。
自分が死したことすら気付かぬまま、鮮血を吹き上げる無粋な輩どもが、幕舎の中で次々と倒れ伏していく。
気付けば、広い天幕の中は死臭と血の匂いで充満し、そのあちこちには、どす黒い血溜まりが出来上がっていた・・・・
もはやそこには、立って戦える者など一人もいない・・・・
後に残ったのは、魔法剣士ジェスターと、そして、幕舎の奥へと追い詰められた、サングダ―ルの若き国王だけであった。
「・・・・き、貴様!!」
額からだらだらと脂汗を垂らし、その頬を引きつらせ、腰の剣すら抜けぬデルファノ二世が、ゆっくりとこちらに歩み寄ってくるうら若きアーシェの魔法剣士の姿を、舐めるような視線で顧みた。
「この私を手にかける気か!?私を殺せば!必ずや報復に立ち上がる者がでるぞ!我が国民を敵に回すことになるぞ!」
それは、全くもって的を射ていない奇妙な命乞いであった・・・・
朱の衣の長い裾をゆるやかに揺らしながら、ジェスターは、ふんと鼻を鳴らしてせせら笑う。
背筋が寒くなる程冷酷で、禍々しい程に美しい緑玉の瞳が、実に愉快そうに細められた。
「知ったことか・・・・それに、おまえを慕って兵を上げる者など、サングダ―ルにいるとは思えんな・・・・・・」
凛々しい唇の両端が、性悪に吊り上がった。
妖剣の鋭利な切っ先が、小刻みに体を震わせ始めたデルファノ二世の鼻先に突きつけられる。
「こ・・・この・・・・ば、人妖(ばけもの)め!」
「人妖(ばけもの)か・・・・・・・」
一国の王たる者の言葉を思えぬその間抜けな言いように、ジェスターは、殊更愉快そうにその端正な顔を歪めた。
そして、意図して低めた声で、こう言ったのである・・・
「確かに・・・・俺は、人妖(ばけもの)だ・・・・・」
不意に・・・・彼の端正な顔から、表情が消えた。
爛々と輝く美しく鮮やかな両眼が、今、大きく見開かれる。
「さぁ・・・覚悟を決めろ・・・・おまえの行き先は、地獄(ゲヘナ)だ・・・・」
「ま、待・・・・!!?」
金色に閃く鋭利な閃光の弧が、鋭い音を上げて空を薙ぐ。
恐怖に慄く異国の王の頚動脈を、容赦のない斬撃が迅速で浚っていった。
鈍い衝撃が腕に伝わると、目も口も大きく開いたままの生首が、鮮血の帯を引いて宙を舞った。
金色の甲冑を纏った体が、力なく絨毯の上に崩れ落ちる。
その傍らに、ぼたりと鈍い音を立てて転がった生首・・・・
恐怖で引きつった表情で固まるそれを、片手で鷲掴みにして、ジェスターは、恐ろしいほど冷酷な無表情のまま、ゆっくりと踵と返したのである・・・・
生ける者のいなくなった幕舎の向こう側では、空と海をわたる風の精霊が、けたたましい警告の声を上げていた・・・・
「地獄に落ちたい輩は・・・・・遠慮なくかかって来い・・・・」
国王付きの護衛達が、罵声を上げて一斉に刃を振りかざした。
朱の衣の長い裾が流れるように揺れ、迅速で翻された鋭利な金色の斬撃が、正面の兵士の首を両断し、そのまま、左舷の兵士の喉を項まで貫き通す。
瞬時に刃を引き抜くと、俊敏な動きで身を低く落し右舷からの斬撃をまんまと避けきって、恐れも知らず刃を向けてきた輩の腹を、鋭く迅速い一線で横に薙ぎ払った。
血まみれの腹わたを流出させ、その場に倒れ伏した兵士の背後から、別の兵士が豪速で刃を振り下ろしてくる。
鮮やかで美しい緑玉の瞳が炎の如き煌きを放つと、しなやかに空を舞った閃光の弧が、火花を上げてそれを弾き返し、間髪入れずに振り上げられた長い足が、敵兵の顔面をしたたかに蹴り飛ばしたのだった。
刹那、素早く突き出された金色の刃の切っ先が、そのまま、その眉間を貫き通す。
顔中を血まみれにした兵士が、ぴくぴくと体を痙攣させながら、絨毯の上に力なく倒れ伏した。
ふんと鼻で笑ったジェスターの背後から、今度は、また別の兵士が切りかかり、同時に、低く鋭い唸りを上げて左舷からも白刃が翻った。
野を駈ける獣の如き柔軟な肢体が、助走もつけずに軽く宙を舞い、ものの見事にそれを避けきると、落下しながら翻された豪速の刃が、背後から迫った輩の首を撥ね飛ばし、着地と同時に左舷の輩の肩を甲冑ごと胸まで切り下ろしている。
その秀でた身体能力は、その辺りの兵士如きが容易に真似できるものではない。
自分が死したことすら気付かぬまま、鮮血を吹き上げる無粋な輩どもが、幕舎の中で次々と倒れ伏していく。
気付けば、広い天幕の中は死臭と血の匂いで充満し、そのあちこちには、どす黒い血溜まりが出来上がっていた・・・・
もはやそこには、立って戦える者など一人もいない・・・・
後に残ったのは、魔法剣士ジェスターと、そして、幕舎の奥へと追い詰められた、サングダ―ルの若き国王だけであった。
「・・・・き、貴様!!」
額からだらだらと脂汗を垂らし、その頬を引きつらせ、腰の剣すら抜けぬデルファノ二世が、ゆっくりとこちらに歩み寄ってくるうら若きアーシェの魔法剣士の姿を、舐めるような視線で顧みた。
「この私を手にかける気か!?私を殺せば!必ずや報復に立ち上がる者がでるぞ!我が国民を敵に回すことになるぞ!」
それは、全くもって的を射ていない奇妙な命乞いであった・・・・
朱の衣の長い裾をゆるやかに揺らしながら、ジェスターは、ふんと鼻を鳴らしてせせら笑う。
背筋が寒くなる程冷酷で、禍々しい程に美しい緑玉の瞳が、実に愉快そうに細められた。
「知ったことか・・・・それに、おまえを慕って兵を上げる者など、サングダ―ルにいるとは思えんな・・・・・・」
凛々しい唇の両端が、性悪に吊り上がった。
妖剣の鋭利な切っ先が、小刻みに体を震わせ始めたデルファノ二世の鼻先に突きつけられる。
「こ・・・この・・・・ば、人妖(ばけもの)め!」
「人妖(ばけもの)か・・・・・・・」
一国の王たる者の言葉を思えぬその間抜けな言いように、ジェスターは、殊更愉快そうにその端正な顔を歪めた。
そして、意図して低めた声で、こう言ったのである・・・
「確かに・・・・俺は、人妖(ばけもの)だ・・・・・」
不意に・・・・彼の端正な顔から、表情が消えた。
爛々と輝く美しく鮮やかな両眼が、今、大きく見開かれる。
「さぁ・・・覚悟を決めろ・・・・おまえの行き先は、地獄(ゲヘナ)だ・・・・」
「ま、待・・・・!!?」
金色に閃く鋭利な閃光の弧が、鋭い音を上げて空を薙ぐ。
恐怖に慄く異国の王の頚動脈を、容赦のない斬撃が迅速で浚っていった。
鈍い衝撃が腕に伝わると、目も口も大きく開いたままの生首が、鮮血の帯を引いて宙を舞った。
金色の甲冑を纏った体が、力なく絨毯の上に崩れ落ちる。
その傍らに、ぼたりと鈍い音を立てて転がった生首・・・・
恐怖で引きつった表情で固まるそれを、片手で鷲掴みにして、ジェスターは、恐ろしいほど冷酷な無表情のまま、ゆっくりと踵と返したのである・・・・
生ける者のいなくなった幕舎の向こう側では、空と海をわたる風の精霊が、けたたましい警告の声を上げていた・・・・
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