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第三節 混迷の暁に騒乱はいずる7
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姿勢を低くして黒馬の手綱を取っていたレダが、ふと背後を振り返り、白銀の剣を鞘に収め再び鞍上に腰を下ろしたシルバを顧みる。
「あれは、ロータスの大魔法使い・・・?」
「ああ」
小さく頷いたシルバの脳裏に、ふと、昨夜、嵐の中で対峙したアルアミナという魔物のことが過ぎっていく・・・
深き地中に眠る紫水晶のように澄んだ右目を、僅かばかり切な気に細めて、彼は、呟くように言うのだった。
「昨夜、アルアミナと戦ったのが俺じゃなく、あいつだったら・・・
あの娘は、死なずに済んだのかもしれない・・・・」
広い肩に羽織られた純白のマントが、流れるように虚空に棚引いた。
その言葉に、レダは、鮮やかな紅の瞳でシルバの端正な顔を見つめると、跳ね上がる艶やかな前髪の下で、ごく自然に微笑したのである。
「・・・・馬鹿ね・・・絶対にそうだったとは限らないわ・・・・
本当に、貴方は、変なところで優し過ぎる・・・・・・
武人向きの気性じゃないわ、敵に情けをけるなんて・・・・」
そう言ったレダの手から手綱を預かりながら、シルバは、形の良い眉をどこか困ったように潜めて、再び小さく微笑したのである。
「・・・昔、バースにもそう言われた事がある・・・・・反論はしないよ、君の言う事は当たってる」
「また、『反論はしない』なの?」
「・・・・反論は・・・できない・・・・」
ますます困ったような顔つきになってそう答えた彼に、レダは、何やら可笑しそうに笑ってみせる。
その時、疾走する黒馬の傍らに、青き魔豹リュ―インダイルが、背後から俊足で追い着いてきたのである。
彼の姿は既にいつもの豹の姿に戻っており、俊敏でしなやかに地面を蹴りながら、金色の眼差しで馬上の二人を見上げたのだった。
『大事はなさそうだな?そなたらも?』
『ええ、大丈夫よ、リュ―イもね?』
何やら得意げにそう答えたレダを、リュ―インダイルは、まるで微笑うかのように金色の瞳を細めながら見据えたのである。
けたたましい馬蹄が暁の中にこだましていく。
この日が終わる前には、おそらく、アルカロスの峠に辿り着くことができるだろう・・・
姿勢を低くして黒馬の手綱を取っていたレダが、ふと背後を振り返り、白銀の剣を鞘に収め再び鞍上に腰を下ろしたシルバを顧みる。
「あれは、ロータスの大魔法使い・・・?」
「ああ」
小さく頷いたシルバの脳裏に、ふと、昨夜、嵐の中で対峙したアルアミナという魔物のことが過ぎっていく・・・
深き地中に眠る紫水晶のように澄んだ右目を、僅かばかり切な気に細めて、彼は、呟くように言うのだった。
「昨夜、アルアミナと戦ったのが俺じゃなく、あいつだったら・・・
あの娘は、死なずに済んだのかもしれない・・・・」
広い肩に羽織られた純白のマントが、流れるように虚空に棚引いた。
その言葉に、レダは、鮮やかな紅の瞳でシルバの端正な顔を見つめると、跳ね上がる艶やかな前髪の下で、ごく自然に微笑したのである。
「・・・・馬鹿ね・・・絶対にそうだったとは限らないわ・・・・
本当に、貴方は、変なところで優し過ぎる・・・・・・
武人向きの気性じゃないわ、敵に情けをけるなんて・・・・」
そう言ったレダの手から手綱を預かりながら、シルバは、形の良い眉をどこか困ったように潜めて、再び小さく微笑したのである。
「・・・昔、バースにもそう言われた事がある・・・・・反論はしないよ、君の言う事は当たってる」
「また、『反論はしない』なの?」
「・・・・反論は・・・できない・・・・」
ますます困ったような顔つきになってそう答えた彼に、レダは、何やら可笑しそうに笑ってみせる。
その時、疾走する黒馬の傍らに、青き魔豹リュ―インダイルが、背後から俊足で追い着いてきたのである。
彼の姿は既にいつもの豹の姿に戻っており、俊敏でしなやかに地面を蹴りながら、金色の眼差しで馬上の二人を見上げたのだった。
『大事はなさそうだな?そなたらも?』
『ええ、大丈夫よ、リュ―イもね?』
何やら得意げにそう答えたレダを、リュ―インダイルは、まるで微笑うかのように金色の瞳を細めながら見据えたのである。
けたたましい馬蹄が暁の中にこだましていく。
この日が終わる前には、おそらく、アルカロスの峠に辿り着くことができるだろう・・・
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