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第三節 混迷の暁に騒乱はいずる10
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このギルトルクは、魔王と呼ばれる以前のラグナ・ゼラキエル・アーシェの姿をよく知る者である。
遥か古の昔、ラグナ・ゼラキエルは・・・・妖剣『アクトレイドス』を操る魔法剣士であり、まだ小国であったリタ・メタリカに侵攻してくる異国の兵を、その名を聞いただけで恐れ慄かせたという、勇猛果敢な勇士であった・・・・
今、眼前に立つこの青年は、姿は違えど、醸し出すその気配も表情も、全くあの時のラグナ・ゼラキエルと同じ・・・・
『そなたは・・・・うつつよに目覚めし御方の弟たる者のはず・・・・!?我が一族を裏切りし者のはず!だのに、何故・・・・!?そなたは・・・何者だ・・・・!?』
『魔物ごときに裏切り者呼ばわりされる筋合いは無い・・・・・・・本当に、どいつもこいつも、似たような事を聞いてき
やがる・・・俺が誰であろうと、たかが使い魔に説明してやる義理も無い・・・・』
そう言ったジェスターの鮮やかな緑玉の瞳が、炎の色を映して朱に輝く髪の下で、どこか冷淡に、しかし実に不敵に微笑した。
その眼差しが、不意に、傍らで【無の三日月(マハ・ディーティア)】を構えるリーヤに向くと、彼は、低く鋭い声で言葉を続ける。
「リーヤ・・・・この魔物の狙いはおまえの命だ。
アーシェの魔物の黒炎は、【無の三日月(マハ・ディーティア)】の『ザイン』で全て打ち消すことができる。【無の三日月(マハ・ディーティア)】を使いこなせよ・・・・・」
その言葉の全てが終わるか終わらないかの内に、ジェスターの爪先が地面を蹴った。
「言われなくてもやってみせます・・・・っ!その代わり、この魔物を倒したら、さっき貴方が言っていた言葉の意味を、きちんと説明して貰いますよ!」
濃紺の衣の裾を翻したジェスターの背中にそんなことを叫びながら、リーヤは、綺麗な眉を鋭く眉間に寄せると、彼女もまた、【無の三日月(マハ・ディーティア)】を構えたまま俊足で地面を蹴ったのである。
その時、黒炎に覆い尽くされたタールファの町に、清らかで荘厳なるジャハバル神殿の鐘が鳴り響いた。
とたん、闇の焔が舞う空に、青き雷の閃光が走り、それは人も家屋を焼き尽くさんとする黒炎を鎮めるかの如く、鐘の音と共に雨粒のような光の粒子となって町中に降り注いだのである。
それが誰の業であるか、瞬時に気付いたジェスターが、ふと、その凛々しい唇で小さく微笑う。
柔軟な両足のばねが叩くように石畳を蹴ると、野を駈ける獣の如きしなやかな肢体が、濃紺の衣の裾を棚引かせながらふわりと虚空を舞った。
ギルトルクの無骨な手が、腰に履いた魔剣【ジェン・アーガン】を一瞬にして抜き払う。
紅蓮の炎を纏った金色の大剣の鋭い軌跡が、虚空から一気にギルトルクの頭上へと振り下ろされる。
闇の魔法剣士が、青銅色の刀身を迅速で翻し、黄金の閃光を引くその重い斬撃を、真っ向から弾き返した時だった、虚空で軽く捻られたジェスターのしなやかで柔軟なその肢体は、そのまま、ギルトルクの背後へと軽い足音を立てて着地したのである。
炎の色を映し朱色に輝く見事な栗毛の下で、ジェスターの鮮やかで美しい緑玉の瞳が、何ゆえかニヤリと不敵に笑う。
『シャム・アーシェス(守りの炎)』
彼の発した呪文と呼ばれる古の言語が、今、ギルトルクの眼前から【無の三日月(マハ・ディーティア)】をかざして走りこんでくる、【破滅の鍵】リーヤティアの肢体を守りの炎で包み込んだ。
光のような焔を纏う美しき姫君は、緋色のマントをなだらかな肩で棚引かせ、艶やかな紺碧色の巻き髪を乱舞させながら、迅速で手首を翻す。
「ったあぁぁぁ――――っ!」
空気を熱く振動させる朱き刃が閃光の帯を引き、にわかに厳しい顔つきをしたギルトルクの眼前に迫りくる。
紫のローブを翻し、屈強な体にそぐわぬ機敏さで横に飛び退くと、熱波を帯びる【無の三日月】の朱き斬撃を一瞬にしてかわしたのだった・・・・
しかし・・・・
脈打つように虚空を振動させたの朱き刃の残光が、眩いばかりに輝くと、次の瞬間、それは柄無き三日月型の刃に成り果てたのである。
炎の如き熱を帯びる三日月型の鋭利な残光が、唸るように宙を両断しながら、豪速でギルトルクの元へと迸る。
流石の闇の魔法剣士も、これには思わず驚愕で目を剥いた。
『何・・・・・・っ!?』
ぎゅぅんと鋭い唸りを上げた熱き波動の刃を、寸前で黒炎を纏い防いだギルトルクであったが、その眼前では、既に二撃目が翻されている。
屈強な闇の魔法剣士と対峙しながらも、臆す事無く、爛と強く輝く紺碧色のその瞳。
リーヤの手から放たれた朱の刃が、ギルトルクの首を狙って真っ向から閃光の帯を引く。
朱き刀身がどくんと強く脈打つと、凄まじい熱を帯びる光の刃が、弾ける波動を伴って虚空に鋭い唸りを上げた。
『【鍵】たる者は、怯えるだけの兎ではないと言うことか・・・・』
金色の両眼を、鋭くもどこか愉快そうに細めたギルトルクの手が、ジェン・アーガンの鋭利な刃を持って、【無の三日月】の斬撃を一瞬にして弾き返す。
ぶつかり合った刃から、朱と青の火花が周囲に飛び散ると、間髪入れずに、ギルトルクの屈強なその腕が、凄まじいばかりの豪剣をリーヤに向かって切り返した。
俊敏な身のこなしで後方に飛び退いたリーヤの元に、今度は、黒き炎を纏う鋭い斬撃が、閃光の帯を描いて飛び込んで来る。
緋色のマントが虚空に棚引き、伸び上がった【無の三日月】の光の刃が、封魔の鐘の音が轟く最中で、朱き火花を散して嘆きの剣を受け止めたのだった。
交差した刃の合間から、強く果敢な紺碧色の両眼が、ギルトルクの金色の瞳を睨むように見つめすえる。
強風の中に凛と咲く花のような、美しくも強靭な輝きを宿す【破滅の鍵】のその眼差し。
先程から、その肢体に紅蓮の焔を纏いながらも、金色の妖剣を構える事もせず、そんな彼女の様子を眺めていたジェスターが、ふと、その凛々しい唇だけで小さく笑った。
本当に、どれだけ気強いじゃじゃ馬なのか・・・・・
心中でそんな賞賛をリタ・メタリカの姫君に与えながらも、炎の色を映して朱に輝く若獅子の如き見事な栗毛の下で、彼の鮮やかで美しい緑玉の瞳が、どこか、悲哀にも似た光を宿して細められた。
そう・・・・
強く果敢な心を持つ【破滅の鍵】であるのなら・・・・・
その時は来たとしても、躊躇う事も無く・・・・
必ず、この命を絶つことが出来るだろう・・・・
時が来れば・・・・この身の内に眠る全てが、解き放されるはず・・・・
時が来れば・・・・やがてこの意識も、魔王と呼ばれていた自分に戻っていくのだろう・・・・
苦しみの最中で、千々に乱れ千切れたその魂の全てを、一つに統合できるのは・・・・
かつては、炎神と呼ばれていた自分を置いて、他にはいないのだから・・・
遥か古の昔、ラグナ・ゼラキエルは・・・・妖剣『アクトレイドス』を操る魔法剣士であり、まだ小国であったリタ・メタリカに侵攻してくる異国の兵を、その名を聞いただけで恐れ慄かせたという、勇猛果敢な勇士であった・・・・
今、眼前に立つこの青年は、姿は違えど、醸し出すその気配も表情も、全くあの時のラグナ・ゼラキエルと同じ・・・・
『そなたは・・・・うつつよに目覚めし御方の弟たる者のはず・・・・!?我が一族を裏切りし者のはず!だのに、何故・・・・!?そなたは・・・何者だ・・・・!?』
『魔物ごときに裏切り者呼ばわりされる筋合いは無い・・・・・・・本当に、どいつもこいつも、似たような事を聞いてき
やがる・・・俺が誰であろうと、たかが使い魔に説明してやる義理も無い・・・・』
そう言ったジェスターの鮮やかな緑玉の瞳が、炎の色を映して朱に輝く髪の下で、どこか冷淡に、しかし実に不敵に微笑した。
その眼差しが、不意に、傍らで【無の三日月(マハ・ディーティア)】を構えるリーヤに向くと、彼は、低く鋭い声で言葉を続ける。
「リーヤ・・・・この魔物の狙いはおまえの命だ。
アーシェの魔物の黒炎は、【無の三日月(マハ・ディーティア)】の『ザイン』で全て打ち消すことができる。【無の三日月(マハ・ディーティア)】を使いこなせよ・・・・・」
その言葉の全てが終わるか終わらないかの内に、ジェスターの爪先が地面を蹴った。
「言われなくてもやってみせます・・・・っ!その代わり、この魔物を倒したら、さっき貴方が言っていた言葉の意味を、きちんと説明して貰いますよ!」
濃紺の衣の裾を翻したジェスターの背中にそんなことを叫びながら、リーヤは、綺麗な眉を鋭く眉間に寄せると、彼女もまた、【無の三日月(マハ・ディーティア)】を構えたまま俊足で地面を蹴ったのである。
その時、黒炎に覆い尽くされたタールファの町に、清らかで荘厳なるジャハバル神殿の鐘が鳴り響いた。
とたん、闇の焔が舞う空に、青き雷の閃光が走り、それは人も家屋を焼き尽くさんとする黒炎を鎮めるかの如く、鐘の音と共に雨粒のような光の粒子となって町中に降り注いだのである。
それが誰の業であるか、瞬時に気付いたジェスターが、ふと、その凛々しい唇で小さく微笑う。
柔軟な両足のばねが叩くように石畳を蹴ると、野を駈ける獣の如きしなやかな肢体が、濃紺の衣の裾を棚引かせながらふわりと虚空を舞った。
ギルトルクの無骨な手が、腰に履いた魔剣【ジェン・アーガン】を一瞬にして抜き払う。
紅蓮の炎を纏った金色の大剣の鋭い軌跡が、虚空から一気にギルトルクの頭上へと振り下ろされる。
闇の魔法剣士が、青銅色の刀身を迅速で翻し、黄金の閃光を引くその重い斬撃を、真っ向から弾き返した時だった、虚空で軽く捻られたジェスターのしなやかで柔軟なその肢体は、そのまま、ギルトルクの背後へと軽い足音を立てて着地したのである。
炎の色を映し朱色に輝く見事な栗毛の下で、ジェスターの鮮やかで美しい緑玉の瞳が、何ゆえかニヤリと不敵に笑う。
『シャム・アーシェス(守りの炎)』
彼の発した呪文と呼ばれる古の言語が、今、ギルトルクの眼前から【無の三日月(マハ・ディーティア)】をかざして走りこんでくる、【破滅の鍵】リーヤティアの肢体を守りの炎で包み込んだ。
光のような焔を纏う美しき姫君は、緋色のマントをなだらかな肩で棚引かせ、艶やかな紺碧色の巻き髪を乱舞させながら、迅速で手首を翻す。
「ったあぁぁぁ――――っ!」
空気を熱く振動させる朱き刃が閃光の帯を引き、にわかに厳しい顔つきをしたギルトルクの眼前に迫りくる。
紫のローブを翻し、屈強な体にそぐわぬ機敏さで横に飛び退くと、熱波を帯びる【無の三日月】の朱き斬撃を一瞬にしてかわしたのだった・・・・
しかし・・・・
脈打つように虚空を振動させたの朱き刃の残光が、眩いばかりに輝くと、次の瞬間、それは柄無き三日月型の刃に成り果てたのである。
炎の如き熱を帯びる三日月型の鋭利な残光が、唸るように宙を両断しながら、豪速でギルトルクの元へと迸る。
流石の闇の魔法剣士も、これには思わず驚愕で目を剥いた。
『何・・・・・・っ!?』
ぎゅぅんと鋭い唸りを上げた熱き波動の刃を、寸前で黒炎を纏い防いだギルトルクであったが、その眼前では、既に二撃目が翻されている。
屈強な闇の魔法剣士と対峙しながらも、臆す事無く、爛と強く輝く紺碧色のその瞳。
リーヤの手から放たれた朱の刃が、ギルトルクの首を狙って真っ向から閃光の帯を引く。
朱き刀身がどくんと強く脈打つと、凄まじい熱を帯びる光の刃が、弾ける波動を伴って虚空に鋭い唸りを上げた。
『【鍵】たる者は、怯えるだけの兎ではないと言うことか・・・・』
金色の両眼を、鋭くもどこか愉快そうに細めたギルトルクの手が、ジェン・アーガンの鋭利な刃を持って、【無の三日月】の斬撃を一瞬にして弾き返す。
ぶつかり合った刃から、朱と青の火花が周囲に飛び散ると、間髪入れずに、ギルトルクの屈強なその腕が、凄まじいばかりの豪剣をリーヤに向かって切り返した。
俊敏な身のこなしで後方に飛び退いたリーヤの元に、今度は、黒き炎を纏う鋭い斬撃が、閃光の帯を描いて飛び込んで来る。
緋色のマントが虚空に棚引き、伸び上がった【無の三日月】の光の刃が、封魔の鐘の音が轟く最中で、朱き火花を散して嘆きの剣を受け止めたのだった。
交差した刃の合間から、強く果敢な紺碧色の両眼が、ギルトルクの金色の瞳を睨むように見つめすえる。
強風の中に凛と咲く花のような、美しくも強靭な輝きを宿す【破滅の鍵】のその眼差し。
先程から、その肢体に紅蓮の焔を纏いながらも、金色の妖剣を構える事もせず、そんな彼女の様子を眺めていたジェスターが、ふと、その凛々しい唇だけで小さく笑った。
本当に、どれだけ気強いじゃじゃ馬なのか・・・・・
心中でそんな賞賛をリタ・メタリカの姫君に与えながらも、炎の色を映して朱に輝く若獅子の如き見事な栗毛の下で、彼の鮮やかで美しい緑玉の瞳が、どこか、悲哀にも似た光を宿して細められた。
そう・・・・
強く果敢な心を持つ【破滅の鍵】であるのなら・・・・・
その時は来たとしても、躊躇う事も無く・・・・
必ず、この命を絶つことが出来るだろう・・・・
時が来れば・・・・この身の内に眠る全てが、解き放されるはず・・・・
時が来れば・・・・やがてこの意識も、魔王と呼ばれていた自分に戻っていくのだろう・・・・
苦しみの最中で、千々に乱れ千切れたその魂の全てを、一つに統合できるのは・・・・
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