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終節 時を告げる三日月3
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綺麗な桜色の唇を噛みしめながら、不意に、レダの爪先が、弾かれるように地面を蹴った。
藍に輝く艶やかな黒髪が、落日の輝きの中に乱舞する。
紅の瞳の中で、たゆたうように揺れている純白のマントと漆黒の長い髪。
真っ直ぐにこちら見つめていた深き地中に眠る紫水晶の隻眼が、ふと驚愕したように大きく見開かれる。
「!?」
シルバは、まるでカモシカが跳ねるように、その胸に飛び込んできた彼女のしなやかな体を、咄嗟に伸ばした大きな両腕で抱き止めた。
虚空に跳ね上がった柔らかな彼女の黒髪が、ふわりと、その精悍な頬を撫でながら揺れた。
純白のマントが翻る広い背中に回された、レダの両腕が、何ゆえか、ぎゅっと強くその体を抱きしめる。
一瞬、何が起こったか訳がわからず、流石の白銀の守護騎士様も、思わず、きょとんとその瞳を丸くしてしまった。
「レダ・・・・?」
「私も行く・・・・私も一緒に連れて行って・・・・
私も、ラグナ・ゼラキエルと戦う・・・・
だから・・・・貴方と一緒に連れて行って・・・・」
白衣を纏う広いその胸に綺麗な頬を埋めながら、レダは、どこか弱々しくそんな言葉を口にする。
突然のその言葉に、シルバの澄んだ紫水晶の右目が戸惑ったように瞬いて、己の胸に綺麗な頬を埋める彼女の秀麗な顔を見た。
「な・・・何を言っている・・・・!?」
困惑したような、怒ったような、そんな複雑な表情をしながら、シルバの両手が静かに自分の体からレダの体を離す。
いつになく真剣な眼差しをして、レダの潤んだ紅の瞳を見つめながら、まるで子供に諭すような口調で、彼は言葉を続けたのだった。
「レダ、君の役目は、ラグナ・ゼラキエルと戦うことではなかったはずだ・・・・
俺には、師から託された使命がある・・・
だが、君にはそれがない。
それに・・・真実の闇を持つ者が、どれほどの魔力があるのか・・・
その恐ろしさを、君は知らない・・・・
炎の精霊すら屈服する魔王を相手に、君がどう戦えると言う?
今の君では無理だ・・・・危険過ぎる・・・・連れて行く訳にはいかない。
リュ―インダイルと共に青珠の森に帰れ・・・・
それが、今の君の成すべき使命のはずだ・・・・」
今にも涙をこぼしそうな切ない表情をして、そんな彼の精悍で端正な顔を仰ぎ見ると、レダは、食い下がるように言うのだった。
「ならば、せめて、サングダ―ルとの戦が終わるまでは一緒にいさせてっ!
私は、貴方に救われてばかりいたわ!何の借りも返せないまま、此処でこうして別れるのは嫌なのっ!!お願い!連れて行ってっ!私も一緒に連れて行って!!」
「好い加減にしないか!レダ!!」
一瞬、怒ったように強い口調でそう言ったシルバに、レダは、ハッとその肩を震わせる。
鋭く細められた紫水晶の瞳が、強く輝きながら、真っ直ぐに、だだをこねる子供のような彼女の顔を見つめすえていた。
揺れる漆黒の前髪の下で吊り上がった眉を、ふと、どこか切な気に眉間に寄せると、再び、彼は、落ち着き払った静かな声で言うのだった。
「ラグナ・ゼラキエルの事も、サングダ―ルの事も、そのどちらも、君の本来成すべき事じゃない・・・・
君は青珠の森に帰れ、それが、青珠の守り手たる者の成すべき事だ・・・・・・・わかったな?」
凛々しい唇が、小さく笑った。
この実直で心根強い青年が、共に自分を連れて行ってはくれないことを、レダは心のどこか知っていた・・・・
この白銀の守り手たる者は、そういう男だ。
そんなことは、とっくに判っていたはずなのに・・・・・
切なそうに潤んだ瞳が、実直で澄んだ強い紫水晶の眼差しを、真っ向から見つめすえる。
落日の輝きに紺色の影を落とす森の木々が、渡る風にざわりと揺れた。
たゆたうように揺れる純白のマントと、漆黒の長い髪。
相変わらず穏やかで冷静な表情をする彼が、ふと、ゆるやかにレダの体からその手を離した。
その次の瞬間だった。
東の空より、急速こちらに迫り来る邪な気配が、シルバの鋭敏な六感に触れたのである
藍に輝く艶やかな黒髪が、落日の輝きの中に乱舞する。
紅の瞳の中で、たゆたうように揺れている純白のマントと漆黒の長い髪。
真っ直ぐにこちら見つめていた深き地中に眠る紫水晶の隻眼が、ふと驚愕したように大きく見開かれる。
「!?」
シルバは、まるでカモシカが跳ねるように、その胸に飛び込んできた彼女のしなやかな体を、咄嗟に伸ばした大きな両腕で抱き止めた。
虚空に跳ね上がった柔らかな彼女の黒髪が、ふわりと、その精悍な頬を撫でながら揺れた。
純白のマントが翻る広い背中に回された、レダの両腕が、何ゆえか、ぎゅっと強くその体を抱きしめる。
一瞬、何が起こったか訳がわからず、流石の白銀の守護騎士様も、思わず、きょとんとその瞳を丸くしてしまった。
「レダ・・・・?」
「私も行く・・・・私も一緒に連れて行って・・・・
私も、ラグナ・ゼラキエルと戦う・・・・
だから・・・・貴方と一緒に連れて行って・・・・」
白衣を纏う広いその胸に綺麗な頬を埋めながら、レダは、どこか弱々しくそんな言葉を口にする。
突然のその言葉に、シルバの澄んだ紫水晶の右目が戸惑ったように瞬いて、己の胸に綺麗な頬を埋める彼女の秀麗な顔を見た。
「な・・・何を言っている・・・・!?」
困惑したような、怒ったような、そんな複雑な表情をしながら、シルバの両手が静かに自分の体からレダの体を離す。
いつになく真剣な眼差しをして、レダの潤んだ紅の瞳を見つめながら、まるで子供に諭すような口調で、彼は言葉を続けたのだった。
「レダ、君の役目は、ラグナ・ゼラキエルと戦うことではなかったはずだ・・・・
俺には、師から託された使命がある・・・
だが、君にはそれがない。
それに・・・真実の闇を持つ者が、どれほどの魔力があるのか・・・
その恐ろしさを、君は知らない・・・・
炎の精霊すら屈服する魔王を相手に、君がどう戦えると言う?
今の君では無理だ・・・・危険過ぎる・・・・連れて行く訳にはいかない。
リュ―インダイルと共に青珠の森に帰れ・・・・
それが、今の君の成すべき使命のはずだ・・・・」
今にも涙をこぼしそうな切ない表情をして、そんな彼の精悍で端正な顔を仰ぎ見ると、レダは、食い下がるように言うのだった。
「ならば、せめて、サングダ―ルとの戦が終わるまでは一緒にいさせてっ!
私は、貴方に救われてばかりいたわ!何の借りも返せないまま、此処でこうして別れるのは嫌なのっ!!お願い!連れて行ってっ!私も一緒に連れて行って!!」
「好い加減にしないか!レダ!!」
一瞬、怒ったように強い口調でそう言ったシルバに、レダは、ハッとその肩を震わせる。
鋭く細められた紫水晶の瞳が、強く輝きながら、真っ直ぐに、だだをこねる子供のような彼女の顔を見つめすえていた。
揺れる漆黒の前髪の下で吊り上がった眉を、ふと、どこか切な気に眉間に寄せると、再び、彼は、落ち着き払った静かな声で言うのだった。
「ラグナ・ゼラキエルの事も、サングダ―ルの事も、そのどちらも、君の本来成すべき事じゃない・・・・
君は青珠の森に帰れ、それが、青珠の守り手たる者の成すべき事だ・・・・・・・わかったな?」
凛々しい唇が、小さく笑った。
この実直で心根強い青年が、共に自分を連れて行ってはくれないことを、レダは心のどこか知っていた・・・・
この白銀の守り手たる者は、そういう男だ。
そんなことは、とっくに判っていたはずなのに・・・・・
切なそうに潤んだ瞳が、実直で澄んだ強い紫水晶の眼差しを、真っ向から見つめすえる。
落日の輝きに紺色の影を落とす森の木々が、渡る風にざわりと揺れた。
たゆたうように揺れる純白のマントと、漆黒の長い髪。
相変わらず穏やかで冷静な表情をする彼が、ふと、ゆるやかにレダの体からその手を離した。
その次の瞬間だった。
東の空より、急速こちらに迫り来る邪な気配が、シルバの鋭敏な六感に触れたのである
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