2 / 79
第一節 覚醒する闇1
しおりを挟む
*
大大陸シァル・ユリジアン。
その中心に位置する大国、大リタ・メタリカ王国は、その王朝が400年あまりの長きに渡って続く、大陸最大の国土と兵力を誇る強固な国であった。
王都リタ・メタリカは、敵からの進軍を防ぐための巨大な城壁に囲まれた城塞都市であり、栄華を誇るこの国の王の居城スターリン城は、街の中心よりも少し外れた森の只中に悠然とそびえ立っていた。
高き天空が、煌びやかな黒衣を纏い、満月の王冠をその額に掲げた頃。
月明かりと街の灯が照らす城壁の上から、長身の青年が一人、その澱みなく真っ直ぐな鋭い視線で、栄華を極める者の城を見つめやっていた。
歳の頃は二十三、四。
リタ・メタリカの民族衣装を象る鮮やかな朱の衣が、黒絹の夜空から吹き付ける夜風に揺れている。
若き獅子の鬣を思わせる見事な栗色の髪が、闇に支配される虚空に乱舞していた。
強い眼差しを彩る二つの瞳は、激しく燃え盛る緑の炎にも似た美しい緑玉の色。
古よりこのリタ・メタリカでは異形と呼ばれ、囚われればその者を虜にし、運命すら変えてしまうと古より伝えられた、美しくも神秘的な瞳であった。
広い背中に負われた鞘に収められているの大剣は、神々しくも禍々しい異質の気配を持ち。
額に飾られたの二重サークレットには、決して人の手では施すことの出来ない見事な彫り物が施されていた。
それは、強大な魔力を持つ魔剣を操る最強の戦人、魔法剣士と呼ばれる者の証。
凛々しく端正に整ったその顔を厳めしく歪め、彼は、その緑玉の両眼を鋭く細める。
「さぁて・・・・・・どこから来やがる?」
低めた声でそんな事を呟くと、彼は、そのしなやかな肢体を、臆すことなく高い城壁の上から虚空へと翻したのだった。
空中で体をひねり石畳の路地に着地した彼の姿を、黒衣の夜空に浮かんだ満月の明かりだけが照らし出していた。
大大陸シァル・ユリジアン。
その中心に位置する大国、大リタ・メタリカ王国は、その王朝が400年あまりの長きに渡って続く、大陸最大の国土と兵力を誇る強固な国であった。
王都リタ・メタリカは、敵からの進軍を防ぐための巨大な城壁に囲まれた城塞都市であり、栄華を誇るこの国の王の居城スターリン城は、街の中心よりも少し外れた森の只中に悠然とそびえ立っていた。
高き天空が、煌びやかな黒衣を纏い、満月の王冠をその額に掲げた頃。
月明かりと街の灯が照らす城壁の上から、長身の青年が一人、その澱みなく真っ直ぐな鋭い視線で、栄華を極める者の城を見つめやっていた。
歳の頃は二十三、四。
リタ・メタリカの民族衣装を象る鮮やかな朱の衣が、黒絹の夜空から吹き付ける夜風に揺れている。
若き獅子の鬣を思わせる見事な栗色の髪が、闇に支配される虚空に乱舞していた。
強い眼差しを彩る二つの瞳は、激しく燃え盛る緑の炎にも似た美しい緑玉の色。
古よりこのリタ・メタリカでは異形と呼ばれ、囚われればその者を虜にし、運命すら変えてしまうと古より伝えられた、美しくも神秘的な瞳であった。
広い背中に負われた鞘に収められているの大剣は、神々しくも禍々しい異質の気配を持ち。
額に飾られたの二重サークレットには、決して人の手では施すことの出来ない見事な彫り物が施されていた。
それは、強大な魔力を持つ魔剣を操る最強の戦人、魔法剣士と呼ばれる者の証。
凛々しく端正に整ったその顔を厳めしく歪め、彼は、その緑玉の両眼を鋭く細める。
「さぁて・・・・・・どこから来やがる?」
低めた声でそんな事を呟くと、彼は、そのしなやかな肢体を、臆すことなく高い城壁の上から虚空へと翻したのだった。
空中で体をひねり石畳の路地に着地した彼の姿を、黒衣の夜空に浮かんだ満月の明かりだけが照らし出していた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
14
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる