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第二節 白銀の守り手 青珠(せいじゅ)の守り手10
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『・・・アラン・・・何んで、お前が、アーシェの名を捨てなければならないんだ?』
幼少を過ごしたエトワーム・オリアの地で、その美しい山々を背景に、流暢なリタ・メタリカ語でそう言って、怒ったように輝いた紫水晶の右目。
その傍らで、共に幼少期を越えたばかりのまだ幼い少年であったスターレットが、彼を制するかのように、静かにその肩に手を置いた。
『・・・・いたたまれないんだろ?このまま、その名を名乗ることが?
・・・ね?アランデューク?』
どこか切なそうに、ジェスターに向かってそう言ったスターレットの傍らで、彼は何故かやけに悔しそうな顔をしていた。
傭兵や賞金稼ぎを生業(なりわい)とする渡り剣士として大陸の国々を共に歩いたその人物は、ある時、大怪我を負ってふと迷い込んだ伝説の森で、その森の守護者となり・・・・
その直後、ジェスターは妖の剣とも神の剣とも呼ばれる魔剣の主となった・・・
騎馬の手綱を取ったまま、ふと、遠い目をして虚空を見たジェスターの端正な横顔を、僅かばかり驚いたような顔をしてリーヤが覗き込んだ。
騎馬の疾走に合わせて、緩やかに弾む紺碧色の前髪の下で、実に意外そうに、髪の色と同じその大きな紺碧色の瞳をきょとんと丸くして、リタ・メタリカの姫君は言うのである。
「貴方も・・・そんな風に笑うことがあるのですね?」
なにやら的を外したような素っ頓狂なその言葉に、ジェスターは、形の良い眉を思わず眉間に寄せると、横目でまじまじと、何か珍しい動物でも見るような顔をするリーヤティアを見やった。
「おい、お前、俺をなんだと思ってたんだ?俺が笑ったら悪いのか?」
「あら、ちょっと感心しただけではないですか?
どうしてすぐにそう喧嘩腰になるのです?やはり貴方は野蛮です!」
「野蛮で結構・・・・お前のようなじゃじゃ馬に言われたくはないがな」
「なんですって?」
リーヤの綺麗な眉が再び怒りに吊上がった。
この世間知らずでわがままで天真爛漫な姫君は、まだ何も知らないのだ・・・
自分がどんな使命を負ってこのリタ・メタリカの地に生を受けたのか・・・・
後もう少し時が進めば、きっと、彼女も知るのであろう・・・・
何故、自分が【鍵】と呼ばれているのかを・・・・
王宮育ちのこの姫君が、果たしてのその重さに耐えられるのだろうか・・・・?
ふと、そんな事を思って、ジェスターは、相変わらず怒った顔をしているリタ・メタリカの美しき姫君を、その燃え盛る緑の炎のような鮮やかで神秘的な両眼で見やった。
気性の荒い軍馬の手綱を取りながら、紺碧色の艶やかな髪を弾ませている、彼女の気強く秀麗な顔・・・。
ジェスターは何故か、怒れる姫君に小さく微笑って見せたのだった。
幼少を過ごしたエトワーム・オリアの地で、その美しい山々を背景に、流暢なリタ・メタリカ語でそう言って、怒ったように輝いた紫水晶の右目。
その傍らで、共に幼少期を越えたばかりのまだ幼い少年であったスターレットが、彼を制するかのように、静かにその肩に手を置いた。
『・・・・いたたまれないんだろ?このまま、その名を名乗ることが?
・・・ね?アランデューク?』
どこか切なそうに、ジェスターに向かってそう言ったスターレットの傍らで、彼は何故かやけに悔しそうな顔をしていた。
傭兵や賞金稼ぎを生業(なりわい)とする渡り剣士として大陸の国々を共に歩いたその人物は、ある時、大怪我を負ってふと迷い込んだ伝説の森で、その森の守護者となり・・・・
その直後、ジェスターは妖の剣とも神の剣とも呼ばれる魔剣の主となった・・・
騎馬の手綱を取ったまま、ふと、遠い目をして虚空を見たジェスターの端正な横顔を、僅かばかり驚いたような顔をしてリーヤが覗き込んだ。
騎馬の疾走に合わせて、緩やかに弾む紺碧色の前髪の下で、実に意外そうに、髪の色と同じその大きな紺碧色の瞳をきょとんと丸くして、リタ・メタリカの姫君は言うのである。
「貴方も・・・そんな風に笑うことがあるのですね?」
なにやら的を外したような素っ頓狂なその言葉に、ジェスターは、形の良い眉を思わず眉間に寄せると、横目でまじまじと、何か珍しい動物でも見るような顔をするリーヤティアを見やった。
「おい、お前、俺をなんだと思ってたんだ?俺が笑ったら悪いのか?」
「あら、ちょっと感心しただけではないですか?
どうしてすぐにそう喧嘩腰になるのです?やはり貴方は野蛮です!」
「野蛮で結構・・・・お前のようなじゃじゃ馬に言われたくはないがな」
「なんですって?」
リーヤの綺麗な眉が再び怒りに吊上がった。
この世間知らずでわがままで天真爛漫な姫君は、まだ何も知らないのだ・・・
自分がどんな使命を負ってこのリタ・メタリカの地に生を受けたのか・・・・
後もう少し時が進めば、きっと、彼女も知るのであろう・・・・
何故、自分が【鍵】と呼ばれているのかを・・・・
王宮育ちのこの姫君が、果たしてのその重さに耐えられるのだろうか・・・・?
ふと、そんな事を思って、ジェスターは、相変わらず怒った顔をしているリタ・メタリカの美しき姫君を、その燃え盛る緑の炎のような鮮やかで神秘的な両眼で見やった。
気性の荒い軍馬の手綱を取りながら、紺碧色の艶やかな髪を弾ませている、彼女の気強く秀麗な顔・・・。
ジェスターは何故か、怒れる姫君に小さく微笑って見せたのだった。
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