エテルノ・レガーメ

りくあ

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第15章︰夢のような時間

第135話

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「っ…。」

あまりの眩しさに閉じた目をゆっくりと開くと、白い壁で囲まれた殺風景な部屋に立っていた。周りに一切物はなく、前方に鉄の扉が1つあるだけだった。
後ろを振り返ると、先程開いた鮮やかな色合いの扉が黒1色に染まっている。同じように両手を当てて扉を開こうとするが、鍵がかかっているのかビクともしなかった。

「こっちが開かないなら…向こうに進めばいいのかな…?」

部屋を横切って鉄の扉の前に立つと、恐る恐る手を伸ばした。

「…うわぁ!?」

手が触れる直前、扉がものすごい速さで横にスライドした。その先にも同じような部屋が続いていて、ゆっくりと部屋の中に足を踏み入れた。
すると、部屋の端に数人の人が倒れているのを見つけ、手前にいた女性の元に慌てて駆け寄った。

「だ、大丈夫ですか!?」
「…ん……。………ルカ…くん…?」
「え…イルム…!?」

そこに倒れていたのは、ギルド“エテルノ・レガーメ”の受付担当をしているイルム・イルマーダだった。彼女は身体を起こし、不思議そうに周囲を見渡している。

「ここは…どこ?私、なんでこんな所に…。」
「どこか怪我してない?」
「それは………大丈夫みたい。」
「ちょっと待っててね。他の人の様子を見てくるよ。」

彼女の隣にいた男性は、同じくギルドメンバーのガゼル・マーレンだった。さらに反対側の壁際には、プラニナタの研究員マコティメリア・ジャンメルカとゼノジオ・ゲイルがいる。彼等は、何故ここにいるのかという事と、ここがどこなのかを誰も把握していなかった。



「えっと…ここは僕の夢の中なんだ。建物全体が塔になってて…」

全員に怪我がない事を確認し、この場所についてわかる事を彼等に説明した。

「なんとなく状況はわかったけどぉ…。」
「なんで俺等までここにいるんスかね?」
「んなの知るかよ…。その辺はわかるのか?」
「ごめん…それは僕にもわかんない…。」
「でも嬉しい~。夢の中でもルカくんに会えるなんてぇ。」

隣に座っていたマコが、僕の腕を掴んで身体を寄せた。引き剥がす訳にもいかず、対応に困っていると、向かい合って座っていたイルムが勢いよくその場に立ち上がった。

「あ、あのさルカくん!上に行きたいのはわかったけど、進む方法は何かあるの?」
「多分…この奥に進んで行くと、鮮やかな色の扉があるはずなんだ。その扉の先が、次の階に繋がってるんだよ。」
「じゃあ奥に進むしかないッスね!」
「奥に行く扉は…あれか?」

立ち上がったガゼルは身体をひねり、後方にある鉄の扉を指さした。この部屋に来た時と同じ造りをしているように見えるが、扉のすぐ隣にコードが露出している謎の機械が設置してある。

「この部屋に来る時は、扉に手を触れようとしたら開いたけど…。」
「…ふん!…っ……触れるどころか、力を入れても開かないぞ?」
「隣にあるこれは何かな?紐みたいなのがはみ出てるけど…。」
「ちょっと見てみるッス。」

機械に詳しいゼノは、率先して機械の元に近づいた。全体を観察し、軽く叩いたり触ったりして様子を伺っている。

「これは多分、扉を開ける為の装置ッスね。けど、見事に壊れてるッス。」
「じゃあ…この先には進めないの?」
「扉を破壊するか、機械を修理するかのどっちかしかないッスね…。」
「どー考えても素手じゃ壊せないだろこれ…。」
「そもそも道具があっても、壊すのは難しそうじゃない…?」
「ルカくんの魔法で、なんとかならないかなぁ?」
「うーん…やってみるね…。」

僕は魔法を詠唱すべく、親指を歯に押し当てると、指を切る程の鋭さがない事に気付いた。

「あ!そう言えばこの塔、吸血鬼の力が制限されるんだった…。」
「えぇ~!って事は魔法は使えないのぉ?」
「ごめん…そういう事になるね。」
「なら別の方法を考えるか…。」
「ねぇみんな!部屋の隅にこんな物が置いてあったよ!」

側を離れていたイルムが、赤い缶の箱を持って駆け寄って来た。中身を確認すると、様々な形をした鉄製の道具がぎっしりと詰まっていた。

「おおー!これがあれば、修理出来そうッスよ!」
「本当!?ならお願いしていい?」
「了解ッス!」
「俺もなんか手伝うよ。出来る事あるかもしれないし。」
「じゃあよろしくッス。」

2人は箱を持って機械に歩み寄り、すぐさま作業に取り掛かった。

「私達は何しよっか?」
「手伝うのはむしろ邪魔になりそうだし…。」
「なら、お喋りでもしてよ~?ルカくんがギルドに戻ってから、どうしてるか気になってたんだぁ。」
「話すのは構わないけど…。」
「私も気になるな!ギルドに戻って来てすぐに、吸血鬼の領土に行っちゃったでしょ?」
「え?そうだったのぉ?ますます興味あるよぉ~!」
「わ、わかった!話すからちょっと離れてマコ!」

レジデンスへ向かい、各地を回って水晶のかけらを集めた事を彼女達に話した。

「いいなぁ~。あたしが吸血鬼になりたいくらいだよぉ。」
「吸血鬼になりたいだなんて、初めて聞いたよ…。」
「私は例え便利でも、人間の方がいいなぁ。」
「イルムは夢がないなぁ~。魔法を使ってみたい!とか思わないのぉ?」

マコは笑いながら、イルムの肩を軽く叩いた。叩かれたイルムは、彼女につられるように微笑んでいる。仲が良さそうな2人を見て、僕は違和感を感じていた。

「あれ?2人は知り合いだっけ?」
「実際に会ったのは初めてだよ!」
「え???」

会った事のない相手に対して、ここまで親密になれるだろうか。2人のように明るい性格ならそれも有り得るかもしれないが、先程感じた違和感が大きな疑問へと変わった。

「ほら、あれ!なんだっけ…離れた所でもやり取り出来る機械…」
「通信機でしょ~?」
「そうそれ!それでやり取りしてるうちに、仲良くなったんだよね。」
「そっか!確か…僕とガゼルが持ち帰ったんだったね。」
「俺がどうしたって?」

機械の修理を手伝っていたガゼルが、座っている僕達の元へやって来た。

「通信機は、ルカくんとガゼルくんが持ち帰ったんだよね~って話!」
「修理終わったのぉ?」
「完璧ッス!」

扉の脇で、ゼノが得意げに手を挙げた。近寄って機械を見てみると、はみ出していたコードはなくなり、外れていたボタンも元通りになっていた。

「すごいよゼノ!」
「へへっ。このくらい、どーってことないッス。」
「それで、扉は開いたのぉ?」
「それが開かないんだよ。機械は直ったはずなんだが…。」
「何か他に必要な物があるって事…?」
「もう一度部屋の中を見てみる?修理の道具みたいに、何かあるかもしれないし。」
「そうだな。」

4人で手分けして、部屋の中を見て回る事にした。しかし、床、扉、天井部分に特に異常はなく、どこかに説明が書いてある様子もない。

「ルカくん。何か見つけた?」
「ううん何も…。ゼノは?」
「んー…特に気になるものはなかったッスねぇ。」
「ねぇ~この部屋暑くない~?動き回ったら汗かいちゃったよぉ…。」

彼女は顔の前で手を開き、それを動かして風を起こした。すると、彼女の後ろにある壁がペラペラと音を立てて揺れている事に気付いた。

「ごめんマコ!ちょっといい?」
「え、な、何?」

壁に手を触れると、白い壁に1枚の白い紙が貼り付けられていた。

「紙?なんでそんな所に…」
「何か書いてあるみたい…えっと…。8.9999…この鳥の名前は?」
「いきなり鳥の名前を聞かれても…。」
「…どういう事?」
「もしかしてぇ…それって、なぞなぞって言うやつじゃないかなぁ。」
「なぞなぞ?何だそれ。」
「謎解きとも言うんだけど、問いかけに対して答えを要求する、言葉遊びみたいなものだよぉ。」
「この答えがわかったら、何かいい事があるのかな?」
「あ…そういえば、機械の内部に文字が書いてあるボタンがあったッス。」
「って事は~…このなぞなぞの答えが、扉を開く鍵になってるのかもねぇ。」
「そんな仕掛けもあるんだな…。」

マコとゼノの推測から、扉が開かない理由と機械が設置されている意味が判明した。

「じゃあじゃあ!思いつく鳥の名前を、とにかく押してみたらどうかな?」
「なぞなぞなんて考えなくても、扉を開けられるかもしれないッスね。」

イルムが手を挙げ、自分の意見を述べ始めた。ゼノもその意見に、賛成している様子だ。

「鳥なんていっぱいいるよぉ?この謎を解いた方が早いと思うけどなぁ。」

それに対してマコは、彼女の意見に異を唱えた。

「なら二手にわかれよう。イルムとゼノはとにかく思いついたやつを押してみて、俺等はその間に答えを考えてみようぜ。」
「うん…わかった。」
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