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第1章︰騎士の道
第1話
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この騎士学校には、校舎の4分の1程の広さを占める訓練場が併設されている。実習授業の一環として使われる事が多く、様々な道具や設備が整えられている場所だ。
各自で訓練を行っている生徒達の脇を通り抜け、僕とニアはマットが敷かれた一角へとやって来た。
「ねぇニア。どうして受け身の練習をする必要があるの?この間の実習でチラッと見たけど、十分出来てたと思うよ?」
「あれは前方への受け身でしょ?あたし、後方の受け身がどうしても出来ないのよ。あんたに見てもらったら、どこがダメなのか分かるかもと思ってね。」
「僕が見るのは構わないけど…投げる役が居ないと練習にならないよ。」
「あー…それもそうね…。なんとかもう一人くらい誘ってくればよかったかしら…。」
彼女は口元に手を添え、眉間に皺を寄せた。人の事は言えないが、彼女には友と呼べる親しい関係の人がいない。もちろん転入して間もない僕にも、誘えるような人物はいなかった。
「せっかく来たんだし、マットの上で後転するのだけでも練習しておく?」
「名案だわ!そうしましょ。」
彼女はマットの端に座り込み、僕もその隣に並んで腰を下ろした。
「後転の仕方は覚えてる?」
「手のひらを耳の横に添えて、あごを引いてお腹を覗き込む…だったわよね?理屈はわかってるんだけど、何故だかうまくいかないのよね。」
「後転のコツは、怖がらずに思いっきり行く事だよ。手のひら全体をしっかりマットにつけて、同時にお尻を上げて回りきる。 背中を丸めて、お尻、腰、背中、首の順で床につけて転がるのをイメージしながらやるといいよ。」
「わ、わかったわ。」
僕の説明を聞き、彼女は胸に手を当ててゆっくりと息を吐いた。耳の横に手を添えて後転の体制を整えると、後ろへ体重を移動させた。彼女の身体はマットの上を転がり、足の裏が頂点に達した所でバランスを崩してマット脇の床に身体を叩きつけた。
「痛っ…!」
「だ、大丈夫?」
「大丈夫…ちょっとぶつけただけよ。それより、見ててどうだった?何が駄目かわかった?」
「形は悪くないと思うよ。考えられる原因としては…心のどこかに、怖いって気持ちがあるからじゃないかな?」
「そう…。わかったわ。練習、付き合ってくれてありがと。」
すると彼女はその場から立ち上がり、訓練場の出入口へ向かって歩き始めた。
「えっ…もう練習しないの?」
「………えぇ。」
こちらに背を向けたまま短く言葉を吐き捨てた彼女は、そのまま訓練場を立ち去ってしまった。
1人取り残されてしまった僕は、仕方なく自分の部屋へ戻る事にした。
騎士学校に通う生徒は、その隣に併設されている寮で寝泊まりをする事になっている。1階には食堂や大浴場などの公共の場所があり、2階と3階に生徒達の部屋が並んでいる。
自室の扉を開けて中に入ると、郵便受けに届いていた封筒を掴んでベッドに横たわった。
「あ。クラーレから手紙だ。」
手紙の送り主であるクラーレは、城下町のサトラテールに建てられたギルド“エテルノ・レガーメ”のマスターであり、僕の兄でもある。毎月のように手紙を寄越す様子は、兄と言うよりも父親のように思えてくる。
手紙を読み終えるのと同時に空腹を訴える腹の音が鳴り、ふと机の方に視線を移した。机の上に置かれた時計が、夕飯の時間を指し示している。手紙を机の引き出しにしまい込むと、部屋を出て寮内の食堂へと向かった。
「隣、座っても構わないかな?フランくん。」
「…構いません。どうぞ。」
1人で黙々と食事をしていると、見知らぬ男子生徒が声をかけてきた。同級生の顔と名前は一通り覚えたので、恐らく彼は上級生だと思われる。
「あの…どこかでお会いしましたか?」
「いいや?会うのは初めてだったと記憶しているよ。」
「では、何故僕の名前を…」
「これは失敬。僕の名前は、デトワーズ。君の事はニアーシャから話を聞いていたんだ。」
「なるほど…。そうでしたか。」
「僕の話は、彼女から聞いていないかい?」
「はい。聞いた覚えがありません。」
「じゃあまずは、家の話からするとしようか。」
「…え?」
すると彼は、自分が貴族の生まれである事を話し始めた。いまいち状況が飲み込めていない僕は、彼の話が終わるのを黙って聞く事しか出来なかった。
「…つまり、僕とニアーシャは同じ階級の貴族であり、彼女は僕の婚約者なのだよ。」
「そ、そうなのですね…。」
「おっと…話が逸れてしまったが、ここからが本題だ。…最近、君はニアーシャとよく一緒に居るそうだが、その理由を聞いてもいいかな?」
話の最中、常に笑顔を浮かべていた彼だったが…僕に問いをなげかけた瞬間、少しだけその表情が強ばったように見えた。
「理由ですか?ニアが練習しよう言うので、僕はそれに付き合っているだけです。」
「本当にそれだけかい?」
「はい。それだけです。」
「…わかった。今はその言葉を信じよう。だが1つ、言っておきたい事がある。」
「何でしょうか?」
「彼女から声をかけられて、君がそれに付き合うのは構わない。しかし、君が彼女を振り回すような事はしないでくれ。」
「あ…はい。わかりました。」
彼の気迫に押され、半ば強引に同意を求められた僕は、彼の言葉に従わざるを得なかった。
「君が話のわかる人で助かったよ。話は以上だ。時間を取らせてすまなかったね。」
「いえ、構いません。…それでは、お先に失礼します。」
「あぁ。また会おう。」
食事を終えた僕は席を立ち、食器を乗せたお盆を片付けると、来た道を引き返して自室へと戻って行った。
「どうしたの?フラン。ぼーっとして…。」
白いソファーに身体を投げ出し、彼女の膝の上でぼんやりとその顔を眺めていた。
「んー…ちょっと気になる事があってね。」
「どんな事?」
僕は、食堂で出会ったデトワーズという生徒と交わした会話を彼女に伝えた。
「彼は婚約者って言ってたけど、どうしてあんな風に言ったのか理解出来なくてね。」
「あんな風にっていうのは…ニアを振り回すような事はしないでくれって言われた事?」
「うん。これは彼女と僕の問題でしょ?彼が口を出すような事じゃないと思うんだけど。」
「それはきっと、デトワーズさんがニアの事を好きだからだよ!」
「…好き?」
「そう!好きだからこそ、自分じゃない別の人と仲良くするのを見たくないんだよきっと。」
「ふぅん…そういうものなんだね。」
僕は身体を起こし、テーブルに置かれた紅茶のカップに口をつけた。
「あのさ…フランは…」
隣に座る彼女が懸命に何かを訴えているが、その音を聞き取る事が出来なかった。それから徐々に意識は薄れていき、彼女の姿は見えなくなった。
翌日、目覚ましの音で目を覚ますと、朝食と支度を手早く済ませて学校へと向かった。教室の扉を開けて自分の席に着くと、隣に座っているニアが当たり前のように声をかけてくる。
「おはよーフラン。」
「…おはよ。」
「あんたいつも時間ギリギリよね。もう少し早く起きたらどうなの?」
「そうだね。」
「なによ…今日はやけに素直ね。」
「そう?」
「…それはそうと、今日は朝から実習があるのよ?着替えなくていいの?」
「わかってるよ。」
僕は短く言葉を返すと、机の椅子に荷物を置いてその場から歩き出した。彼女も同時に席を立ち、廊下を歩く僕の後ろをついてきた。
「ねぇ…あんたなんか変よ?具合でも悪いの?」
「普通だよ?」
「じゃあなんで目を逸らすのよ!」
彼女は僕の腕を引っ張り、声を荒らげた。廊下で話をしていた他の生徒達が、僕達に視線を向け始める。
「いつもなら目を合わせて、笑いながら話してくれるのに…。今日はどうしてそんなに冷たく…」
「悪いけど…時間がないから後でね。」
「ま、待ちなさいよ!まだ話の途中で…!」
「更衣室にまでついてくる気?」
「……わかったわよ。」
彼女は渋々腕を離すと、来た道を引き返して行った。
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「あれは前方への受け身でしょ?あたし、後方の受け身がどうしても出来ないのよ。あんたに見てもらったら、どこがダメなのか分かるかもと思ってね。」
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「あー…それもそうね…。なんとかもう一人くらい誘ってくればよかったかしら…。」
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「せっかく来たんだし、マットの上で後転するのだけでも練習しておく?」
「名案だわ!そうしましょ。」
彼女はマットの端に座り込み、僕もその隣に並んで腰を下ろした。
「後転の仕方は覚えてる?」
「手のひらを耳の横に添えて、あごを引いてお腹を覗き込む…だったわよね?理屈はわかってるんだけど、何故だかうまくいかないのよね。」
「後転のコツは、怖がらずに思いっきり行く事だよ。手のひら全体をしっかりマットにつけて、同時にお尻を上げて回りきる。 背中を丸めて、お尻、腰、背中、首の順で床につけて転がるのをイメージしながらやるといいよ。」
「わ、わかったわ。」
僕の説明を聞き、彼女は胸に手を当ててゆっくりと息を吐いた。耳の横に手を添えて後転の体制を整えると、後ろへ体重を移動させた。彼女の身体はマットの上を転がり、足の裏が頂点に達した所でバランスを崩してマット脇の床に身体を叩きつけた。
「痛っ…!」
「だ、大丈夫?」
「大丈夫…ちょっとぶつけただけよ。それより、見ててどうだった?何が駄目かわかった?」
「形は悪くないと思うよ。考えられる原因としては…心のどこかに、怖いって気持ちがあるからじゃないかな?」
「そう…。わかったわ。練習、付き合ってくれてありがと。」
すると彼女はその場から立ち上がり、訓練場の出入口へ向かって歩き始めた。
「えっ…もう練習しないの?」
「………えぇ。」
こちらに背を向けたまま短く言葉を吐き捨てた彼女は、そのまま訓練場を立ち去ってしまった。
1人取り残されてしまった僕は、仕方なく自分の部屋へ戻る事にした。
騎士学校に通う生徒は、その隣に併設されている寮で寝泊まりをする事になっている。1階には食堂や大浴場などの公共の場所があり、2階と3階に生徒達の部屋が並んでいる。
自室の扉を開けて中に入ると、郵便受けに届いていた封筒を掴んでベッドに横たわった。
「あ。クラーレから手紙だ。」
手紙の送り主であるクラーレは、城下町のサトラテールに建てられたギルド“エテルノ・レガーメ”のマスターであり、僕の兄でもある。毎月のように手紙を寄越す様子は、兄と言うよりも父親のように思えてくる。
手紙を読み終えるのと同時に空腹を訴える腹の音が鳴り、ふと机の方に視線を移した。机の上に置かれた時計が、夕飯の時間を指し示している。手紙を机の引き出しにしまい込むと、部屋を出て寮内の食堂へと向かった。
「隣、座っても構わないかな?フランくん。」
「…構いません。どうぞ。」
1人で黙々と食事をしていると、見知らぬ男子生徒が声をかけてきた。同級生の顔と名前は一通り覚えたので、恐らく彼は上級生だと思われる。
「あの…どこかでお会いしましたか?」
「いいや?会うのは初めてだったと記憶しているよ。」
「では、何故僕の名前を…」
「これは失敬。僕の名前は、デトワーズ。君の事はニアーシャから話を聞いていたんだ。」
「なるほど…。そうでしたか。」
「僕の話は、彼女から聞いていないかい?」
「はい。聞いた覚えがありません。」
「じゃあまずは、家の話からするとしようか。」
「…え?」
すると彼は、自分が貴族の生まれである事を話し始めた。いまいち状況が飲み込めていない僕は、彼の話が終わるのを黙って聞く事しか出来なかった。
「…つまり、僕とニアーシャは同じ階級の貴族であり、彼女は僕の婚約者なのだよ。」
「そ、そうなのですね…。」
「おっと…話が逸れてしまったが、ここからが本題だ。…最近、君はニアーシャとよく一緒に居るそうだが、その理由を聞いてもいいかな?」
話の最中、常に笑顔を浮かべていた彼だったが…僕に問いをなげかけた瞬間、少しだけその表情が強ばったように見えた。
「理由ですか?ニアが練習しよう言うので、僕はそれに付き合っているだけです。」
「本当にそれだけかい?」
「はい。それだけです。」
「…わかった。今はその言葉を信じよう。だが1つ、言っておきたい事がある。」
「何でしょうか?」
「彼女から声をかけられて、君がそれに付き合うのは構わない。しかし、君が彼女を振り回すような事はしないでくれ。」
「あ…はい。わかりました。」
彼の気迫に押され、半ば強引に同意を求められた僕は、彼の言葉に従わざるを得なかった。
「君が話のわかる人で助かったよ。話は以上だ。時間を取らせてすまなかったね。」
「いえ、構いません。…それでは、お先に失礼します。」
「あぁ。また会おう。」
食事を終えた僕は席を立ち、食器を乗せたお盆を片付けると、来た道を引き返して自室へと戻って行った。
「どうしたの?フラン。ぼーっとして…。」
白いソファーに身体を投げ出し、彼女の膝の上でぼんやりとその顔を眺めていた。
「んー…ちょっと気になる事があってね。」
「どんな事?」
僕は、食堂で出会ったデトワーズという生徒と交わした会話を彼女に伝えた。
「彼は婚約者って言ってたけど、どうしてあんな風に言ったのか理解出来なくてね。」
「あんな風にっていうのは…ニアを振り回すような事はしないでくれって言われた事?」
「うん。これは彼女と僕の問題でしょ?彼が口を出すような事じゃないと思うんだけど。」
「それはきっと、デトワーズさんがニアの事を好きだからだよ!」
「…好き?」
「そう!好きだからこそ、自分じゃない別の人と仲良くするのを見たくないんだよきっと。」
「ふぅん…そういうものなんだね。」
僕は身体を起こし、テーブルに置かれた紅茶のカップに口をつけた。
「あのさ…フランは…」
隣に座る彼女が懸命に何かを訴えているが、その音を聞き取る事が出来なかった。それから徐々に意識は薄れていき、彼女の姿は見えなくなった。
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「あんたいつも時間ギリギリよね。もう少し早く起きたらどうなの?」
「そうだね。」
「なによ…今日はやけに素直ね。」
「そう?」
「…それはそうと、今日は朝から実習があるのよ?着替えなくていいの?」
「わかってるよ。」
僕は短く言葉を返すと、机の椅子に荷物を置いてその場から歩き出した。彼女も同時に席を立ち、廊下を歩く僕の後ろをついてきた。
「ねぇ…あんたなんか変よ?具合でも悪いの?」
「普通だよ?」
「じゃあなんで目を逸らすのよ!」
彼女は僕の腕を引っ張り、声を荒らげた。廊下で話をしていた他の生徒達が、僕達に視線を向け始める。
「いつもなら目を合わせて、笑いながら話してくれるのに…。今日はどうしてそんなに冷たく…」
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