日々是好日

四宮

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1.煙雨の先に

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サクッサクッと乾いた音が微かに聞こえてくる。
少し湿り気を帯びたその土は見た目よりも固く、全ての侵入者を拒んでいるかのようだ。
「・・・・・・」
曇り空の下で土を掘り続けてもうどれくらい経過したのか、皆目見当もつかない。
そんな事を思ったところで、この土が減ることも増えることもないのだが。

「・・・ふぅ」
「疲れたか?」
「いや?問題ない」
「そうか」
そんな会話を交わす隣では、遠雷エンライクワを手に土を掘っている音がゆっくりと聞こえてくる。
「・・・・・・はぁ」
疲労混じりのため息と共に感じる、幾分か間の開いた土の音に昂遠の口が僅かに緩んだ。

「うー・・・」
土の音が止んだことに気付いた昂遠コウエンが隣へ視線を向けてみれば、遠雷は腰を数回、トントンと叩き、クワの柄に手を置いている。
気怠そうに灰色の空を見上げる彼の長い髪が風に揺れ、毛先がゆっくりと背に落ちていく。
その光景をジッと見ていた昂遠だったが、気を取り直すように自身のクワへと視線を落とすと、空を見上げる相棒に問いかけることにした。

「疲れたか?」
「いや?」
そう話す彼の顔には疲労の色が滲み出ている。
(無理もないな・・・)
無意識に溜息を吐きながら視線を空へと向けてみれば、灰にニゴる黒が視界に入った。
「雨が降るか・・・」
「やめてくれよ・・・土を掘りっぱなしのこの状況で雨なんて」
「・・・それもそうか」
「とりあえず」
「掘るか」
「ああ」
互いにポツリと呟きながら土を掘り進めていく。
この作業が終われば次は埋葬が待っているのだ。それに疲れているのは自分達だけではない。焦げた香りが風に紛れてこちらまで臭ってくる。
覚えのあるその風を飲み込みながら、二名はただ黙々と腕を動かす事にしたのだった。

「・・・・・・」
賊に荒らされてしまった村の再建を手伝う為に遠雷と箕衡ミコウの北部地方へ行き、生き残った民と共に壊された家屋を建て直し、何とか食料を確保し民に配って別れたのは二日前の話になる。
「・・・・・・」
満足に食を得る余裕も無く、焼け焦げた柱を片付け、亡くなった民をひたすら埋葬し続けて現在、二名の肉体は既に限界を超えている。
しかし、焼け焦げた村と立ち尽くす民を前にして、喉が渇いただの腹の虫がどうだの言ってはいられない。
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