魔法の星に召喚された宇宙最強の男の冒険譚

ゆーなま

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山賊

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ソウシロウとアリアは5時間交代で夜営することにした。
アリアがエルフの睡眠時間は短いため、3時間でいいと主張したが、そこは譲らなかった。

今から無理すると後になって疲れが蓄積する。日中だってアリアは十分働いているため、遠慮や気遣いは無用だ。
ちなみに、寝床はソウシロウが羊の野獣の体毛で作った布団を交互に使った。
使用後は生活魔法で洗浄するため、いつでも清潔に使用できる。
魔法って本当に便利だ。



そうやって野宿しながら街道を進み、4日が経過した。
アリアとは打ち解けられたと思うし、この星について色々と聞けたためソウシロウにとって大きな収穫となった。
また、アリアとの他愛のない話は楽しくて、誰かと旅をするのも悪くないな、と感じていた。

「そろそろ夜営の準備をしようか」

「はい。私、夜営出来そうな場所を探してきます」

「ああ、頼む。俺は薪を集めてこよう」

何となく役割分担が出来ているな、とソウシロウは考える。

ソウシロウは気配探知でアリアの居場所がわかるため、別行動しても問題無い。
マジックバッグに入れたものは鮮度が落ちないことに気付いて以来、生鮮食材もストックしている。
ドラゴンの死骸の腐食が進んでいないことからもっと早く気付くべきだった。
今夜の夕食は昨日小川で採った魚だ。

「それにしても、今日はだいぶ晩くまで歩いてしまったな。もう暗くなるぞ」

一人薪を集めながらソウシロウが呟く。
アリアは思ったより体力があり、当初予定していたより早いペースで進んでいる。
事前情報が正しければ明日の夜にはモグワイに到着できるかもしれない。
ソウシロウはアリアに教えてもらった食用のぶどうのような果実を口に含みながら薪を集めた。
野趣あふれる味だが、甘みもほどよく残っており爽やかだ。多分加工すれば果実酒も作れるだろう。
いずれ試してみよう。

薪をマジックバッグに入れたソウシロウがアリアの居場所を探ると、他の人間の気配を探知する。

「この気配・・・人間か!」

このままだとアリアと接触する可能性が高い。
歩き方や気量から一般人ではなさそうだ。
そもそもこんな時間に街道から外れた雑木林を移動する人間が堅気であるわけがない。
アリアが危ない。

ソウシロウは勢い良く駆け出した。



sideアリア

「あっ、ここなら広いし、夜営できそう。」

アリアが夜営地に選んだのは、開けたスペースに佇んでいる大木の真下であった。
大木は東西南北に大きく枝葉を広げており、この場所なら急に雨が降っても濡れずにすみそうだ。
ソウシロウの風魔法で周辺草木を刈り取れば一部屋分くらいのスペースは確保できる。

「それにしても奴隷として連れてこられてからまだ1週間くらいしか経っていないのに、色々あったな。」

ソウシロウを待つ間、周辺に食べられる草花が無いか調査しながらポツリと呟く。

故郷を襲われ、奴隷商人に売られた時は心の底から絶望した。
ソウシロウとオリオール村の人たちのお陰で再び自由になれたことは、信じられないくらいの幸運である。
特に命を救ってもらったソウシロウには感謝し尽くせない。

しかしながら、両親をはじめ一族がバラバラになってしまったことがアリアの表情を曇らせる。
仲間の情報を得ることは非常に困難だとわかっているからだ。

奴隷になってしまったら家系や出自の力が剥げ落ち、法的には家族との縁も切れる。
奴隷個人の情報を所持しているのは奴隷商人だけであり、一度奴隷に身を落とした個人を探すのは困難を極める。

アリアの本名はアイルゼン=アリアであったが、奴隷契約が結ばれた瞬間ただのアリアとなった。
奴隷から自由の身に戻ったとしても、今まで通りの生活に戻れるわけではない。
これからはただの「エルフのアリア」として生きていくしかないのだ。

長寿のエルフ族にとって奴隷に身を落とすことは人間よりも長く絶望を長く味わうことになる。
その一方で、老化が遅く、魔力や身体能力に優れているエルフ族を奴隷にしたがる人間は多い。
エルフの整った容姿を好むものも多いため、多様な種族の中でも高値がつきやすい。

また、アリアのような年頃のエルフは愛玩用としても需要が多く、特に「生娘」には最高値がつく。
アリアは同年代のエルフの中でも容姿が幼く、山賊に囚われたとき「生娘」を装ったため、貞操は守り抜いた。
死んだ奴隷商人も商品に手を出さない主義で助かった。
短い間とはいえ奴隷に身を落としていながら一度も体を弄ばれなかったのは不幸中の幸だ。

ソウシロウにこれ以上気を遣わせまいと誓ったアリアは、ソウシロウの前では務めて明るく振る舞っている。
しかしながら、こうして一人になると気持ちが沈んでくる。

「ソウシロウさんは故郷を離れて、家族と離れて寂しくないのかな」

絶大な力を持ちながら、どこか愛嬌のある青年を思い浮かべる。

今まで会ってきた人間とは全く異なる人間だと思う。
ソウシロウは人を見るとき全く色眼鏡をかけない。
彼が以前呟いた言葉をアリアは忘れない。

「立場や過去を気にしない・・・か。ソウシロウさんみたいな人間もいるんだな」

人間の寿命は短い。短い人生の中で自分の夢を叶えようと必死に足掻く。
そうすると、必然的に他人の顔色を伺ったり、自分に有利になるように計らったりする「人間臭さ」が現れる。
おそらく人間は多様種の中でも身体能力・精神力共に最も脆弱な種族だろう。
個々の能力が高くないから、彼らは少数では生きられないし、自分の私利私欲のために他人を利用する。
だが、結果的にそれが種族として商才や文明を伸ばし、この世界で最も繁栄してきた。

奴隷として過ごす中で人間の汚い部分を見過ぎたアリアは人間に対して好感を覚えることはなかったが、ソウシロウやオリオール村の人達の印象はまるで違った。
なんで人間という種族は性格や環境でこれだけ差がでるのだろう。

鬼神のような強さを持ちながら、他人を気遣うことができるソウシロウはアリアの憧れの存在となっていた。
自分より年下の人間に畏敬の念を覚えるとは思わなかった。
ソウシロウのように誰にも屈せず、自分の思うように生きられるようになりたい、強くそう願った。

「そのためにも、最低限足手纏いにならないようにしなきゃね」

「こんなところで若い娘が野宿たあ、驚いたね」

新たな決意を口にしたアリアは背後からの声に驚き、立ち上がる。

いつのまにか5人の男に囲まれていた。

男たちは手斧や短剣を輝かせ、薄汚い笑みを浮かべていた。
ニタニタと嗤いながらアリアの全身を舐め回すように見つめている。

「これ以上近づかないでください。大声を出しますよ」

「おいおい、そんなに警戒するなよ。ちょっとおじさん達と一緒に遊ぼうぜ。こんなところに一人でいないでさ」

男達は下卑た笑いを浮かべながらにじり寄ってくる。

こいつら山賊だ。こんなに街道のそばを彷徨いているなんて思わなかった。完全に油断していた。

ソウシロウさんを呼ばなきゃ。アリアは脳裏に強き青年の顔を思い浮かべる。
だが、故郷を襲われたときの恐怖から身体はすくみ、喉はカラカラに乾いて声が出ない。

「近づかないでください、舌を噛みます」

かすれた声で絞り出すように言い放ったアリアに、男達がゲヘヘと笑う。

「それはやめときなよ。そんなことされちゃうとおじさん達キミに回復薬をぶっかけて、キミが死ぬ気もおきないくらいにたくさん遊ばなきゃいけなくなるだろう?」

駄目だ。怖い。これ以上立ち向かうことはできない。誰か助けて。
ソウシロウさん、助けてください。

ザンっ

「あっ?ああああああああ、俺の腕がぁあああああああ」

一番後方にいた男が突然絶叫する。

「うるさいなあ。腕の一本取られたくらいで大騒ぎするなよ。野生の獣の方がまだ冷静に対処するぜ」

「ソウシロウさんっ」

聞き覚えのある青年の声にアリアが涙を浮かべて叫ぶ。
本当に来てくれた。

鋭い眼光の青年が腕を無くした男の顎を蹴り上げる。男は宙を舞い、呆気なく昏倒する。

男達はいっせいに戦闘態勢を整える。

「なんだてめえはっ」

リーダー格と思しき男が、血相を変えて威嚇する。

「ここで殺される奴らに名乗っても仕方ないだろう。俺の連れに手を出すなんて、お前ら本当についてないな。同情するよ。」

圧倒的な力の差。ソウシロウから発せられる殺気により、男達は一切動けない。

「アリア、一応確認するが、大丈夫か?」

「はいっわたしは大丈夫です。」

アリアの回答にソウシロウが短く息を吐く。

「ふう、よかったなあ。まだ手を出してなくて、半殺しに負けといてやるよ。」

「てめえ、ふざけるんじゃねえ」

アリアの無事を確認し、ソウシロウが殺気を弱めた瞬間、男達が一斉に飛びかかる。

ソウシロウが左右に揺れると、男達の腕が一本ずつ吹っ飛んだ。
抜刀があまりにも早くて、アリアにはソウシロウが彼等に何をしたのか全くわからなかった。

この星では戦闘時、魔法や装備品によって身体能力を強化しているので、人間の四肢は普通あんなに簡単に切断できない。
戦闘においては素人に近いアリアでもこの状況がどれだけ異常であるかはわかる。
圧倒的な力の差。間違いなくソウシロウは武術の達人だ。

「ひいいいい。化け物だ。逃げろおおおお」

男達は片腕のまま不格好ながら逃げ出した。
ソウシロウはその様子を無言で見つめる。
去る者は追わない。追いかけて全滅させることもできる。
でも、目の前の青年はそれをしなかった。
彼らしいな、とアリアはこんな時に微笑みを浮かべていた。

「アリア、悪かったな。少し遅れた。何もされなかったか」

ソウシロウが心配そうにアリアの顔を覗き込む。

「助けていただき、本当にありがとうございました。このご恩は一生忘れません」

また助けてくれた。私にできることならなんでもしよう。この人のためなら私はどんなことでも出来る。
一生かけて私はこの人に尽くそう。どうせ救われた身、残りの人生をこの人に捧げよう。

「そんなことはしなくていいよ。大したことはしていない。」

いやいやと手を振るソウシロウの言葉はアリアに届かない。
アリアにとってソウシロウは正真正銘のヒーローだ。

そう思うと、アリアは自然とソウシロウを抱きしめていた。
鍛え抜かれた青年の身体が一瞬強張るのがわかる。
その感覚が愛おしく思える。

血生臭い戦場で、アリアが自分の生き方を決意した瞬間だった。
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