無職無双 ~現実世界で無職になって絶望。異世界転生しても無職のままで絶望。だが、無職こそ最強の世界だった無職転生物語~

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第一章 ミズガルズの層

第七話 フレイヤと出かけよう  ~奴隷の少女が売られていた件~

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「師匠。この世界はアースガルズの城壁で囲まれているということでしょうか?」
「そうだわさ。
 今わかっているのはこの世界は直径100キロメートル、高さ100キロメートルの広さがあるってこと。
 そして、ちょうど中心にあたる、あそこを見て」

 イズン師匠が指をさした先には地上からのび天井に続く塔があった。
 
「あの塔はディシデリーズの塔と呼ばれていて、この世界の外に繋がっていると言われているわ」
「それじゃあ。あの塔を登って外に出ればオレが元来た世界へ戻れる可能性があるということですね」
「わからないわ」
「どうしてですか?」
「誰も登ったことが無いの。
 このアタシでさえもね。
 今、アナタと同じ別の世界から送られたという者達がギルドでパーティーを組んで攻略しているようだけど無理ね」
「一体なぜですか?」
「アタシもおそらく最上階付近までは行ったの。
 100層に強力な魔物が居るのよ。
 アタシの攻撃がまったく通じなかったから推定で100万以上ね。
 アナタなら可能性あるかもしれないわね」

 この世界で最強クラスの師匠が諦めている上に前人未到。
 塔の最終フロアにボスが居るのなんて王道中の王道。
 オレのこの無駄に強い力の使い道はここしか無いだろう。
 そしてフレイヤを現実世界へ帰してあげるのもオレにしか出来ない。
 イズン師匠は絶望的な話をしているようだったが、オレには夢が広がる希望の話だ。


---


 地上へ降りると師匠に出かけてくると伝えて駆け出した。
 一刻も早くフレイヤにこの世界の真実と元の世界に帰ることができる可能性を伝えたい。
 フレイヤの宿泊先へ来て呼び出した。
 宿泊先一階のレストランで話をすることになった。

「お話って何かしら?」

 猫のフォレストが死んでしまったことがショックなんだろう。
 話し方が、なんとなく暗い。

「この世界と元の世界に帰る可能性について。
 この世界についてフレイヤは何か知っている?」

 勢いでフレイヤなんて呼び捨てにして距離を縮めてみた。
 真剣な話をしようとしてるのにこんな姑息なことやる自分がちょっと嫌だ。
 だが、これでいい。
 落ち込んでるフレイヤを元気づけるためにオレぐらいは元気にしないと。

「この世界の中心にディシデリーズの塔というのがあって最終フロアには強力な魔物が居てまだ誰も塔を攻略した人が居ないということぐらいでしょうか。
 塔を攻略するためにパーティーや軍隊まで編成している人達まで居るようです」

 あ、あれ。
 フレイヤ知ってたのか……。
 しかもオレより詳しい予感しかしない。
 この世界に来てから三ヶ月も何もせず何も知ることも無くフラフラしてたオレだけが出遅れているようだ。

「お、おう。そうなんだ。
 それで最終フロアのボス。
 オレが倒そうと思っている」
「あ、あなたがですか?」
「そう。だから元気だして」
「私を元気づけるために……。ありがとう」

 フレイヤの瞳が少しうるんでいるように見えた。
 
「今日はこの街の毎月恒例のお祭りの日なんですよ。今から一緒に行きませんか?」

 フレイヤはいっぱいの笑顔でそう言った。
 え? 急に一緒に?
 こんな事が起きるなんて信じられない。
 イケメン少年だからか?
 いやっほうううううううううううう!

 いや、だが、待て。
 俺とフレイヤの背丈は、ほぼ同じだが俺は推定永遠の17歳。
 フレイヤは18歳なので俺の事は弟ぐらいに思っている可能性もある。

 いや、だがしかし、この事実は変わらない。
 女性から誘われた。
 現実世界では人生で一度も無かった現象だ。
 いやっほうううううううううううう!


---


 街の中心部の公園まで来ると多くの人で賑わっていた。
 召喚者も多く見かける。
 現実世界で知った顔も多いが当然転生している俺のことなど気が付かない。
 当然、俺が一方的に知っているだけの有名人は元々俺のことなど知る由もない。

「すごいですね。お祭り初めて来ました。」

 現実世界のお祭りのように出店が並び、何かしらイベントのような事も行われている。

「え? お祭りはじめてなんですか?」

 おっとまずい。
 俺は召喚者ではなく、こちらの世界の住人ということにしていたのだった。

「は、はい。修行で外にほとんど出たことなかったもので」

 修行はイズン師匠の所で昨日はじめたばかりなのだが。
 俺の無駄に強大なRPは長年修行したということにすれば辻褄が合うだろう。

「それは大変でしたね。でも、尊敬します。それだけ物事に熱中できるというのは」

 フレイヤは意外に天然なのか素直なのか信じてくれたみたいだ。

 二人で他愛も無い事を話ながらお祭りを見てまわった。
 焼き鳥みたいな何かの肉を焼いたものは意外なほど美味しかった。
 金魚すくいのようなものもあったが救うのは七色をしたメダカのような魚だった。
 この世界は現実世界から来た召喚者にとって全てが新鮮だ。
 楽しい時間を重ねてフレイヤも敬語じゃなくなり俺のことをアルスと呼ぶようになった。

「さあ! 次の挑戦者は居ないかね! 賞金はなんと100万デジ!」

 公園の一角から大きな声が聞こえて来たと思ったら格闘コンテストをやっているようだ。
 こんなコンテスト少なくとも日本では開催は難しいだろ。
 これぞ異世界だ。
 しかし、賞金100万デジとはすごい。

「さーさー。この召喚者。マイク・サップに素手で挑戦して勝ったら100万デジ!」

 2メートルを越える巨漢の黒人。
 あれは現実世界のボクシングヘビー級チャンピオンじゃないか。
 50戦50勝0敗0引き分け48KOの連勝記録中だったはずだ。
 リアルで見ると迫力がある。
 この世界でRPを使いこなしているならどれだけ強いんだろう。
 
「あの方、私達の居た世界の有名なボクシングというスポーツのチャンピオンなのよ」
「うーん。たしかに。大きな体であの筋肉、強そう」

 フレイヤみたいな格闘技に興味無い女の子でさえ知ってるなんてマイク・サップは、やはり本物だ。
 俺はマイク・サップを知らないテイで話を合わせておいた。
 ボクシングには興味無いがニュースなんかで流れるKOシーンを見てちょっとしたファンではあるのだが。

 少し気になったが格闘コンテストを横目に更に公園の奥へと進んでいった。
 急にフレイヤから袖を掴まれ立ち止まった。
 え? 何だろう。ここでいきなりキスとか? フレイヤそれは早いし大胆すぎるよ。

「あれ見て」

 悲しそうな顔をして指差す先にはオリが並べられていた。
 近づいていくと中には狼やクマのような動物型の魔物が入っていたが、フレイヤが見つめたオリは違った。
 中に少女が捉えられている。
 よく見ると猫耳に猫のしっぽがついている。
 獣人だ。
 猫耳としっぽは死んでしまったフォレストと同じヒョウのようなレオパード模様にブラウンだ。

「お客さん。お目が高い。こちらは本日唯一の獣人。人気の獣人族人型猫科の『ノルフェージャン・フォレストキャット』です」

 ニヤニヤと下品な笑みを浮かべて商人が話かけてきた。
 こいつも召喚者だ。
 現実世界では悪名高いテロリストのリーダーの1人だったはずだ。
 武器の密輸や人身売買で組織の金庫番役。
 異世界に来てまで人身売買しているのか。

「た、たすけて……」

 うつむいたまま獣人の少女は話かけてきた。
 よく見るとあちこち傷ついている。
 商人が右手に持っているムチで叩いたんじゃないだろうか?

「この子。おいくらですか?」

 俺が聞く前にフレイヤが商人に言った。
 心無しか語気が強く感じられた。

「うーん。そうだね。お嬢ちゃんなら100万でいいよ」

 商人はニヤニヤと笑いながらふっかけてきた。
 狼やクマのような魔物には5万や10万の値段がついているのに猫耳の少女だけには無い。
 こいつ相手を見て言ってきている。

「どうしよう。全財産はたいても50万しか……」
「俺がなんとかする」

 格闘コンテストだ。
 あのコンテストでマイク・サップに勝てば賞金100万デジ。
 
「まさか、さっきのコンテストに出るなんて言わないよね?」
「そのとおり。安心して必ず勝つから」

 フレイヤはとめて来たが、今の俺なら勝てるはずだ。
 むしろ、やりすぎないように気をつけないといけない。
 俺を止めようとするフレイヤを強引に説得した所、一部始終を聞いていた商人が話かけてきた。

「ほう。ボウズ。格闘コンテストに出るのか。応援してるぜ」

 ニヤニヤしながら煽ってきた。
 こう言っては何だが、細マッチョとは言え少年の見た目の俺がマイク・サップに勝てるようには見えない。
 格闘コンテスト参加に煽るとは、こいつやっぱりロクな奴じゃない。
 俺が負ける様を見たい生粋のサディストなんじゃないだろうか。
 見ていろ。
 やりすぎないように勝って、調子にのらないようにして、目にもの見せてやる。
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