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それぞれタクシーを待つ事務所の面々に「また明日」とお別れを言って、新坂は瀬戸と並んで深夜の歩道を歩いていた。
「う~ん、なんかラーメン食べたい。食べたくない?」
「新坂さんは今減量中じゃないですか。今何キロ減ってます?」
「あ~……」
事務所に撮影までに達成する目標とされた減量を全く達成できていない新坂が意図的に黙ると、瀬戸は「ちょっとは本気出してくださいよ!」と新坂の肩を揺らして耳元で大きく笑った。触れられたことに便乗して、新坂も少し身を寄せる。
「もう今日は何も食べちゃダメですよ。深夜に食べると太ります」
「ラーメンは冗談。でもアイスかお菓子は食べたいんだけど」
「全然諦めないじゃないですか」
また耳元で瀬戸が楽しそうに笑って、新坂の胸には好意が広がっていく。
好きだけど言えない、この生産性のない想いはいずれ諦めがつくと思っていた。だから新坂は、時間が解決してくれるのをずっと待っていた。でも結局、瀬戸への気持ちが消えることはなくて、消そうと思って消せるものでもなかった。
そして消えない想いはやがて、新坂に1つの決断をさせた。
酔った勢いに乗じて、1度だけ一線を越えてしまおう。
拒まれなければ冷静になる前に関係を持ち、事後に酒の過ちとして片付ける。拒まれたら、『酔った冗談』という言い訳に逃げればいい。回転が速いともずる賢いとも言えない頭で、新坂は時間をかけてこの案を考えついた。そうまでして瀬戸と寝たいのかと頭の中の違う自分が何度も聞いてきて、その度に新坂はそうだと頷いた。
今日歩きで帰ることに拘ったのは、車の送迎では必然的にマンションそばでの解散になってしまうからだった。歩きなら解散を避けて部屋の中まで誘導できる。瀬戸は優しいから「部屋に飾った絵を見ていって」とでも言えば、部屋まで来てくれると新坂はわかっていた。
「あ!花だ、なんか咲いてますよ」
新坂が今後の展開に思考を奪われていると、瀬戸が跳ねるような声を出して新坂の腕を引っ張りながら駆け出した。酒でいつもよりテンションの高い瀬戸について行きながら何事だと向かう先を見ると、小さな公園の中に黄色い小さな花をたくさんつけた木があった。
「結構大きいですね、すごい」
駆け寄りきって、瀬戸は己の背丈より高い木を見上げる。黄色の花と瀬戸が重なる様は純粋で綺麗で、新坂は目を細めた。
「かわいいね。なんの花だろ」
「これ名札ですかね」
幹についたプレートを見つけて少し屈んだ瀬戸は、「ミモザ、って名前らしい」と言ながら新坂に顔を向けた。
「聞いたことある、ような。ないような」
新坂がプレートを覗き込むと、名前の下に花言葉が書いてあった。
「新坂さん、そこ立ってください」
プレートを見つめる新坂の肩を瀬戸が叩いて、幹の手前を指差す。新坂が指示に従うと、すぐに瀬戸はスマホを構えて写真を撮った。
「お~すごい似合ってる。さすがモデルは違いますね。インスタ載せますか」
「ユキトくんの方が似合うよ」
新坂は撮られた写真を見る前にそう言った。
「じゃ、今度はユキトくんの番」
「え~俺はいいですよ、絵にならないし」
「いいから、ほら。笑って!」
立っていた場所に瀬戸を誘導して、新坂はスマホを向ける。黄色い花に囲まれて笑顔を見せる愛しい人を、静かにカメラに収めた。
「う~ん、なんかラーメン食べたい。食べたくない?」
「新坂さんは今減量中じゃないですか。今何キロ減ってます?」
「あ~……」
事務所に撮影までに達成する目標とされた減量を全く達成できていない新坂が意図的に黙ると、瀬戸は「ちょっとは本気出してくださいよ!」と新坂の肩を揺らして耳元で大きく笑った。触れられたことに便乗して、新坂も少し身を寄せる。
「もう今日は何も食べちゃダメですよ。深夜に食べると太ります」
「ラーメンは冗談。でもアイスかお菓子は食べたいんだけど」
「全然諦めないじゃないですか」
また耳元で瀬戸が楽しそうに笑って、新坂の胸には好意が広がっていく。
好きだけど言えない、この生産性のない想いはいずれ諦めがつくと思っていた。だから新坂は、時間が解決してくれるのをずっと待っていた。でも結局、瀬戸への気持ちが消えることはなくて、消そうと思って消せるものでもなかった。
そして消えない想いはやがて、新坂に1つの決断をさせた。
酔った勢いに乗じて、1度だけ一線を越えてしまおう。
拒まれなければ冷静になる前に関係を持ち、事後に酒の過ちとして片付ける。拒まれたら、『酔った冗談』という言い訳に逃げればいい。回転が速いともずる賢いとも言えない頭で、新坂は時間をかけてこの案を考えついた。そうまでして瀬戸と寝たいのかと頭の中の違う自分が何度も聞いてきて、その度に新坂はそうだと頷いた。
今日歩きで帰ることに拘ったのは、車の送迎では必然的にマンションそばでの解散になってしまうからだった。歩きなら解散を避けて部屋の中まで誘導できる。瀬戸は優しいから「部屋に飾った絵を見ていって」とでも言えば、部屋まで来てくれると新坂はわかっていた。
「あ!花だ、なんか咲いてますよ」
新坂が今後の展開に思考を奪われていると、瀬戸が跳ねるような声を出して新坂の腕を引っ張りながら駆け出した。酒でいつもよりテンションの高い瀬戸について行きながら何事だと向かう先を見ると、小さな公園の中に黄色い小さな花をたくさんつけた木があった。
「結構大きいですね、すごい」
駆け寄りきって、瀬戸は己の背丈より高い木を見上げる。黄色の花と瀬戸が重なる様は純粋で綺麗で、新坂は目を細めた。
「かわいいね。なんの花だろ」
「これ名札ですかね」
幹についたプレートを見つけて少し屈んだ瀬戸は、「ミモザ、って名前らしい」と言ながら新坂に顔を向けた。
「聞いたことある、ような。ないような」
新坂がプレートを覗き込むと、名前の下に花言葉が書いてあった。
「新坂さん、そこ立ってください」
プレートを見つめる新坂の肩を瀬戸が叩いて、幹の手前を指差す。新坂が指示に従うと、すぐに瀬戸はスマホを構えて写真を撮った。
「お~すごい似合ってる。さすがモデルは違いますね。インスタ載せますか」
「ユキトくんの方が似合うよ」
新坂は撮られた写真を見る前にそう言った。
「じゃ、今度はユキトくんの番」
「え~俺はいいですよ、絵にならないし」
「いいから、ほら。笑って!」
立っていた場所に瀬戸を誘導して、新坂はスマホを向ける。黄色い花に囲まれて笑顔を見せる愛しい人を、静かにカメラに収めた。
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