5 / 25
5話
しおりを挟む
「優成、キスしよう」
ソファに座った優成の膝を枕にして、明樹は囁いた。
たった今撮った自撮りをインスタに上げようとしていた優成は、スマホを明樹の胸に落とした。謝ることも忘れて目線を下げた優成の前髪が、彼の動揺を隠すように目元に落ちる。
子ども扱いされがちな末っ子もセンターパートになると途端に大人の色気が出るな、と明樹は思った。
「え……なんですか?」
「キス。こないだしたでしょ。もっかいしよ」
「…………なんで?」
「したいから。したくない?」
今、寮のリビングには明樹と優成しかいない。静かな空間に、お互いにしか聞こえないような囁き合いが響く。
ちょっと前に、明樹は優成とキスをした。部屋で一緒に映画を観ていたら優成に「キスしたい」と言われたので明樹が応じた、というのがより正確な表現だ。付き合っているわけでもない優成が何故そんなことを言ったのか、明樹は理解していなかったが、優成にキスを求められるのは悪い気がしない──どころか嬉しくなっている自分がいた。
それに、優成とキスしたら心が満たされる感覚があって、その感覚が忘れられなくて。だから、明樹はまたキスしたいと思っていた。それで、ひとりでリビングにいる優成を見つけて膝に寝た。
「いや、したくない、とかではない……ですけど」
「じゃ、しよう。ほら」
優成のうなじに手を這わせて、誘うように顎をあげる。
ほんの一瞬、悩むように目をそらした優成は、しかし次の瞬間には明樹に唇を重ねた。
(どきどきするし、やっぱり嬉しい)
優成の体温が身体に流れて、明樹は満たされていくのを感じる。長く感じても実際はほんの1、2秒のこと。優成はさっと唇を離そうとした。追いかけるように顔を寄せ明樹からキスを送ると、優成は間近で何か我慢するように顔をしかめてから、器用に明樹の下から脚を抜いた。そして明樹を閉じ込めるように覆い被さる。
「……こういうこと、いろんな人としてるんですか」
「え?してないよ」
優成のつぶらな瞳が一回り大きくなる。
予想外、といった表情に「おいおい、俺はそこまで遊び人じゃない」と笑い返したら、無言で腕を掴まれた。その形を確かめるような掴み方は、普段のじゃれあいにない生々しさが見え隠れしていて、明樹は息を止めた。しかし自分から仕掛けておいて、今さらやっぱやめようとは言い出せない。それに、明樹が何か言い出す前に唇は塞がれていた。
優成の唇を食むようなキスは、先程と違い味わうようで長かった。
(さすがに口は、開けたらダメだよな)
──ゴトンッ。
明樹が意思をもって唇に力を入れたとき、何かが落ちる音がした。
反射的に目を向けると、リビングの入り口で仲間であり親友の仁がこちらを凝視したまま固まっていた。親友の足元には水のペットボトルが落ちている。仁は一言も発していなかったが、その様子だけで『キスを見た』という状況が完成していた。
「じ、仁さっ……!」
明樹と同じくリビングの入り口に顔を向けた優成は、転がる勢いで明樹の上から飛び降り即座にホールドアップした。
「待ってください、これはですね……!!」
「……一原、優成……」
地を這うような低音でフルネームを発した仁は、鮮やかな跳躍で優成に特攻した。どう説明するべきかゆっくりとした思考で考え始めた明樹には、もちろん止める間もないスピードだった。
ソファに座った優成の膝を枕にして、明樹は囁いた。
たった今撮った自撮りをインスタに上げようとしていた優成は、スマホを明樹の胸に落とした。謝ることも忘れて目線を下げた優成の前髪が、彼の動揺を隠すように目元に落ちる。
子ども扱いされがちな末っ子もセンターパートになると途端に大人の色気が出るな、と明樹は思った。
「え……なんですか?」
「キス。こないだしたでしょ。もっかいしよ」
「…………なんで?」
「したいから。したくない?」
今、寮のリビングには明樹と優成しかいない。静かな空間に、お互いにしか聞こえないような囁き合いが響く。
ちょっと前に、明樹は優成とキスをした。部屋で一緒に映画を観ていたら優成に「キスしたい」と言われたので明樹が応じた、というのがより正確な表現だ。付き合っているわけでもない優成が何故そんなことを言ったのか、明樹は理解していなかったが、優成にキスを求められるのは悪い気がしない──どころか嬉しくなっている自分がいた。
それに、優成とキスしたら心が満たされる感覚があって、その感覚が忘れられなくて。だから、明樹はまたキスしたいと思っていた。それで、ひとりでリビングにいる優成を見つけて膝に寝た。
「いや、したくない、とかではない……ですけど」
「じゃ、しよう。ほら」
優成のうなじに手を這わせて、誘うように顎をあげる。
ほんの一瞬、悩むように目をそらした優成は、しかし次の瞬間には明樹に唇を重ねた。
(どきどきするし、やっぱり嬉しい)
優成の体温が身体に流れて、明樹は満たされていくのを感じる。長く感じても実際はほんの1、2秒のこと。優成はさっと唇を離そうとした。追いかけるように顔を寄せ明樹からキスを送ると、優成は間近で何か我慢するように顔をしかめてから、器用に明樹の下から脚を抜いた。そして明樹を閉じ込めるように覆い被さる。
「……こういうこと、いろんな人としてるんですか」
「え?してないよ」
優成のつぶらな瞳が一回り大きくなる。
予想外、といった表情に「おいおい、俺はそこまで遊び人じゃない」と笑い返したら、無言で腕を掴まれた。その形を確かめるような掴み方は、普段のじゃれあいにない生々しさが見え隠れしていて、明樹は息を止めた。しかし自分から仕掛けておいて、今さらやっぱやめようとは言い出せない。それに、明樹が何か言い出す前に唇は塞がれていた。
優成の唇を食むようなキスは、先程と違い味わうようで長かった。
(さすがに口は、開けたらダメだよな)
──ゴトンッ。
明樹が意思をもって唇に力を入れたとき、何かが落ちる音がした。
反射的に目を向けると、リビングの入り口で仲間であり親友の仁がこちらを凝視したまま固まっていた。親友の足元には水のペットボトルが落ちている。仁は一言も発していなかったが、その様子だけで『キスを見た』という状況が完成していた。
「じ、仁さっ……!」
明樹と同じくリビングの入り口に顔を向けた優成は、転がる勢いで明樹の上から飛び降り即座にホールドアップした。
「待ってください、これはですね……!!」
「……一原、優成……」
地を這うような低音でフルネームを発した仁は、鮮やかな跳躍で優成に特攻した。どう説明するべきかゆっくりとした思考で考え始めた明樹には、もちろん止める間もないスピードだった。
77
あなたにおすすめの小説
なぜかピアス男子に溺愛される話
光野凜
BL
夏希はある夜、ピアスバチバチのダウナー系、零と出会うが、翌日クラスに転校してきたのはピアスを外した優しい彼――なんと同一人物だった!
「夏希、俺のこと好きになってよ――」
突然のキスと真剣な告白に、夏希の胸は熱く乱れる。けれど、素直になれない自分に戸惑い、零のギャップに振り回される日々。
ピュア×ギャップにきゅんが止まらない、ドキドキ青春BL!
完結|好きから一番遠いはずだった
七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。
しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。
なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。
…はずだった。
バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる
衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。
男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。
すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。
選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。
二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。
元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
続編・番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。
オレにだけ「ステイタス画面」っていうのが見える。
黒茶
BL
人気者だけど実は人間嫌いの嘘つき先輩×素直すぎる後輩の
(本人たちは気づいていないが実は乙女ゲームの世界である)
異世界ファンタジーラブコメ。
魔法騎士学院の2年生のクラウスの長所であり短所であるところは、
「なんでも思ったことを口に出してしまうところ。」
そして彼の秘密は、この学院内の特定の人物の個人情報が『ステータス画面』というもので見えてしまうこと。
魔法が存在するこの世界でもそんな魔法は聞いたことがないのでなんとなく秘密にしていた。
ある日、ステータス画面がみえている人物の一人、5年生のヴァルダー先輩をみかける。
彼はいつも人に囲まれていて人気者だが、
そのステータス画面には、『人間嫌い』『息を吐くようにウソをつく』
と書かれていたので、うっかり
「この先輩、人間嫌いとは思えないな」
と口に出してしまったら、それを先輩に気付かれてしまい・・・!?
この作品はこの1作品だけでも読むことができますが、
同じくアルファポリスさんで公開させていただいております、
「乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。」
「俺が王太子殿下の専属護衛騎士になるまでの話。」
とあわせて「乙女ゲー3部作」となっております。(だせぇ名前だ・・・笑)
キャラクターや舞台がクロスオーバーなどしておりますので、
そちらの作品と合わせて読んでいただけたら10倍くらい美味しい設定となっております。
全年齢対象です。
BLに慣れてない方でも読みやすいかと・・・
ぜひよろしくお願いします!
兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?
perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。
その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。
彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。
……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。
口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。
――「光希、俺はお前が好きだ。」
次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる