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事情
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「く、久遠さん……」
俺が掠れた声で呟くと、久遠さんはハッと俺に目を向けてそしてすぐに西野を睨む。
「西野、なんでお前ここにいるんだよ」
苛ついた声を久遠さんが出すと、西野は眉を寄せて腕を組んだ。威圧感が増す。
「お前と連絡つかないからわざわざ来たんだろ」
「避けてんだよこっちは。お前と距離置くって決めたんだ。普通わかるだろ」
「何を怒ってるんだ?杉崎。殴ったのが嫌だったなら謝るが」
「謝れば許すと思ってんだろ。ホントにそういうところが嫌いだ」
久遠さんが苦々しく呟く。こんなに負の感情を露にする久遠さんの姿に俺は正直たじろいだ。それに杉崎久遠の存在に誰かが気付いたら、ちょっと騒ぎになるかもしれない。このただならぬ──どこか痴話喧嘩じみた言い合いの最中、誰か通りかからないか肝が冷えた。
「まぁ気が済むまで怒ってていい。それよりこの清永さんとはどういう関係だ」
話の矛先が俺に向けられて嫌な汗が背中を伝う。申し訳なさそうな視線を俺に向けてから、久遠さんは西野を見据えた。
「友達。お前が俺を殴ったことで芽生えた友情だけど」
「ここ数日連絡シカトしてたのはこの新しいお友達と遊んでたから、ってことか?」
「そうだよ。俺はお前の身勝手さにいい加減うんざりしてるんだ。だから連絡も取りたくないし会いたくもない」
久遠さんの非難に動じることもなく、西野は腕組みを解いて俺の横を通りすぎる。そして久遠さんの目の前に移動した。久遠さんはモデル体型の高身長──ウィキペディアによれば180cm──だが、西野はそれよりも背が高い。
「お前が俺と会わずに何日も過ごせるわけないと思ってたが、なるほどな。抱いてもらってんのか、俺の代わりに」
西野が俺を親指でさしながらさらりと、さも当たり前のように決定的なことを言った。
「っハァ!?んなわけ……!お前、一太くんの前で何言ってんのかわかってんのか」
久遠さんは一瞬何を言われたのかわからない顔をしたがすぐに動揺で目を見開き、西野の胸ぐらを掴む。西野のオブラートゼロの発言に俺はうまく頭が回っていなかったが、とにかく騒ぎが大きくなるのを避けたくて久遠さんと西野の間に入ろうと近づいた。このふたりがただの友達じゃないのでは、という憶測が肯定されてしまった状況に動悸がすごい。
「あの、ふたりとも一旦落ち着いてください。ここ人目もあるし……!」
「ごめん一太くん、今のは違う、ちがうんだ西野が……!」
「何が違うんだ、杉崎」
俺の方に顔を向けた久遠さんの顎を西野が掴む。無遠慮で強引で、普通の距離感ではない関係がふたりの間にあるのが嫌でもわかる行動だった。
「ちょっと乱暴なことは……」
俺が身をよじろうとする久遠さんの肩を持つと西野の濃い二重が俺をとらえた。その視線の鋭さに怯む暇もなく、西野は久遠さんに唇を重ねた。
「えっ……」
西野が久遠さんにキスしている。
なんだ?この状況は。なんなんだ。
俺は呆気にとられて、キスをしたまま俺を見やる西野の視線を呆然と受け止めた。
「ッ……~~!このッ離せ!」
首を押さえ込むようにされていた久遠さんが西野の身体を思い切り押し返し、肩で息をする。そしてすぐに唇を手の甲で強く拭った。
「ふざけんなッ……!」
「久遠さん落ち着いて!」
これ以上騒いだらさすがに目立ちすぎる。なんとか久遠さんを制止すると、久遠さんは俺を見て唇を歪めた。泣きそうに見えて胸が塞がる。
「西野さん、あんたは何がしたいんですか」
「清永さんに手っ取り早く『何も違わない』ことをわかってもらおうと思っただけだ」
相手の気持ちなどお構い無しで傲慢だ。怒りたくなる気持ちを抑えて、拳を握りしめている久遠さんに寄り添おうと近づく。しかし久遠さんは「ごめん」と小さく呟くと後ずさり、逃げるように踵を返した。
「あ、久遠さん!」
俺は1度西野の方を振り返ったが、追いかけるそぶりも見せずスーツに手を突っ込んで立っているだけだった。その他人事のような態度を睨んでから、俺は久遠さんが消えた方向に走り出した。
俺が掠れた声で呟くと、久遠さんはハッと俺に目を向けてそしてすぐに西野を睨む。
「西野、なんでお前ここにいるんだよ」
苛ついた声を久遠さんが出すと、西野は眉を寄せて腕を組んだ。威圧感が増す。
「お前と連絡つかないからわざわざ来たんだろ」
「避けてんだよこっちは。お前と距離置くって決めたんだ。普通わかるだろ」
「何を怒ってるんだ?杉崎。殴ったのが嫌だったなら謝るが」
「謝れば許すと思ってんだろ。ホントにそういうところが嫌いだ」
久遠さんが苦々しく呟く。こんなに負の感情を露にする久遠さんの姿に俺は正直たじろいだ。それに杉崎久遠の存在に誰かが気付いたら、ちょっと騒ぎになるかもしれない。このただならぬ──どこか痴話喧嘩じみた言い合いの最中、誰か通りかからないか肝が冷えた。
「まぁ気が済むまで怒ってていい。それよりこの清永さんとはどういう関係だ」
話の矛先が俺に向けられて嫌な汗が背中を伝う。申し訳なさそうな視線を俺に向けてから、久遠さんは西野を見据えた。
「友達。お前が俺を殴ったことで芽生えた友情だけど」
「ここ数日連絡シカトしてたのはこの新しいお友達と遊んでたから、ってことか?」
「そうだよ。俺はお前の身勝手さにいい加減うんざりしてるんだ。だから連絡も取りたくないし会いたくもない」
久遠さんの非難に動じることもなく、西野は腕組みを解いて俺の横を通りすぎる。そして久遠さんの目の前に移動した。久遠さんはモデル体型の高身長──ウィキペディアによれば180cm──だが、西野はそれよりも背が高い。
「お前が俺と会わずに何日も過ごせるわけないと思ってたが、なるほどな。抱いてもらってんのか、俺の代わりに」
西野が俺を親指でさしながらさらりと、さも当たり前のように決定的なことを言った。
「っハァ!?んなわけ……!お前、一太くんの前で何言ってんのかわかってんのか」
久遠さんは一瞬何を言われたのかわからない顔をしたがすぐに動揺で目を見開き、西野の胸ぐらを掴む。西野のオブラートゼロの発言に俺はうまく頭が回っていなかったが、とにかく騒ぎが大きくなるのを避けたくて久遠さんと西野の間に入ろうと近づいた。このふたりがただの友達じゃないのでは、という憶測が肯定されてしまった状況に動悸がすごい。
「あの、ふたりとも一旦落ち着いてください。ここ人目もあるし……!」
「ごめん一太くん、今のは違う、ちがうんだ西野が……!」
「何が違うんだ、杉崎」
俺の方に顔を向けた久遠さんの顎を西野が掴む。無遠慮で強引で、普通の距離感ではない関係がふたりの間にあるのが嫌でもわかる行動だった。
「ちょっと乱暴なことは……」
俺が身をよじろうとする久遠さんの肩を持つと西野の濃い二重が俺をとらえた。その視線の鋭さに怯む暇もなく、西野は久遠さんに唇を重ねた。
「えっ……」
西野が久遠さんにキスしている。
なんだ?この状況は。なんなんだ。
俺は呆気にとられて、キスをしたまま俺を見やる西野の視線を呆然と受け止めた。
「ッ……~~!このッ離せ!」
首を押さえ込むようにされていた久遠さんが西野の身体を思い切り押し返し、肩で息をする。そしてすぐに唇を手の甲で強く拭った。
「ふざけんなッ……!」
「久遠さん落ち着いて!」
これ以上騒いだらさすがに目立ちすぎる。なんとか久遠さんを制止すると、久遠さんは俺を見て唇を歪めた。泣きそうに見えて胸が塞がる。
「西野さん、あんたは何がしたいんですか」
「清永さんに手っ取り早く『何も違わない』ことをわかってもらおうと思っただけだ」
相手の気持ちなどお構い無しで傲慢だ。怒りたくなる気持ちを抑えて、拳を握りしめている久遠さんに寄り添おうと近づく。しかし久遠さんは「ごめん」と小さく呟くと後ずさり、逃げるように踵を返した。
「あ、久遠さん!」
俺は1度西野の方を振り返ったが、追いかけるそぶりも見せずスーツに手を突っ込んで立っているだけだった。その他人事のような態度を睨んでから、俺は久遠さんが消えた方向に走り出した。
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