魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ

文字の大きさ
34 / 69

32

しおりを挟む
「いたた……! 体術きっつい……」

 授業を終えて他は全部サボると言ったディタと別れた俺は、次の教室へと向かっていた。もっと体育みたいなものかと思っていたのに、アクション映画でしか見たことのない戦闘訓練ばかりで俺の身体は悲鳴をあげている。

(ディタ強かったなぁ。1回も攻撃当てられなかった)

 それどころか、ディタは俺に攻撃を当てまくれるだろうに全部寸止めでやめてくれていて、実力差は雲泥だった。俺の身体が痛いのは、攻撃をするにも避けるにも転んでばかりだったせいである。

(至上様って体術もできんのかな……。そこのセンスくらい継承させてくれよ)

「なぁ、キミがルカ・サトーくん?」

 突然呼ばれて足を止めると、目の前にグレーの髪をした男子生徒が立っていた。笑顔を浮かべているが、ズボンに手を突っ込んで立つ姿は優等生には見えない。

「……そうですけど。何か用ですか」
「俺はロット国のユーリ・ガルス。ま、よろしゅうね。実はな、弱小国家出身の魔法できん雑魚貴族が、ダン様に取り入ってるって聞いたんやけど。キミやろ?」

 ニコニコというよりニヤニヤという笑みをして、ユーリと名乗った男は流れるように俺を馬鹿にしてくる。

(なんだこいつ……。変な関西弁みたいな訛りだし……)

 今まで俺にヘイトを向けてきた生徒とは一線を画す濃さがあった。ついさっきの授業でディタに「面と向かっては攻撃されなくなった」と報告したのに、もう面と向かって攻撃されていて悲しくなる。

「ダン王子に取り入ってるなんて誤解です。別に何もしてません」
「ウソはあかんな。ダン様の部屋から朝出てくるって噂なってんで。随分たらし込んどるみたいやん」
「! いや、それは、深い意味はなくて……!」

(バレてんのかよ……! 最悪……!)

 部屋に行くときも出て行くときも、俺なりに細心の注意を払っているつもりだった。王族専用階の中でも4王子の部屋は別格で人通りのないエリアにあり、廊下に誰もいない時を見計って移動していたのだ。

(それでもバレてるってことは、面と向かって攻撃されなくなってただけで影では目の敵にされ続けてたんだな……)

「ダン様と寝ておきながら、ディタにも色目使っとんのは俺も友人として見過ごせん。王族フェチなん? 節操のない」

 ユーリは顎を上げて、やれやれと俺を見下ろした。

(こいつディタと友達なのかよ)

 そこでふと学院に来た初日、ディタと別れた直後にディタに肩を組んできていた男のことを思い出した。こいつだったかは定かではないが、ああいうディタと仲良くしている一員──というかボス枠なのだろう。ユーリの周囲を見れば、取り巻きのような男女が続々と増えている。

「ユーリ! そいつムカつくからやっちゃってよ」
「ダン様に生意気な口聞きやがって。身の程を知れ」

 どんどん集まる野次馬の生徒たちからどんどん野次が飛ぶ。

「外野も盛り上がっとるし殴り合いでもしよか? 俺が勝ったら、今日にでも学院辞めて国帰ってや」
「は? なんだよその条件。おかしいだろ……!」
「聞こえんなぁ。決まりや。キミの意見なんてどうでもええねん。特別に魔法はなしにしたる」
「俺は喧嘩なんかする気ないって言ってんだけど!?」
「往生際の悪いやつやな。男なら覚悟決めんか──……チッ」

 俺を殴ろうと重心を低くしたユーリが、俺の後ろを見て舌打ちをした。「空気読めや」と構えを戻すユーリを警戒しながら振り返ると、野次馬がモーセの十戒のように割れ、その中心にダン王子が立っている。

「げっ。ダン王子」
「少し目を離しただけでこれか。世話の焼ける」

 ダン王子はやれやれとため息を吐いて、俺に近づいてくる。助けてくれるのかと思った矢先、顎を掴まれた。

(え?)

 何をされたのか一瞬わからなかった。唇に柔らかいものが当たって離れる。
 キスだった。公衆の面前で、キスされていた。
 直後、地響きのような悲鳴が沸き上がった。無論、喜びの悲鳴ではなく絶望的な悲鳴だ。

「こいつは俺と交際している。今後手を出したものは俺の顔に泥を塗ったことになると覚えておけ」
「はぁ!? ちょ、なに言って──」
「行くぞ」
「!? うわっ……!」

 悲鳴を意にも介さないダン王子に腰を抱かれて、俺の身体は宙に浮いた。すぐに屋根を越える高さになり、身体が風を切るスピードで飛んでいく。

(落ちたら死ぬ……!!)

 その恐怖のせいで俺は、下にいる生徒たちの視線を気にする余裕もなくダン王子の腰に抱きついていた。










「は~、クソだるいわ……」

 騒ぎの収まらない野次馬の中で飛んでいく2人を見上げたユーリは、ダンを睨んで呟いた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

【完結】双子の兄が主人公で、困る

  *  ゆるゆ
BL
『きらきら男は僕のモノ』公言する、ぴんくの髪の主人公な兄のせいで、見た目はそっくりだが質実剛健、ちいさなことからコツコツとな双子の弟が、兄のとばっちりで断罪されかけたり、 悪役令息からいじわるされたり 、逆ハーレムになりかけたりとか、ほんとに困る──! 伴侶(予定)いるので。……って思ってたのに……! 本編、両親にごあいさつ編、完結しました! おまけのお話を、時々更新しています。 本編以外はぜんぶ、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり
BL
 帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。  着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。  凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。  撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。  帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。  独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。  甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。  ※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。 ★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!

動物アレルギーのSS級治療師は、竜神と恋をする

葉空
BL
SS級治療師、ルカ。それが今世の俺だ。 前世では、野犬に噛まれたことで狂犬病に感染し、死んでしまった。次に目が覚めると、異世界に転生していた。しかも、森に住んでるのは獣人で人間は俺1人?!しかも、俺は動物アレルギー持ち… でも、彼らの怪我を治療出来る力を持つのは治癒魔法が使える自分だけ… 優しい彼が、唯一触れられる竜神に溺愛されて生活するお話。

処理中です...