インテリヤクザは子守りができない

タタミ

文字の大きさ
5 / 51

性接待

しおりを挟む
 何やら弁解してくる皆木に呆れた視線を投げて、初瀬はソファから立ち上がった。素行については速攻でモノを盗むタイプではないと分かればいったん合格だ。今晩殺さずに済むならとりあえずそれでいい。皆木に家事能力があるとは思えないが明日以降基本的な家事はやらせよう。

(とはいえ、勝手に逃げ出してくれれば一番楽だ。明日の朝にはいなくなってねえかな)

 次のペットが用意されるまで一人でいられるならそれでいいなどと疲弊した願望を抱きながらキッチンに向かおうとすると、皆木に手を掴まれた。

「待った、フェラはしていい?あ、してもいいっすか?」

 少しドヤ顔で雑な敬語を使ってくる皆木に、初瀬は再び呆れた視線を投げた。

「お前まだふざけてんのか。殴られ足りねえみたいだな」
「ふざけてねーって!お礼っすよ、お礼。オレに飯も風呂もくれたし、こんないいマンションにも住めるみたいだし」

 初瀬はもう一度殴ろうとした手を下ろした。皆木はからかって言っているわけではないようで、顔つきは善行をしてやろうといったものだった。

「正直若頭の家に住めって言われた時は、ヤクぶっこまれてヤリ捨てされると思ったんだけどさ~。ハセさんヤクザにしてはいい人でしょ?エンリョしなくていいっすよ、変態プレイもしたけりゃサービスするし。客って変な性癖多いから慣れっ子」

 笑顔で何を言っているんだコイツは。
 言葉にするのも疲れて、初瀬はただ皆木にため息を吐いた。皆木は初瀬に近づいて腕にすり寄ってきたが、それでも無言で見るだけの初瀬に目を瞬いた。

「……あ~。もしかしてこれからヤク漬けにするつもりだった?」

 勝手な解釈をして気まずそうに頭をかくと、皆木は顎に手を当てて一丁前に思案顔をし始める。

「いや、まぁ、ハセさん若いし?ツラもいいし、殺されないなら別にいいっちゃいいんだけど……。オレ実は薬ほとんどヤッたことないんすよ。合わなかったらゲロとか吐きまくるかも──」

 思案顔でバカな想定を語った皆木の頭を、初瀬は結局再び殴った。

「いってえ!あのさ、ちょっとは加減して!?」
「勝手に俺をシャブ中の変態に仕立てあげんじゃねえよ。組は薬も捌いているが俺はやらない。そもそもお前にフェラされて何が嬉しいんだよ」
「今までは皆よろこんでたし……!お礼の定番だったんだよ、あんたが変なんだって!」

 お礼で男にフェラをされて喜ぶ、というか何かの対価に未成年に性接待を求めるような環境が当たり前だと主張され、初瀬は頭痛がしてきた。もちろん最悪な大人と愚かな子どもという組み合わせは何度も見てきたが、交流を持ったことはなかったのだ。その実態に色々と嫌気がさしてくる。

「お前がいた環境が狂ってんだよ。次俺に性接待しようとしたらマジで殺すぞ」
「セーセッタイって何すか」

 皆木の語彙の少なさに閉口しかけたが、ここで何も教えなければこれからも会話困難な場面が多々あるだろうと思い直す。皆木は馬鹿ではあるが今のところ殺さなければならないほどでもない。つまり皆木が逃げ出さない限り共同生活がある程度続くわけで、初瀬の話す内容をいちいち聞き返されていてはストレスが倍増する。

「……お前が男相手にしてたお礼全般のことだよ。俺にしようとするな、わかったな」
「え~!?それ以外オレなんにもできないんスけど。あ、カップ麺でいいなら作れるか……?」

 首をひねる皆木には家事全般期待できなそうで、本当にお荷物を受け取ってしまったと後悔しながら初瀬は深く息を吐いた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ヒメ様が賊にさらわれました!

はやしかわともえ
BL
BLです。 11月のBL大賞用の作品です。 10/31に全話公開予定です。 宜しくお願いします。

ジャスミン茶は、君のかおり

霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。 大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。 裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。 困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。 その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。

【完結】毎日きみに恋してる

藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました! 応援ありがとうございました! ******************* その日、澤下壱月は王子様に恋をした―― 高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。 見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。 けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。 けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど―― このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。

観念しようね、レモンくん

天埜鳩愛
BL
短編・22話で完結です バスケ部に所属するDKトリオ、溺愛双子兄弟×年下の従弟のキュンドキBLです 🍋あらすじ🍋 バスケ部員の麗紋(れもん)は高校一年生。 美形双子の碧(あお)と翠(みどり)に従兄として過剰なお世話をやかれ続けてきた。 共に通う高校の球技大会で従兄たちのクラスと激突! 自立と引き換えに従兄たちから提示されたちょっと困っちゃう 「とあること」を賭けて彼らと勝負を行いことに。 麗紋「絶対無理、絶対あの約束だけはむりむりむり!!!!」 賭けに負けたら大変なことに!!! 奮闘する麗紋に余裕の笑みを浮かべた双子は揺さぶりをかけてくる。 「れーちゃん、観念しようね?」 『双子の愛 溺愛双子攻アンソロジー』寄稿作品(2022年2月~2023年3月)です。

旦那様と僕

三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。 縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。 本編完結済。 『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。

【完結】君の穿ったインソムニア

古都まとい
BL
建設会社の事務として働く佐野純平(さの じゅんぺい)は、上司のパワハラによって眠れない日々を過ごしていた。後輩の勧めで病院を受診した純平は不眠症の診断を受け、処方された薬を受け取りに薬局を訪れる。 純平が訪れた薬局には担当薬剤師制度があり、純平の担当薬剤師となったのは水瀬隼人(みなせ はやと)という茶髪の明るい青年だった。 「佐野さんの全部、俺が支えてあげますよ?」 陽キャ薬剤師×不眠症会社員の社会人BL。

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間 ファンタジーしてます。 攻めが出てくるのは中盤から。 結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。 表紙絵 ⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101) 挿絵『0 琥』 ⇨からさね 様 X (@karasane03) 挿絵『34 森』 ⇨くすなし 様 X(@cuth_masi) ◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

【完結】まずは結婚からで。〜出会って0日、夫夫はじめました〜

小門内田
BL
ドケチで貧乏な大学生の瀧本 純也は、冷徹御曹司の諏訪 冬悟に交際0日、いや、初対面で結婚を迫られる!? 契約から始まった奇妙な結婚生活は、次第に互いの心を少しずつ変えていく。 “契約から本物へ―” 愛を知らない御曹司×愛されたがりの大学生の、立場も性格も正反対な二人が、不器用に心を通わせていく、ドタバタあり、じんわり甘い、ゆるやかな日常BL。 ※最初は少し殺伐としていますが、ゆっくりと変化していく物語です。 ※男同士の結婚が、一般的な世界線となります。 ※関係性をわかりやすくするため、「嫁」や「妻」といった表現を使用しております。 ※同タイトルのpixiv版とは、加筆・修正しておりますので、若干内容が変わっております。 予めご了承ください。 ※更新日時等はXにてお知らせいたします

処理中です...