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その後、セルジュは小屋に戻り、ミモレスは救出した王子と神官を泉に案内した。二人は泉にお祈りをしたあとミモレスに加護を付与してもらう。
「神官様、どうしてこのような場所に来られたのですか?」
「ああ…。理由はふたつあってな。ひとつはレオ王子の健康を祈るためだ」
ミモレスはちらりと王子を見た。顔色が悪く、足腰も弱いように見える。彼の体に手を当てて容態を診たが、怪我でも病気でもない。
「神官様。私では彼を治すことはできません…」
「……」
「血が…濃すぎます」
彼女の言葉に神官は深いため息をついた。
「…分かっている。王族は…王族の血を守るため、今まで親族内でしか婚姻を交わしてこなかった。他の血を拒絶した結果が…彼だ。生まれつき病弱で、体も顔も…歪んでしまっている。そのせいかお人柄も気弱で…」
王子は居心地が悪そうに二人の会話を聞いている。普段から耳にしている話なのか、外見や性格を悪く言われても何も言い返さず黙っているだけだった。神官はそんな彼の頭を撫でながら、ここに来たもうひとつの理由を話した。
「そこで、レオ王子の結婚相手は血縁関係にない人を選ぶことになった」
「え…?」
「だが国王の要求は厳しい。聖女で、生まれつき能力の高い血を望まれている。…それに今、国は民の暴動を受けている。国王と王妃だけではそれを収められん。そこで人望の厚い者が良いと…」
「神官様…まさか…」
「そうだ。わしがここに来た時点で普通なら分かるだろう。ミモレス、そなたを鑑定させていただく。王族にふさわしい魔法能力値と基礎能力値を持っているのなら、レオ王子と結婚してもらおう」
「なっ…。神官様、お待ちください!」
神官はミモレスの声を聞かず神具を取り出した。手のひら大の大きさがある水晶。逃げようとするミモレスの腕を掴み呪文を唱えた。水晶に彼女の能力値が映し出される。
「な…!なんだこの数値は…」
「神官様!おやめください!私は…!」
「能力値が高いと言われている王族ですら足元にも及ばない…。それどころか数百倍の差があるではないか…!それも、基礎能力値、魔法能力値どちらもだと?あれ?わしの水晶壊れたのかな?」
「私には心に決めた方がいます!結婚はいたしません!」
「ほう?もしやさきほどの男性かな?」
「…はい」
肯定の言葉を聞き、神官は王子に会話を聞かれないよう両耳に手を添えた。そしてミモレスの耳元で囁く。
「ミモレス。私の目をごまかせると思っているのか?彼は魔物だろう。それにあの顔…ヴァランス国のフィールディング元騎士ではないか」
「っ…!」
「彼はヴァランス国から抹殺命令が出されているな。捉えてかの国に差し出せば、白銀貨…何億枚もらえるんだったかな」
「神官様…それだけは…」
「だったら大人しくレオ王子の妃となりなさい。言うことを聞けばわしも悪いようにはせんよ」
「……」
王子は神官の手を振り払い、ミモレスの手を握った。
「聖女様…お願いします。僕と結婚してください。先ほどの戦いで、僕はあなたに恋に落ちてしまいました。必ず幸せにします。あなたの幸せが、僕の幸せです」
「……」
先祖の愚かな行為のせいで、なにひとつ恵まれなかった少年。彼が我儘を言ったことなど今までなかったのだろう。神官は父親のような優しい目で王子を見つめていた。
「聖女よ。王子は今まで欲しいものはなにひとつ与えられなかった。なにひとつ望まなかった。王子がはじめて望んだものは、そなただ。彼の願いを聞き入れてくれんか」
「…お時間をいただけますか…」
掠れた声でそう言うのが精いっぱいだった。王子と結婚しなければ、セルジュは国王に捕らえられヴァランス国に差し出される。それだけは阻止しないといけない。
彼女の心は、セルジュ以外と結ばれたくないと叫んでいる。だが、自分の気持ちを貫いて愛する人が殺されるくらいなら…愛する人の命を守り、そしてこの哀れな少年を少しでも幸せにしてあげたほうがいいのではないかと考えてしまう自分もいた。
「ああ、いいとも。…わしは少し散歩してくるのでな。聖女は王子の傍にいてやってくれるか」
「はい…」
神官はそう言い残してゆっくりとその場から去った。残されたミモレスとレオ王子は、泉のほとりに腰をおろしてぎこちない会話を交わした。
「神官様、どうしてこのような場所に来られたのですか?」
「ああ…。理由はふたつあってな。ひとつはレオ王子の健康を祈るためだ」
ミモレスはちらりと王子を見た。顔色が悪く、足腰も弱いように見える。彼の体に手を当てて容態を診たが、怪我でも病気でもない。
「神官様。私では彼を治すことはできません…」
「……」
「血が…濃すぎます」
彼女の言葉に神官は深いため息をついた。
「…分かっている。王族は…王族の血を守るため、今まで親族内でしか婚姻を交わしてこなかった。他の血を拒絶した結果が…彼だ。生まれつき病弱で、体も顔も…歪んでしまっている。そのせいかお人柄も気弱で…」
王子は居心地が悪そうに二人の会話を聞いている。普段から耳にしている話なのか、外見や性格を悪く言われても何も言い返さず黙っているだけだった。神官はそんな彼の頭を撫でながら、ここに来たもうひとつの理由を話した。
「そこで、レオ王子の結婚相手は血縁関係にない人を選ぶことになった」
「え…?」
「だが国王の要求は厳しい。聖女で、生まれつき能力の高い血を望まれている。…それに今、国は民の暴動を受けている。国王と王妃だけではそれを収められん。そこで人望の厚い者が良いと…」
「神官様…まさか…」
「そうだ。わしがここに来た時点で普通なら分かるだろう。ミモレス、そなたを鑑定させていただく。王族にふさわしい魔法能力値と基礎能力値を持っているのなら、レオ王子と結婚してもらおう」
「なっ…。神官様、お待ちください!」
神官はミモレスの声を聞かず神具を取り出した。手のひら大の大きさがある水晶。逃げようとするミモレスの腕を掴み呪文を唱えた。水晶に彼女の能力値が映し出される。
「な…!なんだこの数値は…」
「神官様!おやめください!私は…!」
「能力値が高いと言われている王族ですら足元にも及ばない…。それどころか数百倍の差があるではないか…!それも、基礎能力値、魔法能力値どちらもだと?あれ?わしの水晶壊れたのかな?」
「私には心に決めた方がいます!結婚はいたしません!」
「ほう?もしやさきほどの男性かな?」
「…はい」
肯定の言葉を聞き、神官は王子に会話を聞かれないよう両耳に手を添えた。そしてミモレスの耳元で囁く。
「ミモレス。私の目をごまかせると思っているのか?彼は魔物だろう。それにあの顔…ヴァランス国のフィールディング元騎士ではないか」
「っ…!」
「彼はヴァランス国から抹殺命令が出されているな。捉えてかの国に差し出せば、白銀貨…何億枚もらえるんだったかな」
「神官様…それだけは…」
「だったら大人しくレオ王子の妃となりなさい。言うことを聞けばわしも悪いようにはせんよ」
「……」
王子は神官の手を振り払い、ミモレスの手を握った。
「聖女様…お願いします。僕と結婚してください。先ほどの戦いで、僕はあなたに恋に落ちてしまいました。必ず幸せにします。あなたの幸せが、僕の幸せです」
「……」
先祖の愚かな行為のせいで、なにひとつ恵まれなかった少年。彼が我儘を言ったことなど今までなかったのだろう。神官は父親のような優しい目で王子を見つめていた。
「聖女よ。王子は今まで欲しいものはなにひとつ与えられなかった。なにひとつ望まなかった。王子がはじめて望んだものは、そなただ。彼の願いを聞き入れてくれんか」
「…お時間をいただけますか…」
掠れた声でそう言うのが精いっぱいだった。王子と結婚しなければ、セルジュは国王に捕らえられヴァランス国に差し出される。それだけは阻止しないといけない。
彼女の心は、セルジュ以外と結ばれたくないと叫んでいる。だが、自分の気持ちを貫いて愛する人が殺されるくらいなら…愛する人の命を守り、そしてこの哀れな少年を少しでも幸せにしてあげたほうがいいのではないかと考えてしまう自分もいた。
「ああ、いいとも。…わしは少し散歩してくるのでな。聖女は王子の傍にいてやってくれるか」
「はい…」
神官はそう言い残してゆっくりとその場から去った。残されたミモレスとレオ王子は、泉のほとりに腰をおろしてぎこちない会話を交わした。
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