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「はぁ…うるさすぎて集中できないな。休憩でもするか…」
観客席の歓声が医務室にまで届いてくる。セルジュは薬の調合を中断し、軽食をとるため食堂へ向かった。人混みが苦手なセルジュは対抗戦を一度も観客席で見たことがない。
廊下を歩いていると、一人の女子生徒が走ってきた。慌てているのかセルジュに目もくれず全速力でダッシュしている。彼女とすれ違ったとき、セルジュは目を疑った。
銀色の髪、灰色の瞳。そしてその顔と匂いはまるで…。
「ミモレス…?」
女子生徒にその声は聞こえなかったようで、バタバタと足音を立てながら競技場へ走って行った。セルジュはしばらく呆然と立ち尽くしていたが、彼女を探しにあとを追った。
彼女は観客席の一番前で選手に声援を送っていた。その声もミモレスにそっくりだった。
(彼女は誰だ?あんな生徒学院にいなかった。…そうか、転入生…。たしか、リングイール家の…。リングイール家とは一体何者だ?あんな…ミモレスそっくりの子がいるなんて…。まさか王族とつながりがあるのか…?)
「アーサー!!がんばってぇぇぇ!!」
(アーサー…。彼女の兄か。試合に出ているのか)
セルジュは競技場の中心で剣を振っている二人の少年に目をやった。一人はシリルという生徒、そしてもう一人はセルジュの知らない子だった。彼も銀色の髪をしている。
(二人とも銀色の髪をしている…。瞳の色は…遠すぎて分からない)
しばらく観戦していたが、ここにいてもモニカの後ろ姿と遠目のアーサーしか見ることができない。日を改めて二人に会おうと決めて、セルジュは医務室に戻った。
だが、その日のうちに二人と言葉を交わすことができた。試合で大怪我を負ったアーサーをモニカが医務室に連れてきたのだ。応急処置は取られていて傷は塞がっていたが、ひどい貧血を起こしている。
(じっくり見れば見るほど…モニカはミモレスにそっくりだ。それにアーサーも、男の子ながらミモレスの顔立ちに似ている。一体どういうことなんだ。…血だ。血で確かめたら分かる)
増血薬を作るためと嘯き、セルジュはアーサーに採血をした。注射器の先をペロリと舐める。
「うん。…ん?」
セルジュは首を傾げた。信じられないことが起こっている。
(ミモレスの血だ…!彼女の血と少しも違わない…!!アーサー…この子がミモレスの生まれ変わりだ…!!!なんということだ…なぜ…なぜリングイール家などという無名の貴族からミモレスの生まれ変わりが?!ど、どういうことだ?!)
冷たい視線を感じ、セルジュが我に返る。血を飲まれて固まっているアーサーと、びっくりして口を開けているモニカがセルジュをじっと見ていた。セルジュは慌ててごまかした。
「いやっ!今から増血薬を作るからその参考に舐めただけだからね?決して私が変な性癖の持ち主だなんて思わないように」
「は、はあ…」
「アーサーくんとモニカくんは兄妹だったね?モニカくん、君の血を分けてもらってもいいかい?」
「ええ。もちろん」
「ありがとう」
セルジュはモニカの腕にも注射器を刺した。採血をして、彼女の血も舐める。しばらく不思議そうに注射器を眺めたあと、二人に向き直りにこりと笑った。
「…うん。これなら良い増血薬が作れるよ」
「お願いします」
薬素材とモニカの血を混ぜ、セルジュ特製の増血薬が出来上がった。それに魔法をかけ、圧縮して小さな錠剤にする。手渡されたものをアーサーが飲んだ瞬間、彼の貧血があっという間に治った。
「わあ、すごい!貧血がなくなった!」
「だろう?私の薬はなかなかすごいんだよ」
「ありがとうございます!変な人だなんて思っちゃってごめんなさい!」
「ああ、やっぱり変な人って思われちゃってたか。よく言われるから慣れているけどね。また何かあったらいつでも医務室へおいで」
「はい!」
すっかり元気になったアーサーは、モニカの手を引き医務室を出て行った。廊下から二人の「さっきの薬すごかったねー!!」という可愛らしい声が聞こえる。セルジュは余っていたアーサーとモニカの血を交互に舐めた。興奮して瞳孔が細くなってしまっている。
「アーサーとモニカの血は…全く同じだ…。どちらもミモレスの血を受け継いでいる…!兄妹でここまで血がおなじことなんてありえない。ミモレスは魂も能力も大きすぎたんだ…ひとつの体ではおさまりきらなかったんだ…!彼らは兄妹なんかじゃない…双子だ…」
リングイール家という聞いたことのない貴族を名乗る、ミモレスの血を受け継いだ双子。そこから考えられるのは…。
「8年前に死んだとされている第一王子と第二王女…。彼らは生きていたんだ…。アーサーとモニカは…アウス王子とモリア王女だ…。正体を隠すため、家名、名前、年齢を偽り今まで生きてきたのか…」
二人の血が入っていた注射器を握りしめ、セルジュは嗚咽を漏らした。200年、この時を待っていた。200年もの間…彼はこの血を探し求めていた。
「ミモレス…ミモレス…!!やっと…やっとだミモレス…!やっと君を見つけたよ…。君に話したいことがたくさんある…。君に紹介したい子がいる…!私のことを父と呼んでくれる子のことを…君に話したい…!今度こそ君の願いを叶えるよ…私と君とロイで、これからは平民として暮らそう…君が医者で、僕が薬師をするんだ…。田舎に小さい家を建てよう…。そこで幸せに生きて行こう…」
観客席の歓声が医務室にまで届いてくる。セルジュは薬の調合を中断し、軽食をとるため食堂へ向かった。人混みが苦手なセルジュは対抗戦を一度も観客席で見たことがない。
廊下を歩いていると、一人の女子生徒が走ってきた。慌てているのかセルジュに目もくれず全速力でダッシュしている。彼女とすれ違ったとき、セルジュは目を疑った。
銀色の髪、灰色の瞳。そしてその顔と匂いはまるで…。
「ミモレス…?」
女子生徒にその声は聞こえなかったようで、バタバタと足音を立てながら競技場へ走って行った。セルジュはしばらく呆然と立ち尽くしていたが、彼女を探しにあとを追った。
彼女は観客席の一番前で選手に声援を送っていた。その声もミモレスにそっくりだった。
(彼女は誰だ?あんな生徒学院にいなかった。…そうか、転入生…。たしか、リングイール家の…。リングイール家とは一体何者だ?あんな…ミモレスそっくりの子がいるなんて…。まさか王族とつながりがあるのか…?)
「アーサー!!がんばってぇぇぇ!!」
(アーサー…。彼女の兄か。試合に出ているのか)
セルジュは競技場の中心で剣を振っている二人の少年に目をやった。一人はシリルという生徒、そしてもう一人はセルジュの知らない子だった。彼も銀色の髪をしている。
(二人とも銀色の髪をしている…。瞳の色は…遠すぎて分からない)
しばらく観戦していたが、ここにいてもモニカの後ろ姿と遠目のアーサーしか見ることができない。日を改めて二人に会おうと決めて、セルジュは医務室に戻った。
だが、その日のうちに二人と言葉を交わすことができた。試合で大怪我を負ったアーサーをモニカが医務室に連れてきたのだ。応急処置は取られていて傷は塞がっていたが、ひどい貧血を起こしている。
(じっくり見れば見るほど…モニカはミモレスにそっくりだ。それにアーサーも、男の子ながらミモレスの顔立ちに似ている。一体どういうことなんだ。…血だ。血で確かめたら分かる)
増血薬を作るためと嘯き、セルジュはアーサーに採血をした。注射器の先をペロリと舐める。
「うん。…ん?」
セルジュは首を傾げた。信じられないことが起こっている。
(ミモレスの血だ…!彼女の血と少しも違わない…!!アーサー…この子がミモレスの生まれ変わりだ…!!!なんということだ…なぜ…なぜリングイール家などという無名の貴族からミモレスの生まれ変わりが?!ど、どういうことだ?!)
冷たい視線を感じ、セルジュが我に返る。血を飲まれて固まっているアーサーと、びっくりして口を開けているモニカがセルジュをじっと見ていた。セルジュは慌ててごまかした。
「いやっ!今から増血薬を作るからその参考に舐めただけだからね?決して私が変な性癖の持ち主だなんて思わないように」
「は、はあ…」
「アーサーくんとモニカくんは兄妹だったね?モニカくん、君の血を分けてもらってもいいかい?」
「ええ。もちろん」
「ありがとう」
セルジュはモニカの腕にも注射器を刺した。採血をして、彼女の血も舐める。しばらく不思議そうに注射器を眺めたあと、二人に向き直りにこりと笑った。
「…うん。これなら良い増血薬が作れるよ」
「お願いします」
薬素材とモニカの血を混ぜ、セルジュ特製の増血薬が出来上がった。それに魔法をかけ、圧縮して小さな錠剤にする。手渡されたものをアーサーが飲んだ瞬間、彼の貧血があっという間に治った。
「わあ、すごい!貧血がなくなった!」
「だろう?私の薬はなかなかすごいんだよ」
「ありがとうございます!変な人だなんて思っちゃってごめんなさい!」
「ああ、やっぱり変な人って思われちゃってたか。よく言われるから慣れているけどね。また何かあったらいつでも医務室へおいで」
「はい!」
すっかり元気になったアーサーは、モニカの手を引き医務室を出て行った。廊下から二人の「さっきの薬すごかったねー!!」という可愛らしい声が聞こえる。セルジュは余っていたアーサーとモニカの血を交互に舐めた。興奮して瞳孔が細くなってしまっている。
「アーサーとモニカの血は…全く同じだ…。どちらもミモレスの血を受け継いでいる…!兄妹でここまで血がおなじことなんてありえない。ミモレスは魂も能力も大きすぎたんだ…ひとつの体ではおさまりきらなかったんだ…!彼らは兄妹なんかじゃない…双子だ…」
リングイール家という聞いたことのない貴族を名乗る、ミモレスの血を受け継いだ双子。そこから考えられるのは…。
「8年前に死んだとされている第一王子と第二王女…。彼らは生きていたんだ…。アーサーとモニカは…アウス王子とモリア王女だ…。正体を隠すため、家名、名前、年齢を偽り今まで生きてきたのか…」
二人の血が入っていた注射器を握りしめ、セルジュは嗚咽を漏らした。200年、この時を待っていた。200年もの間…彼はこの血を探し求めていた。
「ミモレス…ミモレス…!!やっと…やっとだミモレス…!やっと君を見つけたよ…。君に話したいことがたくさんある…。君に紹介したい子がいる…!私のことを父と呼んでくれる子のことを…君に話したい…!今度こそ君の願いを叶えるよ…私と君とロイで、これからは平民として暮らそう…君が医者で、僕が薬師をするんだ…。田舎に小さい家を建てよう…。そこで幸せに生きて行こう…」
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