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学院編:オーヴェルニュ侯爵からの手紙
【95話】推察
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「俺たちが一番心配してるのは王族だ。そこは分かってるだろうカトリナ」
カミーユが脚を組みながらカトリナに問いかけた。カトリナは頷いて答える。
「ええ。失踪事件が王族が企てた罠の可能性。在籍している王子と姫の危険性。学院内に王族の手の者がいる可能性ね」
「そう。それについて詳しく聞かせて」
「まず、学院内に王族の手の者がいる可能性はほぼゼロよ。あの子たちが国王の前に現れたのは3年前。この3年間で学院内に入ってきた新しい大人は一人だけ。教師と使用人含めてね。その一人は遠方の他国から来た人だから国王と関わりはないはず。それ以前から学院にいる人たちも国王と接点のない人たちばかりだわ」
「本当に全員のことを把握できてる?使用人だって何百人といるでしょ」
「もちろん。全員の顔と名前、好きな食べ物と苦手な食べ物まで言えるわよ」
「…逆にこええよ」
ジトっとした目でカミーユがカトリナを見た。それを無視して彼女は話を続ける。
「学院が建てられたときに、もともとオーヴェルニュ家で仕えていた使用人を100人近く派遣させたらしいわ。それから子孫が代々使用人としての仕事を受け継いでいるの。彼らは学院で生まれ育って今に至るわ。一度も学院から出たことがない。王族に付け入られる隙はないわ」
「なるほどな。だったらちっとは安心してもいいかもしれねえ」
「じゃあ次。ウィルク王子とジュリア姫の危険性よ。噂によると彼らは国王と王妃からあまり興味を持たれていないらしいわ。ほとんど会話もしたことないんじゃないかしら」
それに関してはカミーユとジルが反論した。
「ああ?だが俺が聞いた噂では、国王はウィルク王子が殺せとお願いした部下や貴族をほいほい処刑してるって」
「僕も、王妃はジュリア姫がおねだりした物はなんでも買い与えるって聞いてるよ」
「あたしは、王子と姫は伝書インコで国王とコミュニケーション取ってるって聞いたことあるぞ!」
「どれも正解よ。愛情の代わりに望みを叶えているだけ。王子と姫に国王と王妃が直接会話することはほとんどないの。だから二人に伝書インコを持たせ、欲しいもの、してほしいことがあればインコを飛ばさせる。インコを受け取るのは国王や王妃ではなくて彼らの側近よ。側近は国王に、インコの伝言は何であっても実行しろと命令されている。…という噂」
「んな無茶苦茶な噂、信じられっかよ…」
呆れた、という顔でカミーユは肩をすくめた。ジルも苦笑いをしている。リアーナは「へー?ほーん?王族のやることって変わってんなぁ」と首を傾げている。そんな3人にカトリナは「チッチ」と舌を鳴らして指を振った。
「火のない所に煙は立たぬ、よ。どこまで本当かは分からないけど、少なくとも彼らにアウス王子とモリア姫が実は生きているなんて話をしている可能性は低いと思わない?どの噂話をとっても彼らに信頼関係なんてなさそうなんだもの。ましてやウィルク王子やジュリア姫に彼らの暗殺命令を出しているわけがない。王族が自ら手を汚すなんて、ありえないじゃない」
「王子と姫が自分で暗殺しなくたって、それこそインコであいつらを殺すように伝言飛ばされたら終わりじゃねーか!」
「そうねえ。そうなると終わるわね。そこは上手にあの子たちが立ち回らないといけないわ」
「学院内の情報についてほとんどが確証のないもので不安になるけど。王子と姫に関しては特に説得力に欠けてるね。僕は安心できてないよカトリナ」
「あなたならそう言うと思ってたわジル。でもこれ以上の情報は出てこないのよ。なにせ国王の城の中のことなんですもの。確かな情報なんて手に入れられないわ。でも、今王子と姫は学院内にいる。あとでお父様に探らせておくわ。さりげなくね」
「そうしてくれると助かる」
ジルはそう言いながら冷めたコーヒーを口にした。カミーユも「これに関しては侯爵の返答待ちだな」と保留にしたようだ。
「残りはこの誘拐事件が国王の企ての可能性。私は絶対にないと確信しているのだけれど。少なくともその可能性がほとんどないことは、今までの話の中でも分かるでしょう?」
「誘拐事件の犯人は学院関係者の可能性が高い。学院関係者に王族と関わりのあるやつはいないと言っていい。つまり王族は関係ないと」
「全部はっきりしねーな!」
「それに、犯人が生徒の可能性もある。国王に命じられた貴族の子どもが犯行に及んでいる可能性もあるよね」
「確かに可能性はあるわ。でも、あんなに強力な魔女を仕向けても死ななかったあの子たちに、わざわざたいして強くもない貴族の子どもを仕向けるかしら?それにアーサーとモニカが来るかどうかも分からない北国の学院でそれを行う意図は?国王は彼らがリングイール家を名乗って貴族のふりをしていることは知らないはずよ。そんな彼らを、貴族しか通えない学院で待ち受けるなんて回りくどすぎる。たとえ私とあの子たちの関係性が深いと知っていてもね。いま国王にそんなことしている暇はないはずだし」
カトリナの言い分に、ジルはこれに関しては納得したようだった。
「確かにね。来るかどうかも分からないあの子たちのためにそこまでするんだったら、僕だったら他の手を考えるね。あと、そんなことしている暇がないと思う理由を教えて」
「魔女の一件で、国王は私たち…カミーユのパーティの存在を疎ましく思い始めているはず。だって私たちのせいであの子たちが生き延びてしまったんだもの。私だったらあの子たちより先にS級冒険者を始末したいわ。もしくは私たちとあの子たちの両方まとめてね」
「はあ?!俺らまで国王に狙われてんのか?!」
「可能性はおおいにあるわ。というより本当にあの子たちを始末したいならそうするべきよね。だって鬱陶しいじゃない。あの子たちだけだったら殺せていたはずなのに、私たちのせいで殺せなかったんだから。今後も邪魔をするだろうって思うでしょう。だったら先に私たちを殺さないとね。…それに、私たちは国王が派遣した監視役を一人殺しているのよ。目をつけられたって不思議じゃないわ」
その言葉を聞いたリアーナは、国王の城があるはずの北の方角を向いて舌を出した。
「へへーん!!ばーかばーか!!あたしらを殺そうなんて100年はええ!!こちとらS級冒険者だぞ!!」
カトリナの話をじっと聞いていたジルが顎に手を置いて考え込んだ。しばらくしてカトリナの目を見て頷く。
「…なるほど。いま彼らは僕たちを始末するための舞台を念入りに準備しているわけだ」
「そうよ。…カミーユ、私たちでさえ命の危険を伴うところはどこ?」
急に話を振られたカミーユはビクッとしてから天井を見た。葉巻の煙をふかしながら、ひとつだけ思い当たったところを口にする。
「…Sランクダンジョンか」
「ご名答。それもただのSランクダンジョンじゃないわ。知ってる?貴族の裏オークションでは魔物の魂魄が売られているのよ。世界中の貴族の間でね。時にはSSSクラス級の魔物も出回るらしいわ」
「おいおいおい…SSSって…」
「ドラゴン、魔人、神獣ね」
「ひぇっ、今鳥肌立った!」
「おそらく今国王は、私たちの首を落とすために世界中の魂魄を買い漁っているでしょうね。私たちが手に負えないほどの魔物をSランクダンジョンに詰め込んで、指定依頼をするつもりよ。受けても死、拒否しても処刑のね」
そう言いながらカトリナがニッと笑った。ジルは「なるほど」と呟き、先ほどからカトリナが失踪事件が王族の罠ではないと言い切っていた理由の答え合わせをした。
「逆に言えば、国王は今その準備に忙しいはずだ。だからこんなバクチみたいな罠をアーサーとモニカに張る暇なんてない。そうだねカトリナ」
「そう言うことよォ。どう?説得力があった?」
「うん。これは今までで一番しっくり来たよ」
「ありがとう」
謎が解けてスッキリした様子のジルと、そんな彼をニコニコと眺めているカトリナ。話題と表情がかみ合っていない二人をカミーユとリアーナが目を細めて見ていた。
「お前ら、なんでそんな平然としていられる?国王に命狙われてるんだぞ?」
「「アーサーとモニカが命を狙われるよりましだから」」
「確かに」
「確かにぃ!!」
「正しくは、"今は"あの子たちに危険が及ばないってだけよ。どっちにしたっていつかは必ず恐ろしいことが起こる。Sランクダンジョンの指定依頼にアーサーとモニカの名前が入っている可能性もあるんだから。まあそれは今後ゆっくり考えていくしかないわ。とにかく今は学院のことよ。学院内に国王の罠は張られていない。それだけは確かよ。…私の推察が正しければだけど」
「僕は納得した」
「…俺も分かった」
「あたしもオッケーだ」
「ありがとう、みんな」
国王の件に関して一通り話終わったので、ジルが失踪事件に話を戻した。
「カトリナ。誘拐事件に話を戻すけど、君は教師や使用人のことを信用しているのに、その中に犯人がいると言っている。矛盾していないか?」
「私は"彼らの中に王族の手の者はいない"と言ったの。確かにみないい人たちで私は好きよ。でも心から信用しているのは警護している門番たちと副校長のビアンナだけ。教師や使用人たちはもちろん、生徒たちだって犯人である可能性はおおいにあると思っているわ」
「なるほど。分かったよ」
カトリナは軽く手を叩き、いつものゆったりした口調とおっとりした表情に戻った。
「私からの話は以上よォ。みんなが良ければ、今からお父様に詳細を聞きに行きましょう。この手紙も数日前の情報だし。あと、捜査の打ち合わせにねェ」
「…そうだな。国王と関係のない事件と言っても、危険なことには変わりねえ。あいつらに捜査を任せるかどうかは侯爵の話を聞いてからだ。いくぞ、お前ら」
「うぃー!!」
「うん、行こう」
S級冒険者は馬車に飛び乗りヴィラバンデ地区へ向かった。彼らがオーヴェルニュ家に到着した時には、さらに3人の生徒が姿を消していた。予想以上に犯行のスパンが短く、そして人数がだんだんと増えていることに危機感を覚えたカミーユたちに焦りの色が見えた。
侯爵にあらかじめ伝書インコを飛ばしてウィルク王子とジュリア姫について探ってもらっていたが、アウスとモリアについては教科書レベルの知識しかないことを副校長のビアンナを通じて確認できていた。これで王族が学院内で双子を襲う危険性はないと判断したカミーユたちは、緊急を要することもありアーサーとモニカに潜入捜査の依頼をすることに決めた。急いで指定依頼の準備をしたのち、その日のうちにオーヴェルニュ家を発ち、全速力で馬車を走らせポントワーブへ戻った。5日間満足に眠っていないにもかかわらず、彼らはその足で双子の家のベルを鳴らした。
カミーユが脚を組みながらカトリナに問いかけた。カトリナは頷いて答える。
「ええ。失踪事件が王族が企てた罠の可能性。在籍している王子と姫の危険性。学院内に王族の手の者がいる可能性ね」
「そう。それについて詳しく聞かせて」
「まず、学院内に王族の手の者がいる可能性はほぼゼロよ。あの子たちが国王の前に現れたのは3年前。この3年間で学院内に入ってきた新しい大人は一人だけ。教師と使用人含めてね。その一人は遠方の他国から来た人だから国王と関わりはないはず。それ以前から学院にいる人たちも国王と接点のない人たちばかりだわ」
「本当に全員のことを把握できてる?使用人だって何百人といるでしょ」
「もちろん。全員の顔と名前、好きな食べ物と苦手な食べ物まで言えるわよ」
「…逆にこええよ」
ジトっとした目でカミーユがカトリナを見た。それを無視して彼女は話を続ける。
「学院が建てられたときに、もともとオーヴェルニュ家で仕えていた使用人を100人近く派遣させたらしいわ。それから子孫が代々使用人としての仕事を受け継いでいるの。彼らは学院で生まれ育って今に至るわ。一度も学院から出たことがない。王族に付け入られる隙はないわ」
「なるほどな。だったらちっとは安心してもいいかもしれねえ」
「じゃあ次。ウィルク王子とジュリア姫の危険性よ。噂によると彼らは国王と王妃からあまり興味を持たれていないらしいわ。ほとんど会話もしたことないんじゃないかしら」
それに関してはカミーユとジルが反論した。
「ああ?だが俺が聞いた噂では、国王はウィルク王子が殺せとお願いした部下や貴族をほいほい処刑してるって」
「僕も、王妃はジュリア姫がおねだりした物はなんでも買い与えるって聞いてるよ」
「あたしは、王子と姫は伝書インコで国王とコミュニケーション取ってるって聞いたことあるぞ!」
「どれも正解よ。愛情の代わりに望みを叶えているだけ。王子と姫に国王と王妃が直接会話することはほとんどないの。だから二人に伝書インコを持たせ、欲しいもの、してほしいことがあればインコを飛ばさせる。インコを受け取るのは国王や王妃ではなくて彼らの側近よ。側近は国王に、インコの伝言は何であっても実行しろと命令されている。…という噂」
「んな無茶苦茶な噂、信じられっかよ…」
呆れた、という顔でカミーユは肩をすくめた。ジルも苦笑いをしている。リアーナは「へー?ほーん?王族のやることって変わってんなぁ」と首を傾げている。そんな3人にカトリナは「チッチ」と舌を鳴らして指を振った。
「火のない所に煙は立たぬ、よ。どこまで本当かは分からないけど、少なくとも彼らにアウス王子とモリア姫が実は生きているなんて話をしている可能性は低いと思わない?どの噂話をとっても彼らに信頼関係なんてなさそうなんだもの。ましてやウィルク王子やジュリア姫に彼らの暗殺命令を出しているわけがない。王族が自ら手を汚すなんて、ありえないじゃない」
「王子と姫が自分で暗殺しなくたって、それこそインコであいつらを殺すように伝言飛ばされたら終わりじゃねーか!」
「そうねえ。そうなると終わるわね。そこは上手にあの子たちが立ち回らないといけないわ」
「学院内の情報についてほとんどが確証のないもので不安になるけど。王子と姫に関しては特に説得力に欠けてるね。僕は安心できてないよカトリナ」
「あなたならそう言うと思ってたわジル。でもこれ以上の情報は出てこないのよ。なにせ国王の城の中のことなんですもの。確かな情報なんて手に入れられないわ。でも、今王子と姫は学院内にいる。あとでお父様に探らせておくわ。さりげなくね」
「そうしてくれると助かる」
ジルはそう言いながら冷めたコーヒーを口にした。カミーユも「これに関しては侯爵の返答待ちだな」と保留にしたようだ。
「残りはこの誘拐事件が国王の企ての可能性。私は絶対にないと確信しているのだけれど。少なくともその可能性がほとんどないことは、今までの話の中でも分かるでしょう?」
「誘拐事件の犯人は学院関係者の可能性が高い。学院関係者に王族と関わりのあるやつはいないと言っていい。つまり王族は関係ないと」
「全部はっきりしねーな!」
「それに、犯人が生徒の可能性もある。国王に命じられた貴族の子どもが犯行に及んでいる可能性もあるよね」
「確かに可能性はあるわ。でも、あんなに強力な魔女を仕向けても死ななかったあの子たちに、わざわざたいして強くもない貴族の子どもを仕向けるかしら?それにアーサーとモニカが来るかどうかも分からない北国の学院でそれを行う意図は?国王は彼らがリングイール家を名乗って貴族のふりをしていることは知らないはずよ。そんな彼らを、貴族しか通えない学院で待ち受けるなんて回りくどすぎる。たとえ私とあの子たちの関係性が深いと知っていてもね。いま国王にそんなことしている暇はないはずだし」
カトリナの言い分に、ジルはこれに関しては納得したようだった。
「確かにね。来るかどうかも分からないあの子たちのためにそこまでするんだったら、僕だったら他の手を考えるね。あと、そんなことしている暇がないと思う理由を教えて」
「魔女の一件で、国王は私たち…カミーユのパーティの存在を疎ましく思い始めているはず。だって私たちのせいであの子たちが生き延びてしまったんだもの。私だったらあの子たちより先にS級冒険者を始末したいわ。もしくは私たちとあの子たちの両方まとめてね」
「はあ?!俺らまで国王に狙われてんのか?!」
「可能性はおおいにあるわ。というより本当にあの子たちを始末したいならそうするべきよね。だって鬱陶しいじゃない。あの子たちだけだったら殺せていたはずなのに、私たちのせいで殺せなかったんだから。今後も邪魔をするだろうって思うでしょう。だったら先に私たちを殺さないとね。…それに、私たちは国王が派遣した監視役を一人殺しているのよ。目をつけられたって不思議じゃないわ」
その言葉を聞いたリアーナは、国王の城があるはずの北の方角を向いて舌を出した。
「へへーん!!ばーかばーか!!あたしらを殺そうなんて100年はええ!!こちとらS級冒険者だぞ!!」
カトリナの話をじっと聞いていたジルが顎に手を置いて考え込んだ。しばらくしてカトリナの目を見て頷く。
「…なるほど。いま彼らは僕たちを始末するための舞台を念入りに準備しているわけだ」
「そうよ。…カミーユ、私たちでさえ命の危険を伴うところはどこ?」
急に話を振られたカミーユはビクッとしてから天井を見た。葉巻の煙をふかしながら、ひとつだけ思い当たったところを口にする。
「…Sランクダンジョンか」
「ご名答。それもただのSランクダンジョンじゃないわ。知ってる?貴族の裏オークションでは魔物の魂魄が売られているのよ。世界中の貴族の間でね。時にはSSSクラス級の魔物も出回るらしいわ」
「おいおいおい…SSSって…」
「ドラゴン、魔人、神獣ね」
「ひぇっ、今鳥肌立った!」
「おそらく今国王は、私たちの首を落とすために世界中の魂魄を買い漁っているでしょうね。私たちが手に負えないほどの魔物をSランクダンジョンに詰め込んで、指定依頼をするつもりよ。受けても死、拒否しても処刑のね」
そう言いながらカトリナがニッと笑った。ジルは「なるほど」と呟き、先ほどからカトリナが失踪事件が王族の罠ではないと言い切っていた理由の答え合わせをした。
「逆に言えば、国王は今その準備に忙しいはずだ。だからこんなバクチみたいな罠をアーサーとモニカに張る暇なんてない。そうだねカトリナ」
「そう言うことよォ。どう?説得力があった?」
「うん。これは今までで一番しっくり来たよ」
「ありがとう」
謎が解けてスッキリした様子のジルと、そんな彼をニコニコと眺めているカトリナ。話題と表情がかみ合っていない二人をカミーユとリアーナが目を細めて見ていた。
「お前ら、なんでそんな平然としていられる?国王に命狙われてるんだぞ?」
「「アーサーとモニカが命を狙われるよりましだから」」
「確かに」
「確かにぃ!!」
「正しくは、"今は"あの子たちに危険が及ばないってだけよ。どっちにしたっていつかは必ず恐ろしいことが起こる。Sランクダンジョンの指定依頼にアーサーとモニカの名前が入っている可能性もあるんだから。まあそれは今後ゆっくり考えていくしかないわ。とにかく今は学院のことよ。学院内に国王の罠は張られていない。それだけは確かよ。…私の推察が正しければだけど」
「僕は納得した」
「…俺も分かった」
「あたしもオッケーだ」
「ありがとう、みんな」
国王の件に関して一通り話終わったので、ジルが失踪事件に話を戻した。
「カトリナ。誘拐事件に話を戻すけど、君は教師や使用人のことを信用しているのに、その中に犯人がいると言っている。矛盾していないか?」
「私は"彼らの中に王族の手の者はいない"と言ったの。確かにみないい人たちで私は好きよ。でも心から信用しているのは警護している門番たちと副校長のビアンナだけ。教師や使用人たちはもちろん、生徒たちだって犯人である可能性はおおいにあると思っているわ」
「なるほど。分かったよ」
カトリナは軽く手を叩き、いつものゆったりした口調とおっとりした表情に戻った。
「私からの話は以上よォ。みんなが良ければ、今からお父様に詳細を聞きに行きましょう。この手紙も数日前の情報だし。あと、捜査の打ち合わせにねェ」
「…そうだな。国王と関係のない事件と言っても、危険なことには変わりねえ。あいつらに捜査を任せるかどうかは侯爵の話を聞いてからだ。いくぞ、お前ら」
「うぃー!!」
「うん、行こう」
S級冒険者は馬車に飛び乗りヴィラバンデ地区へ向かった。彼らがオーヴェルニュ家に到着した時には、さらに3人の生徒が姿を消していた。予想以上に犯行のスパンが短く、そして人数がだんだんと増えていることに危機感を覚えたカミーユたちに焦りの色が見えた。
侯爵にあらかじめ伝書インコを飛ばしてウィルク王子とジュリア姫について探ってもらっていたが、アウスとモリアについては教科書レベルの知識しかないことを副校長のビアンナを通じて確認できていた。これで王族が学院内で双子を襲う危険性はないと判断したカミーユたちは、緊急を要することもありアーサーとモニカに潜入捜査の依頼をすることに決めた。急いで指定依頼の準備をしたのち、その日のうちにオーヴェルニュ家を発ち、全速力で馬車を走らせポントワーブへ戻った。5日間満足に眠っていないにもかかわらず、彼らはその足で双子の家のベルを鳴らした。
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