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学院編:オヴェルニー学院
【107話】ジュリア王女の恋
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その後もアーサーは次々と勝ち進んでいった。ダフ戦のあとに2回戦ったが、ダフより強い人はいなかった。ダフに勝った相手と言うことでローズ寮の生徒は萎縮して早々にギブアップをした。残りの選手も、重い剣というハンデがあったとしても簡単に勝つことができた。
《なんとおおお!!またもやリリー寮、アーサー選手の勝利です!!》
《さすがダフ選手に勝っただけありますね。これはもしかするともしかするんじゃないですか?》
「なんであいつ、あの剣を軽々と振り回してるんだ…?!」
ウィルク王子は控室でアーサーの戦いを覗きながらギリギリと指の爪を噛んだ。ダフ戦では苦戦した剣もしばらく振っているうちに慣れてしまい、多少動きは鈍くなるものの生徒相手では問題ないほど滑らかに動けるようになっていた。
観客席では男子も女子もアーサーの快進撃に大興奮だ。特に女子たちは突然現れたダークホースに釘付けになっている。
「きゃー!アーサーすごーい!!」
《さすがアーサーだな》
モニカ(と杖)はライラ、チャド、ノアと一緒に観戦していた。モニカはもちろんのこと、他の3人もアーサーの戦いぶりに大騒ぎしている。モニカはライラの大声を初めて聞いた。
「すっ、すごいねモニカ!あ、あなたのお兄さん、本当にすごいっ!」
「まじでアーサーすげえ!!あいつこんな強かったのかよ!!すげー!!」
「あのちっこい体であんなでっかい相手倒すなんてなあ!!かっけぇー!!」
「でっしょぉ?!私のお兄ちゃんはすっごくすごいんだからねっ!!最高なんだからぁ!」
「出たよモニカのアーサー大好きタイムが」
「はぁー俺らがアーサーに敵う気がしねえなあ」
4人でおおはしゃぎしながらアーサーの応援をしているモニカの傍に、さりげなくジュリア王女が座った。それに気付いたモニカはびくりと体をこわばらせる。ライラも「ひゃぅぅっ」と呻きながらチャドにしがみついた。ジュリア王女は「ねえ」とモニカに声をかける。
「は、はい!どうされましたか?!」
「あなたのお兄さま、素敵ね」
「えっ?」
「剣術はもちろんのこと、戦術にも長けているわ。強くて、頭がいいのね」
王女に兄を褒められて、モニカはぱぁっと顔を輝かせた。大きく頷きながら興奮気味にアーサーのことを自慢した。
「はい!そうなんです!アーサーは最高なんです!」
「その上あの顔立ち…素敵」
「えっと…ジュリア王女…?」
ほぅ…とアーサーの姿を見つめるジュリア王女に、モニカは嫌な予感がした。
「モニカ。アーサー様のこと色々教えてくれないかしら?」
「アーサー…様…?」
「好きな食べ物とか、好きなブランドとか、好きな…女の子のタイプとか」
モニカは脳内で絶叫した。
(やばいこれは恋に落ちてる顔だわ!!!妹にアーサー取られちゃう!!やだやだやだ!!アーサーは私のものだもん!!…そう言えばなんだかこのあたりにいる女子みんなアーサーアーサー騒いでない?!え?!もしかしてアーサーってすごくモテてるんじゃないの?!どうしようどうしよう!!)
「ねえ、聞いてる?出来損ないの子猫ちゃん?」
「あっ!はい!申し訳ありません!あははは、えっと、すみません、私はトイレに…」
「あっ!ちょっと!!モニカ!アーサー様のことを教えなさい!!ねえ!モニカ!!」
ジュリア王女の声を背中に受けながら、モニカはそそくさとその場を離れた。横目で見ていた3人がコソコソと「逃げたなモニカ」「ああ、兄ちゃん取られたくなくて逃げた」「モ、モニカ行かないでぇヒィィイ」と耳打ちしている。ジュリア王女は「ふんっ!」と不機嫌そうにしていたが、去っていくのかと思いきやその席に居座ってライラたちと一緒に観戦を始めた。王女の隣で座っていたライラは「チャド、せ、席を代わってぇぇぇっ!!」と訴えていた。
観客席の間をぬって外に出るまでも、女子生徒がアーサーの話で盛り上がっている会話が聞こえてきた。モニカは顔を真っ青にして控室に向かった。
「あれ?どうしたのモニカ」
息をきらせたモニカが控室に飛び込んでくる。ぼんやりとしているアーサーの手を引き、控室の外へ出た。
「アーサー、それ以上目立たないで…」
「え?目立ってるかなあ?」
「すごく目立ってる!明らかに一人だけ動きおかしいし!」
「おかしい…?あー、また動きのクセが出ちゃってた?カミーユに何度も注意されてたんだよね。直ったと思ってたんだけどなあ」
「逆よ逆!!洗練されすぎるの!綺麗すぎるの!!一挙一動がかっこいいの!!」
「え…なんだよモニカ、照れるなあ」
アーサーはへへっと笑い頭を掻いた。言いたいことが伝わらないモニカは「んもぉ!」と地団駄を踏む。
「あれ、モニカ、どうしたの?僕に会いに来てくれたのかな?」
ひょこっと控室のドアからウィルク王子が顔を出す。アーサーは思わずモニカを自分の背後に隠した。
「おいおいアーサー…。僕は今モニカと話してるんだよ。そこをどいてくれないか」
「僕のことはお気にならさらいでください」
「お前がそこにいたらモニカの可愛い顔が見えないじゃないか!どきたまえ!」
「あああ~もう、妹弟揃って…」
モニカはうんざりしたように呟いた。ウィルク王子はモニカに、ジュリア王女はアーサーに恋に落ちてしまった。ただでさえ複雑な関係なのに余計ややこしくなってしまう。前途多難にもほどがある。
◇◇◇
ウィルク王子とジュリア王女から逃げるために、モニカはリリー寮の談話室に戻った。誰もいないのを確認してから杖を取り出し歌を歌う。暇つぶしに光魔法で無数のピンク色の光を出して遊んだ。
「え…」
背後で何かが床に落ちる音がした。モニカは慌てて杖を隠して振り返る。談話室の扉の前に口元に手を当てているロイが立っていた。ロイは驚いた顔で空中に漂う光を見ている。
「ロ、ロイ?!どうしてここに?対抗戦やってるよ?」
「ああ、うん。今日ちょっと体調悪くて…」
確かにただでさえ青白いロイの顔色がいつもより良くないように見える。フラフラした足取りの上に、口元に血が滲んでいる。モニカは慌てて彼にエリクサーを渡した。ロイは驚いた顔をしたあと、ニッコリと笑ってそれを飲んだ。
「ありがとうモニカ。少し元気になったよ。それよりこれ、光魔法だよね…?」
「あっ、いや、あの、これは…」
「こんな上級魔法が使えるのに…どうして基本属性の魔法は上手く使えないの?」
「実は…」
モニカはロイに、自分が詠唱では魔法が使えず、歌を歌えばうまく使えることを話した。ロイは不思議そうに首を傾げる。
「おかしな話だな。詠唱は魔力を増幅させるためのものだ。それじゃだめで、なんで何の効果もない歌を歌えば魔法を使えるんだろう?」
「わからない…」
「不思議な人だねモニカさんは。…でも、やっと納得できたよ。だって君の魔力は授業で見せる君の魔法と全然釣り合っていないんだもん」
「それ、前も言っていたけど…。ロイは人の魔力が見えるの?それってすごいことだよね?」
「ううん、そんなことないよ。僕の家系はちょっと変わっているんだ」
「そうなの。ロイのご家族はみんな魔力が見えるの?」
「うん。と言っても僕にはお父さましかいないけど」
「あっ…ごめんなさい」
無神経なことを聞いてしまい、モニカはすぐに謝った。だがロイは全く気にしていない様子だった。
「気にしないで。その分お父様がたくさん愛情を注いでくれるから」
嬉しそうに父親の話をするロイに、モニカの目じりが下がった。ロイはお父さんのことが大好きなんだなあと感じながら、しばらくの間ロイとお喋りを楽しんだ後モニカは観戦席に戻った。
《なんとおおお!!またもやリリー寮、アーサー選手の勝利です!!》
《さすがダフ選手に勝っただけありますね。これはもしかするともしかするんじゃないですか?》
「なんであいつ、あの剣を軽々と振り回してるんだ…?!」
ウィルク王子は控室でアーサーの戦いを覗きながらギリギリと指の爪を噛んだ。ダフ戦では苦戦した剣もしばらく振っているうちに慣れてしまい、多少動きは鈍くなるものの生徒相手では問題ないほど滑らかに動けるようになっていた。
観客席では男子も女子もアーサーの快進撃に大興奮だ。特に女子たちは突然現れたダークホースに釘付けになっている。
「きゃー!アーサーすごーい!!」
《さすがアーサーだな》
モニカ(と杖)はライラ、チャド、ノアと一緒に観戦していた。モニカはもちろんのこと、他の3人もアーサーの戦いぶりに大騒ぎしている。モニカはライラの大声を初めて聞いた。
「すっ、すごいねモニカ!あ、あなたのお兄さん、本当にすごいっ!」
「まじでアーサーすげえ!!あいつこんな強かったのかよ!!すげー!!」
「あのちっこい体であんなでっかい相手倒すなんてなあ!!かっけぇー!!」
「でっしょぉ?!私のお兄ちゃんはすっごくすごいんだからねっ!!最高なんだからぁ!」
「出たよモニカのアーサー大好きタイムが」
「はぁー俺らがアーサーに敵う気がしねえなあ」
4人でおおはしゃぎしながらアーサーの応援をしているモニカの傍に、さりげなくジュリア王女が座った。それに気付いたモニカはびくりと体をこわばらせる。ライラも「ひゃぅぅっ」と呻きながらチャドにしがみついた。ジュリア王女は「ねえ」とモニカに声をかける。
「は、はい!どうされましたか?!」
「あなたのお兄さま、素敵ね」
「えっ?」
「剣術はもちろんのこと、戦術にも長けているわ。強くて、頭がいいのね」
王女に兄を褒められて、モニカはぱぁっと顔を輝かせた。大きく頷きながら興奮気味にアーサーのことを自慢した。
「はい!そうなんです!アーサーは最高なんです!」
「その上あの顔立ち…素敵」
「えっと…ジュリア王女…?」
ほぅ…とアーサーの姿を見つめるジュリア王女に、モニカは嫌な予感がした。
「モニカ。アーサー様のこと色々教えてくれないかしら?」
「アーサー…様…?」
「好きな食べ物とか、好きなブランドとか、好きな…女の子のタイプとか」
モニカは脳内で絶叫した。
(やばいこれは恋に落ちてる顔だわ!!!妹にアーサー取られちゃう!!やだやだやだ!!アーサーは私のものだもん!!…そう言えばなんだかこのあたりにいる女子みんなアーサーアーサー騒いでない?!え?!もしかしてアーサーってすごくモテてるんじゃないの?!どうしようどうしよう!!)
「ねえ、聞いてる?出来損ないの子猫ちゃん?」
「あっ!はい!申し訳ありません!あははは、えっと、すみません、私はトイレに…」
「あっ!ちょっと!!モニカ!アーサー様のことを教えなさい!!ねえ!モニカ!!」
ジュリア王女の声を背中に受けながら、モニカはそそくさとその場を離れた。横目で見ていた3人がコソコソと「逃げたなモニカ」「ああ、兄ちゃん取られたくなくて逃げた」「モ、モニカ行かないでぇヒィィイ」と耳打ちしている。ジュリア王女は「ふんっ!」と不機嫌そうにしていたが、去っていくのかと思いきやその席に居座ってライラたちと一緒に観戦を始めた。王女の隣で座っていたライラは「チャド、せ、席を代わってぇぇぇっ!!」と訴えていた。
観客席の間をぬって外に出るまでも、女子生徒がアーサーの話で盛り上がっている会話が聞こえてきた。モニカは顔を真っ青にして控室に向かった。
「あれ?どうしたのモニカ」
息をきらせたモニカが控室に飛び込んでくる。ぼんやりとしているアーサーの手を引き、控室の外へ出た。
「アーサー、それ以上目立たないで…」
「え?目立ってるかなあ?」
「すごく目立ってる!明らかに一人だけ動きおかしいし!」
「おかしい…?あー、また動きのクセが出ちゃってた?カミーユに何度も注意されてたんだよね。直ったと思ってたんだけどなあ」
「逆よ逆!!洗練されすぎるの!綺麗すぎるの!!一挙一動がかっこいいの!!」
「え…なんだよモニカ、照れるなあ」
アーサーはへへっと笑い頭を掻いた。言いたいことが伝わらないモニカは「んもぉ!」と地団駄を踏む。
「あれ、モニカ、どうしたの?僕に会いに来てくれたのかな?」
ひょこっと控室のドアからウィルク王子が顔を出す。アーサーは思わずモニカを自分の背後に隠した。
「おいおいアーサー…。僕は今モニカと話してるんだよ。そこをどいてくれないか」
「僕のことはお気にならさらいでください」
「お前がそこにいたらモニカの可愛い顔が見えないじゃないか!どきたまえ!」
「あああ~もう、妹弟揃って…」
モニカはうんざりしたように呟いた。ウィルク王子はモニカに、ジュリア王女はアーサーに恋に落ちてしまった。ただでさえ複雑な関係なのに余計ややこしくなってしまう。前途多難にもほどがある。
◇◇◇
ウィルク王子とジュリア王女から逃げるために、モニカはリリー寮の談話室に戻った。誰もいないのを確認してから杖を取り出し歌を歌う。暇つぶしに光魔法で無数のピンク色の光を出して遊んだ。
「え…」
背後で何かが床に落ちる音がした。モニカは慌てて杖を隠して振り返る。談話室の扉の前に口元に手を当てているロイが立っていた。ロイは驚いた顔で空中に漂う光を見ている。
「ロ、ロイ?!どうしてここに?対抗戦やってるよ?」
「ああ、うん。今日ちょっと体調悪くて…」
確かにただでさえ青白いロイの顔色がいつもより良くないように見える。フラフラした足取りの上に、口元に血が滲んでいる。モニカは慌てて彼にエリクサーを渡した。ロイは驚いた顔をしたあと、ニッコリと笑ってそれを飲んだ。
「ありがとうモニカ。少し元気になったよ。それよりこれ、光魔法だよね…?」
「あっ、いや、あの、これは…」
「こんな上級魔法が使えるのに…どうして基本属性の魔法は上手く使えないの?」
「実は…」
モニカはロイに、自分が詠唱では魔法が使えず、歌を歌えばうまく使えることを話した。ロイは不思議そうに首を傾げる。
「おかしな話だな。詠唱は魔力を増幅させるためのものだ。それじゃだめで、なんで何の効果もない歌を歌えば魔法を使えるんだろう?」
「わからない…」
「不思議な人だねモニカさんは。…でも、やっと納得できたよ。だって君の魔力は授業で見せる君の魔法と全然釣り合っていないんだもん」
「それ、前も言っていたけど…。ロイは人の魔力が見えるの?それってすごいことだよね?」
「ううん、そんなことないよ。僕の家系はちょっと変わっているんだ」
「そうなの。ロイのご家族はみんな魔力が見えるの?」
「うん。と言っても僕にはお父さましかいないけど」
「あっ…ごめんなさい」
無神経なことを聞いてしまい、モニカはすぐに謝った。だがロイは全く気にしていない様子だった。
「気にしないで。その分お父様がたくさん愛情を注いでくれるから」
嬉しそうに父親の話をするロイに、モニカの目じりが下がった。ロイはお父さんのことが大好きなんだなあと感じながら、しばらくの間ロイとお喋りを楽しんだ後モニカは観戦席に戻った。
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