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異国編:ジッピン後編:別れ

【301話】なんだこいつら

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「はぁっ…!はぁっ…!くそっ!キリがねえ!!」

その頃狩怪隊は、狩っても狩っても湧いてくる物の怪たちに体力を消耗させられていた。トウジの刀は血に染まり切れ味が鈍り、アキラとナツは矢が、ナツは札がほとんどなくなっている。元気なのは異国の少年と少女だけだった。

楽し気に歌を歌いながら恐ろしい威力の魔法を放ち続けるモニカ、息ひとつ切らさずサクサクと物の怪を片づけていくアーサーを、狩怪隊たちは疲れ切った顔で眺めている。

「おっかねぇー…」

「なんだあの子たちは…本当に人か?」

「モニカ…!恐るべき力の持ち主…!」

「アーサーの体どうなってんだ…?なんで疲れてないんだ…」

そんな視線に気付かず、モニカは元気いっぱいの声で兄に声をかけた。

「アーサー!見ててねー!」

「んー?」

モニカは歌を歌いながら杖を振った。水魔法で物の怪を濡らし、控えめの雷魔法を放つ。物の怪たちは感電してばたりと倒れた。

「わー!すごーい!」

「これいいでしょー?!魔力の節約にもなるし、火事を起こしたり木を伐り落としたりせずに済むの!!」

「さすがモニカだねー!!見た目的にもあんまり怖くないから見てるほうもホッとするよー!」

「なにそれぇ!」

「だって火だるまとか雷バーンとか見ててほんとに怖いんだよぉ?!」

「そっちの方が派手で気持ちいんだけどねー!」

「じゃあ僕も見ててね!シュバッ!ってモノノケ倒すからー!」

「うん!見せてー!じゃああの大きなモノノケ倒してー!」

「分かったー!」

モニカが指さしたのは、図体の大きな明らかに強そうな物の怪だった。アーサーがそれに近づくと、物の怪はぎろりとアーサーを睨み口を開く。

「オマエ…ウマソウ…」

「わーーー!!喋るタイプのモノノケだぁぁっ!!」

「クウ…」

物の怪がアーサーを叩き潰そうと巨大な腕を振り上げる。力は強そうだが動きがのろい。アーサーは地面に叩きつけられた腕を躱し、腕を足掛けにしてジャンプをした。そのまま物の怪の首に剣を滑らせ勢いよく掻き切る。物の怪は首から血が噴き出し大きな音を立てて倒れた。

「きゃーー!!アーサーかっこいいー!!」

「成功してよかったぁー…!ちょっと首が硬かったから斬れないかと思ったー」

「そうなの?サクッと斬ったように見えたよー!それにあの身のこなし!…アーサー前より身軽になってない?もしかしてちょっと痩せた?」

「え!!うそ!!また痩せちゃった?!」

「うん…。ジッピンの食事ってヘルシーだから…ちょっと痩せたかも。私も痩せたし」

「ええええ!やだよこれ以上ガリガリになりたくないよぉ…。僕はムキムキになりたいのにぃ!
!」

「ジッピンに帰ったらたくさんお肉食べましょ!そしたらすぐに元通りになるわ。ムキムキには…なれないだろうけど」

「ちょっと!諦めないでよ!僕だってダフみたいになりたいんだもん!」

「ダフは諦めて…せめてジルを目指そう?ね?」

「ジルはガリガリだよ!!」

「ジルは細身だけどしっかり筋肉ついてるわよ!」

「どっちかというと僕はカミーユみたいになりたいんだよぉ!!」

「いやよぉ!!」

「…なあ、なんででっかい物の怪と戦いながらあんな楽しそうにおしゃべりできるんだ…?」

「モニカもおしゃべりしながらばんばん術放って物の怪狩ってるし…」

「水術と雷術を巧みに使いこなしている…!モニカは一体何種類の術が使えるんだ?!」

「彼女、治癒術も素晴らしかったですわ。ああいうのを、神の愛娘と呼ぶのでしょうか」

「…まあ、あの子たちのおかげで魔物の狩りはほぼほぼ片付いたな」

「まだ残っているが…そろそろ引き上げよう。道具が底を尽きてるだろう。俺も刀が使い物にならなくなった」

「そうですね」

「おーい!!アーサー、モニカ!!もう充分だ!引き上げるぞ!」

「あっ、はーーい!!」

「ハァイ!!」

双子がアキラたちの元へ戻り、森の出口へ歩きながら狩怪隊にエリクサーを飲ませていると、うしろから何かがモニカにぶつかってきた。

「きゃっ!!」

「モニカ助けて!!」

「蓮華!」

背後にいたのは目を泣き腫らした蓮華だった。前方からもパタパタと走ってくる蕣が見えた。座敷童を目に映すことができるハルとナツも彼女たちに反応する。

「蓮華、蕣。どうした」

「珍しく血相を変えて…」

「モニカとアーサーが必要!アルジサマが危ない!はやく!」

「なんですって?!主になにが?!」

「説明してる暇ない!」

「ハル、ナツ!トウジとアキラにアルジサマからの伝言を伝えて!報酬は後日!森を出たら解散!体を休めなさい!」

「それは伝えるが…!私たちで力になれることは?!」

「今はない!でも当分よろず屋にアルジサマ顔出せない!」

「アルジサマいない間の指揮はあなたたちに頼む!」

「…分かった。モニカ、聞いていたか。早くアーサーを連れてお屋敷へ!主を頼んだぞ!」

「…うん!」

状況を掴めていないモニカだったが、彼女たちの雰囲気から詳しい話を聞いている時間がないことは分かった。モニカはぽかんとしているアーサーの手を握り屋敷へ走り出す。彼女のうしろをレンゲとムクゲも走っていた。
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