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魔女編:合同クエスト
和解
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洞窟の奥へ進むにつれ、魔物の数が増えていった。開けた場所にはゴブリンやオークの巣があり、うじゃうじゃとうごめいていた。
アーサーは近距離でサクサクと魔物の首を切り落とし、モニカは遠距離から武器を持つオークの処理を。途中ゴブリンの放った矢がアーサーの背中に直撃したが、チョッキのおかげで無傷ですんだ。
殲滅が終わり、またしばらく歩くと、魔物の死体が山のように積まれている場所に辿り着いた。
「ここが魔物の死体捨て場なんだわ…」
「くっさぁ」
「あっ見て!なにか動いてる」
モニカが指さした先には、魔物の死体に付着している大きな粘膜の塊があった。
しばらく観察していると、粘膜から小さな手が出てきた。それからゴブリンの頭がにょきっと現れる。
生まれたての小さなゴブリンは、小さな鳴き声を発しながらおぼつかない足取りで歩き出した。
「なにあれゴブリンの赤ちゃん?か、かわいい…!」
ゴブリンの誕生シーンに立ち会えたことに、モニカは感極まっている。
そんなモニカとは対照的に、アーサーは苦い顔をしていた。
「かわいくないよ、不気味だよ…」
「ああやって死体から魔物が生まれるのね。神秘だわ」
赤子ゴブリンに見惚れるモニカを引きずって、アーサーは先に進んだ。
先に続く道はとても暗く、狭い。アーサーとモニカが一列になって歩いていると、無数のコウモリに襲いかかられた。二人は大騒ぎしながらも、なんとかコウモリを撃退した。
三時間ほど歩き回ったのち、休憩中のアデーレ、イェルド、ベニートと遭遇した。
「お前たち!無事にここまで来れたんだな!」
イェルドが双子に駆け寄り、二人にケガがないか確かめた。
「うん、怪我はないな。良かった」
イェルドはアデーレとベニートに向き直り、目で合図する。ベニートは小さく舌打ちをしてから頭をかいた。
「わ、悪かったな」
「え?」
「冷たく当たって、悪かった。ちょっとピリピリしてた」
アデーレも双子に軽く頭を下げる。
「私もごめん。あと、エリクサーありがとう」
ベニートとアデーレの豹変ぶりに、双子はぽかんと口を開けた。そんな双子に、イェルドが弁解する。
「俺ら3人で話し合ってさ、やっぱりお前らを放っておくのはダメだなって話になったんだ。仮にも合同クエストのメンバーなわけだしさ」
さらにイェルドは、双子にこっそり囁いた。
「ベニートは前回の合同クエストで死にかけたんだ。それも、魔力が枯渇した魔法使いに盾にされたせいでね」
「えっ……」
「瀕死のベニートはメンバーに見捨てられ、ダンジョンの中に置いてきぼりにされた」
双子は絶句した。
「盾にされた挙句、見捨てられたなんて……」
「なんとか脱出できたらしいけど、生きて帰ってこられたのは奇跡だよ。……ま、そういうことがあったせいでさ、メンバーの重要さが身に染みてたんだ。それで今回、すごくナーバスになってたんだよ」
アデーレに関してはあんまり気にしないで。冷徹なところがあるけど根は優しいからさ、とイェルドはアデーレにもフォローを入れた。
「そうだったんだ…」
アーサーとモニカがベニートを見る。その生暖かい視線が居心地悪く、ベニートは目を背けた。
休憩を終えた5人は、再び洞窟の奥に進んだ。出現する魔物はほとんどが低級魔物で、サクサクと前へ進む。ベニートは弓、イェルドは槍、アデーレは剣を得意としており、低級魔物相手には息も切らさず戦っている。3人とも筋が良かった。
驚いたのは3人の方だった。
アーサーは弓と剣を使いこなし、特に剣に関しては全く力を入れずに剣を滑らせているだけに見えるのに、敵の首がポロポロ落ちていく。
モニカは詠唱のかわりに歌いながら絶え間なく魔法を使う。3人はモニカに一瞬見惚れてしまったが、首を振って戦闘に集中した。
何時間も魔物と戦い続け疲労がたまってきたので、その日の掃討はここまでとした。
一息ついたあと、ベニートがモニカに声をかけた。
「おいモニカ、あんなに魔法を使いまくって大丈夫なのか」
「うん、大丈夫!明日には魔力も9割くらいには回復すると思う。心配してくれてありがとう!」
「それならいいけど…」
アデーレも会話に加わった。
「ねえ、あなたたち本当にただの薬師?異様に戦いなれてるように見えるわ」
双子は魔獣の棲む森で4年間生活していたことを伝えた。
はじめは驚いていた3人だったが、それを聞いて双子の戦闘能力に納得したようだった。
5人は交代で見張りを立て仮眠することにした。
いつ魔物に襲われるか分からない場所――それも硬い地面の上で――横になってもそう簡単には入眠できない。大人たちがもぞもぞと体を動かし、なんとか眠ろうと努力しているそばで、双子は気持ちよさそうに眠っていた。
◇◇◇
2時間ほど経ったとき、モニカは首に痛みを感じ目を覚ました。見上げると、モニカに馬乗りになっているアーサーと目が合った。
「え…?アーサー?どうしたの?」
「……」
アーサーに首元を指でなぞられた。触れられたところがピリッと痛む。
アーサーはその指を自身の口元に運んだ。その指が血で濡れている。
よく見ると、アーサーの左手には短剣が握られていた。
(アーサーに首を切られた……? どうしてそんなこと……)
状況が掴めず、モニカの頭が混乱する。
アーサーは無言のまま、モニカの血が付着した指を舐めた。それだけでは飽き足らず――
「ひっ?!」
切り傷を付けたモニカの首元へ顔を近づけ、傷口を舌で舐めた。
しばらく首のまわりに流れた血を舐めたあと、傷口に唇を当てた。こくり、こくりとアーサーの喉元が動く。
血を飲んでいると気付きゾッとしたモニカは、アーサーをどかせようと抵抗する。しかし力でアーサーに敵わない。アーサーは妹の肩を強く握り、もっと血が欲しいとでも言うように傷口を噛み広げる。
「痛っ…!ちょっ、いい加減にしなさーーーい!!」
モニカは風魔法で兄を吹き飛ばし、傷口を押さえながらアーサーに目をやった。
アーサーは起き上がりモニカに近づいてくる。おぼつかない足取りで、目が虚ろだ。
「ア、アーサー、どうしたの!? なんだか変だよ!?」
「どうしたんだ?!」
見張りをしていたベニート、騒ぎで目を覚ましたイェルド、アデーラがモニカの元へ駆けつける。
「アーサーが私の血を飲んだ!変態!」
「血を飲む?まさか…」
ベニート、イェルド、アデーラが三人がかりでアーサーを取り押さえる。防具を脱がせ、服をめくると背中に小さなコウモリがくっついていた。
「あっこれ、大量発生してたコウモリ」
「チムシーだ。人間に寄生する魔物で、寄生された者は人の血を求めるようになる」
「てっきりアーサーがまた変な嗜好に目覚めたのかと思ったわ…よかったー」
ベニートが矢の先でチムシーを丁寧にはがすと、アーサーは意識を失った。
ぐったりしてしまった兄を見て、モニカが顔を真っ青にする。
「アーサー!!」
「大丈夫だ。命に別状はない。しばらくしたら意識が戻る」
「そっか……よかった……」
だが……と、ベニートは神妙な顔をした。
「チムシーは除去したけど、アーサーはしばらく血を欲するだろうな。俺たちと合流するまでに遭遇した敵だろ?寄生されて8時間は経ってる。2,3日の間は血を飲ませてやらないといけないだろうな」
「血を飲まなかったらどうなるの?」
「死にはしないけど禁断症状が出て気が狂うとか聞いたことあるな」
「ひえー…」
「Gランク、Fランクのダンジョンに結構生息してるから気をつけろよ」
ダンジョンに潜っている間、4人が交互にアーサーへ血を提供することになった。モニカが自分だけで面倒を見ると言い張ったが、貧血を心配して大人たちが首を縦に振らなかった。
アーサーは近距離でサクサクと魔物の首を切り落とし、モニカは遠距離から武器を持つオークの処理を。途中ゴブリンの放った矢がアーサーの背中に直撃したが、チョッキのおかげで無傷ですんだ。
殲滅が終わり、またしばらく歩くと、魔物の死体が山のように積まれている場所に辿り着いた。
「ここが魔物の死体捨て場なんだわ…」
「くっさぁ」
「あっ見て!なにか動いてる」
モニカが指さした先には、魔物の死体に付着している大きな粘膜の塊があった。
しばらく観察していると、粘膜から小さな手が出てきた。それからゴブリンの頭がにょきっと現れる。
生まれたての小さなゴブリンは、小さな鳴き声を発しながらおぼつかない足取りで歩き出した。
「なにあれゴブリンの赤ちゃん?か、かわいい…!」
ゴブリンの誕生シーンに立ち会えたことに、モニカは感極まっている。
そんなモニカとは対照的に、アーサーは苦い顔をしていた。
「かわいくないよ、不気味だよ…」
「ああやって死体から魔物が生まれるのね。神秘だわ」
赤子ゴブリンに見惚れるモニカを引きずって、アーサーは先に進んだ。
先に続く道はとても暗く、狭い。アーサーとモニカが一列になって歩いていると、無数のコウモリに襲いかかられた。二人は大騒ぎしながらも、なんとかコウモリを撃退した。
三時間ほど歩き回ったのち、休憩中のアデーレ、イェルド、ベニートと遭遇した。
「お前たち!無事にここまで来れたんだな!」
イェルドが双子に駆け寄り、二人にケガがないか確かめた。
「うん、怪我はないな。良かった」
イェルドはアデーレとベニートに向き直り、目で合図する。ベニートは小さく舌打ちをしてから頭をかいた。
「わ、悪かったな」
「え?」
「冷たく当たって、悪かった。ちょっとピリピリしてた」
アデーレも双子に軽く頭を下げる。
「私もごめん。あと、エリクサーありがとう」
ベニートとアデーレの豹変ぶりに、双子はぽかんと口を開けた。そんな双子に、イェルドが弁解する。
「俺ら3人で話し合ってさ、やっぱりお前らを放っておくのはダメだなって話になったんだ。仮にも合同クエストのメンバーなわけだしさ」
さらにイェルドは、双子にこっそり囁いた。
「ベニートは前回の合同クエストで死にかけたんだ。それも、魔力が枯渇した魔法使いに盾にされたせいでね」
「えっ……」
「瀕死のベニートはメンバーに見捨てられ、ダンジョンの中に置いてきぼりにされた」
双子は絶句した。
「盾にされた挙句、見捨てられたなんて……」
「なんとか脱出できたらしいけど、生きて帰ってこられたのは奇跡だよ。……ま、そういうことがあったせいでさ、メンバーの重要さが身に染みてたんだ。それで今回、すごくナーバスになってたんだよ」
アデーレに関してはあんまり気にしないで。冷徹なところがあるけど根は優しいからさ、とイェルドはアデーレにもフォローを入れた。
「そうだったんだ…」
アーサーとモニカがベニートを見る。その生暖かい視線が居心地悪く、ベニートは目を背けた。
休憩を終えた5人は、再び洞窟の奥に進んだ。出現する魔物はほとんどが低級魔物で、サクサクと前へ進む。ベニートは弓、イェルドは槍、アデーレは剣を得意としており、低級魔物相手には息も切らさず戦っている。3人とも筋が良かった。
驚いたのは3人の方だった。
アーサーは弓と剣を使いこなし、特に剣に関しては全く力を入れずに剣を滑らせているだけに見えるのに、敵の首がポロポロ落ちていく。
モニカは詠唱のかわりに歌いながら絶え間なく魔法を使う。3人はモニカに一瞬見惚れてしまったが、首を振って戦闘に集中した。
何時間も魔物と戦い続け疲労がたまってきたので、その日の掃討はここまでとした。
一息ついたあと、ベニートがモニカに声をかけた。
「おいモニカ、あんなに魔法を使いまくって大丈夫なのか」
「うん、大丈夫!明日には魔力も9割くらいには回復すると思う。心配してくれてありがとう!」
「それならいいけど…」
アデーレも会話に加わった。
「ねえ、あなたたち本当にただの薬師?異様に戦いなれてるように見えるわ」
双子は魔獣の棲む森で4年間生活していたことを伝えた。
はじめは驚いていた3人だったが、それを聞いて双子の戦闘能力に納得したようだった。
5人は交代で見張りを立て仮眠することにした。
いつ魔物に襲われるか分からない場所――それも硬い地面の上で――横になってもそう簡単には入眠できない。大人たちがもぞもぞと体を動かし、なんとか眠ろうと努力しているそばで、双子は気持ちよさそうに眠っていた。
◇◇◇
2時間ほど経ったとき、モニカは首に痛みを感じ目を覚ました。見上げると、モニカに馬乗りになっているアーサーと目が合った。
「え…?アーサー?どうしたの?」
「……」
アーサーに首元を指でなぞられた。触れられたところがピリッと痛む。
アーサーはその指を自身の口元に運んだ。その指が血で濡れている。
よく見ると、アーサーの左手には短剣が握られていた。
(アーサーに首を切られた……? どうしてそんなこと……)
状況が掴めず、モニカの頭が混乱する。
アーサーは無言のまま、モニカの血が付着した指を舐めた。それだけでは飽き足らず――
「ひっ?!」
切り傷を付けたモニカの首元へ顔を近づけ、傷口を舌で舐めた。
しばらく首のまわりに流れた血を舐めたあと、傷口に唇を当てた。こくり、こくりとアーサーの喉元が動く。
血を飲んでいると気付きゾッとしたモニカは、アーサーをどかせようと抵抗する。しかし力でアーサーに敵わない。アーサーは妹の肩を強く握り、もっと血が欲しいとでも言うように傷口を噛み広げる。
「痛っ…!ちょっ、いい加減にしなさーーーい!!」
モニカは風魔法で兄を吹き飛ばし、傷口を押さえながらアーサーに目をやった。
アーサーは起き上がりモニカに近づいてくる。おぼつかない足取りで、目が虚ろだ。
「ア、アーサー、どうしたの!? なんだか変だよ!?」
「どうしたんだ?!」
見張りをしていたベニート、騒ぎで目を覚ましたイェルド、アデーラがモニカの元へ駆けつける。
「アーサーが私の血を飲んだ!変態!」
「血を飲む?まさか…」
ベニート、イェルド、アデーラが三人がかりでアーサーを取り押さえる。防具を脱がせ、服をめくると背中に小さなコウモリがくっついていた。
「あっこれ、大量発生してたコウモリ」
「チムシーだ。人間に寄生する魔物で、寄生された者は人の血を求めるようになる」
「てっきりアーサーがまた変な嗜好に目覚めたのかと思ったわ…よかったー」
ベニートが矢の先でチムシーを丁寧にはがすと、アーサーは意識を失った。
ぐったりしてしまった兄を見て、モニカが顔を真っ青にする。
「アーサー!!」
「大丈夫だ。命に別状はない。しばらくしたら意識が戻る」
「そっか……よかった……」
だが……と、ベニートは神妙な顔をした。
「チムシーは除去したけど、アーサーはしばらく血を欲するだろうな。俺たちと合流するまでに遭遇した敵だろ?寄生されて8時間は経ってる。2,3日の間は血を飲ませてやらないといけないだろうな」
「血を飲まなかったらどうなるの?」
「死にはしないけど禁断症状が出て気が狂うとか聞いたことあるな」
「ひえー…」
「Gランク、Fランクのダンジョンに結構生息してるから気をつけろよ」
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