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決戦編:バンスティンダンジョン
王様ゲームパロディ
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◇◇◇
「あ! アーサー見つけたー!!」
シルヴェストルと別れてすぐ、アーサーはモニカと合流した。
「もう! どこ行ってたの!?」
「えっと、えっとぉ……怒らない?」
「……いや、もう分かったから言わなくていいわ。どうせキングマンティコアの毒を抽出してたんでしょ?」
「さ、さすがモニカ。そうです……」
「一人で行動するなんてどうかしてるよ。これから気を付けてね。どうしてもって言うなら、私がついて行くから」
「うん。ありがとう、モニカ」
「まったく。世話の焼けるお兄ちゃんだこと」
アーサーが地下一階の最奥に戻ると、すぐにジルとマデリアに呼ばれた。謎解きに苦戦しているようだ。
地下二階に繋がる扉の両端にはレバーが六つ設置されていて、レバーにはボトル――〝Bois-moi!(私を飲んで!)〟と書かれたラベルが貼られている――がそれぞれに吊り下げられていた。扉には他にも、〝embrasse-moi(キスして!)〟と口紅で書かれた鏡や、〝touchez-moi(タッチして!)〟と書かれた黒い石板が取り付けられている。
ジル曰く、このボトルや鏡、石板は、裏S級が付け足したいやらしい仕掛けらしい。
「たぶん、元々は正しいレバーを引けば扉が開く仕掛けだったと思う。それを裏S級――薬師ヴァラリアとサイコパス魔術師が手を加えた。そのせいで、扉を開けるためには正しいレバーに吊り下げられたボトルの中の液体を飲まなきゃいけない」
「飲んだフリはできないの?」
「ダメだろうね。飲んで何かしらの状態異常になったまま、鏡にキスをして、石板に触れないといけない。唾液や体温でちゃんと飲んだか確認するためだと思う」
ジルはそう言って、ボトルの一本をつついた。
「つまり、この仕掛けはごまかせないし、よっぽど体に悪い液体がボトルの中に入ってる」
「正しいレバーを一度で引き当てないと、無駄に戦力を削ぐことになるの。一度も間違えたくないわ」
アーサーは頷き、扉付近に備え付けられているものを観察した。一見なんのヒントもないように思える。
「そうなんだよ。ヒントがなさすぎるから僕たちも苦戦してる」
「本当に通す気があるのかしら。全く」
ジルとマデリアは参っているようだった。アーサーもさっぱり分からなかったので、手持無沙汰をごまかすために、鏡にキスをしてみた。
すると、ブオン、と電気が通ったような音がして、レバーのひとつに百合の模様が浮かび上がった。
「わ! ジル見てー! 鏡にキスしたらなんか光った!」
「こんな簡単なことだったの? 考えてた時間がもったいない」
続いてアーサーが石板に手を当てると、別のレバーに百合の模様が浮かび上がる。
それを見たマデリアがげっそりとした声を漏らした。
「ふたつ浮き上がっちゃったわ。どっちが正しいのよ」
「アーサー、洞窟内に百合の模様を見なかった?」
「うーん……見てないなあ」
それからも三人は、扉のまわりや洞窟の中をうろうろと歩き回り手掛かりを探した。しかし、何も見つからずひとつも進展しない。
「困ったね」
「こんなところで躓くなんて」
マデリアが扉にもたれかかる。そのとき、たまたま彼女の手が石板に触れ、また別のレバーに模様が浮かび上がった。その模様は、杖を持っている魔物の手のように見える。
「……え」
「まだ浮かび上がるの?」
試しにジルも石板に触れてみた。ひとつのレバーに、槍と盾の模様が浮かび上がる。
「……」
浮かび上がった模様に眉をひそめるマデリアとジル。
「……触れた人に対応した模様が浮かび上がる?」
「試してみよう。カミーユ、ちょっと来て」
呼ばれたカミーユは、訳が分からないまま石板に触れた。すると、大剣の上に王冠が載った模様が光る。
「……あたりだね」
「おいジル、まだ仕掛けが解けねえのか? さっさとしろよ」
「どうしよう。ただでさえ解けなくてシライラしてるのにカミーユの文句で余計にイライラして集中できない」
「はいはい悪かったよ。しかしさっさとしてくれ」
「うーん。早く魔物と戦いたくなってきた。殺意がすごい」
これまでに浮かび上がったのは、左側のレバーが上から百合、杖、大剣。右側のレバーが上から百合、槍。
「……あとひとつ、浮かび上がらせてみようか」
ジルがもう一度石板に触れたが、レバーは何も反応しなかった。マデリア、カミーユ、アーサーが試しても同じだった。
「えーっと、じゃあ、クルド」
「おっ、俺の出番か? 任せろ!」
クルドが石板に触れると、右レバーの一番下に大剣と雫の模様が浮かび上がった。それを見たマデリアがクスクス笑う。
「ふふ。これを仕掛けた人、よく分かってるわね」
「何がだ?」
「クルドが泣き虫だから雫なんでしょう」
「はああ!? 気に食わねえ!」
全てのレバーに模様が灯ると、石板に文字が浮かび上がった。
----------------
王は言う
民よ我の盾となれ
民は言う
神よ我らを救いたまえ
神は言う
最も価値ある命をひとつ差し出せ
さすれば民の命を救おうぞ
----------------
文章に目を通したS級冒険者は、冷や汗を流し唾を飲んだ。
「……これは」
どういう意味かは全員が理解した。
〝王〟とは百合の模様のアーサーのことだ。そして〝民〟とは武器の模様のカミーユ、クルド、ジル、マデリアのこと。
この扉を開けるためには、アーサーが二本のボトルを飲むか、残りの者がそれぞれ一本ずつボトルを飲むかしなければならない。
「笑えねえ〝王様ゲーム〟だぜ」
「完全にそれのパロディだね」
「ま、迷う余地はねえな」
カミーユはヘッと笑い、王冠と大剣の模様が灯るレバーに吊り下げられたボトルを取ろうとした。
「あ! アーサー見つけたー!!」
シルヴェストルと別れてすぐ、アーサーはモニカと合流した。
「もう! どこ行ってたの!?」
「えっと、えっとぉ……怒らない?」
「……いや、もう分かったから言わなくていいわ。どうせキングマンティコアの毒を抽出してたんでしょ?」
「さ、さすがモニカ。そうです……」
「一人で行動するなんてどうかしてるよ。これから気を付けてね。どうしてもって言うなら、私がついて行くから」
「うん。ありがとう、モニカ」
「まったく。世話の焼けるお兄ちゃんだこと」
アーサーが地下一階の最奥に戻ると、すぐにジルとマデリアに呼ばれた。謎解きに苦戦しているようだ。
地下二階に繋がる扉の両端にはレバーが六つ設置されていて、レバーにはボトル――〝Bois-moi!(私を飲んで!)〟と書かれたラベルが貼られている――がそれぞれに吊り下げられていた。扉には他にも、〝embrasse-moi(キスして!)〟と口紅で書かれた鏡や、〝touchez-moi(タッチして!)〟と書かれた黒い石板が取り付けられている。
ジル曰く、このボトルや鏡、石板は、裏S級が付け足したいやらしい仕掛けらしい。
「たぶん、元々は正しいレバーを引けば扉が開く仕掛けだったと思う。それを裏S級――薬師ヴァラリアとサイコパス魔術師が手を加えた。そのせいで、扉を開けるためには正しいレバーに吊り下げられたボトルの中の液体を飲まなきゃいけない」
「飲んだフリはできないの?」
「ダメだろうね。飲んで何かしらの状態異常になったまま、鏡にキスをして、石板に触れないといけない。唾液や体温でちゃんと飲んだか確認するためだと思う」
ジルはそう言って、ボトルの一本をつついた。
「つまり、この仕掛けはごまかせないし、よっぽど体に悪い液体がボトルの中に入ってる」
「正しいレバーを一度で引き当てないと、無駄に戦力を削ぐことになるの。一度も間違えたくないわ」
アーサーは頷き、扉付近に備え付けられているものを観察した。一見なんのヒントもないように思える。
「そうなんだよ。ヒントがなさすぎるから僕たちも苦戦してる」
「本当に通す気があるのかしら。全く」
ジルとマデリアは参っているようだった。アーサーもさっぱり分からなかったので、手持無沙汰をごまかすために、鏡にキスをしてみた。
すると、ブオン、と電気が通ったような音がして、レバーのひとつに百合の模様が浮かび上がった。
「わ! ジル見てー! 鏡にキスしたらなんか光った!」
「こんな簡単なことだったの? 考えてた時間がもったいない」
続いてアーサーが石板に手を当てると、別のレバーに百合の模様が浮かび上がる。
それを見たマデリアがげっそりとした声を漏らした。
「ふたつ浮き上がっちゃったわ。どっちが正しいのよ」
「アーサー、洞窟内に百合の模様を見なかった?」
「うーん……見てないなあ」
それからも三人は、扉のまわりや洞窟の中をうろうろと歩き回り手掛かりを探した。しかし、何も見つからずひとつも進展しない。
「困ったね」
「こんなところで躓くなんて」
マデリアが扉にもたれかかる。そのとき、たまたま彼女の手が石板に触れ、また別のレバーに模様が浮かび上がった。その模様は、杖を持っている魔物の手のように見える。
「……え」
「まだ浮かび上がるの?」
試しにジルも石板に触れてみた。ひとつのレバーに、槍と盾の模様が浮かび上がる。
「……」
浮かび上がった模様に眉をひそめるマデリアとジル。
「……触れた人に対応した模様が浮かび上がる?」
「試してみよう。カミーユ、ちょっと来て」
呼ばれたカミーユは、訳が分からないまま石板に触れた。すると、大剣の上に王冠が載った模様が光る。
「……あたりだね」
「おいジル、まだ仕掛けが解けねえのか? さっさとしろよ」
「どうしよう。ただでさえ解けなくてシライラしてるのにカミーユの文句で余計にイライラして集中できない」
「はいはい悪かったよ。しかしさっさとしてくれ」
「うーん。早く魔物と戦いたくなってきた。殺意がすごい」
これまでに浮かび上がったのは、左側のレバーが上から百合、杖、大剣。右側のレバーが上から百合、槍。
「……あとひとつ、浮かび上がらせてみようか」
ジルがもう一度石板に触れたが、レバーは何も反応しなかった。マデリア、カミーユ、アーサーが試しても同じだった。
「えーっと、じゃあ、クルド」
「おっ、俺の出番か? 任せろ!」
クルドが石板に触れると、右レバーの一番下に大剣と雫の模様が浮かび上がった。それを見たマデリアがクスクス笑う。
「ふふ。これを仕掛けた人、よく分かってるわね」
「何がだ?」
「クルドが泣き虫だから雫なんでしょう」
「はああ!? 気に食わねえ!」
全てのレバーに模様が灯ると、石板に文字が浮かび上がった。
----------------
王は言う
民よ我の盾となれ
民は言う
神よ我らを救いたまえ
神は言う
最も価値ある命をひとつ差し出せ
さすれば民の命を救おうぞ
----------------
文章に目を通したS級冒険者は、冷や汗を流し唾を飲んだ。
「……これは」
どういう意味かは全員が理解した。
〝王〟とは百合の模様のアーサーのことだ。そして〝民〟とは武器の模様のカミーユ、クルド、ジル、マデリアのこと。
この扉を開けるためには、アーサーが二本のボトルを飲むか、残りの者がそれぞれ一本ずつボトルを飲むかしなければならない。
「笑えねえ〝王様ゲーム〟だぜ」
「完全にそれのパロディだね」
「ま、迷う余地はねえな」
カミーユはヘッと笑い、王冠と大剣の模様が灯るレバーに吊り下げられたボトルを取ろうとした。
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