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決戦編:バンスティンダンジョン
氷の床
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氷の床となった海を、双子とS級冒険者が慎重に歩いていく(モニカは滑って転んでしまうので、アーサーとジルに手を引いてもらいながら)。
ビクビクと氷の床の様子を窺っているモニカに、ジルは声をかけた。
「安心して。リアーナが海の底まで氷漬けにしてあるから、特殊な魔物じゃない限り襲ってこられないよ」
「特殊な魔物は襲ってくるの……?」
「うん。水中魔物なのに火魔法が使える変わったヤツは、自力で氷を溶かせるだろうね」
「ひぃん……」
「ま、そんな魔物ほとんどいないから安心して。このまま最奥まで散歩をするだけ」
アーサーは首を傾げてジルに尋ねる。
「ここの魔物は凍らせるだけで倒さないの? 十割殲滅だよね……?」
「もちろん倒すよ。ある程度まで進んだら、リアーナがそこまでの氷を溶かして水を蒸発させる。そのあと、水がなくなってペチペチ跳ねている水中魔物の上に雷を落とす。水中魔物はだいたい雷魔法が弱点だから、ほとんどそれで倒せるよ。それでも死なない魔物は焼き魚にしておしまい。簡単なお仕事」
「どう聞いたって簡単なお仕事じゃないような気がするのは僕だけ……?」
大仕事を任されているというのに、リアーナはカミーユと雑談しながらゲラゲラ笑っている。きっとこういったことをするのは、いつものことなのだろう。
「モニカ……リアーナってすごい人なんだねえ」
「うんうん! 私、こんな人に魔法を教えてもらってたんだー! すごいー!」
「リアーナだけじゃなくてS級冒険者みんなすごいし……。学院のみんながカミーユパーティを見て大騒ぎしてたの、今では納得ができるよぉ」
双子の会話を聞いていたジルは、クスクス笑って言葉を挟む。
「君たちだって充分すごいよ。だって僕たちと一緒に戦ってても遜色ないんだから」
「それは言い過ぎだよ! 僕なんてカミーユの五分の一も魔物を倒せてないんだから」
「カミーユの五分の一倒せたらたいしたものだよ」
五十メートル進むごとにリアーナが氷を溶かして水中の魔物を倒していく。こんな攻撃の仕方をされては、A級魔物であっても手も足も出ない。時々氷を溶かして襲い掛かってくる魔物もしたが、それらは弓使いに軽々倒された。
順調に奥へ進んでいく一行。あともう数キロで最奥というところで、氷の下から地響きがした。揺れ動く床にバランスを崩したモニカをアーサーが抱き留める。
「グォォォォォン!!」
氷の下から魔物の咆哮が聞こえた。双子はパニックになっておたおたしていたが、S級冒険者は少しも動揺していない。
カミーユは氷の床を足でトントンと叩き、小さく笑った。
「ヘッ。水中からのこの鳴き声。地下二階でこいつと戦うハメになるとはな。さすがはバンスティンダンジョンだ」
「よっしゃこーーーい!!」
大声と共に、リアーナが杖を大きく一振りして氷を溶かした。
「なんでそんなことするのぉー!?」
思わず叫んだアーサーに、リアーナはワクワクした顔で応える。
「見とけよアーサー! 今からすっげー魔物が出てくるから!!」
「なんでそんな楽しそうなのぉ!?」
「そりゃお前! こんなヤベエ魔物、めったにお目にかかれねえからだよ!!」
大きな波を立てて八本の首を持つ蛇の魔物が現れた。アーサーは「ヒィィィィッ!!」と悲鳴を上げてひっくり返る。一方モニカは、恐怖で気絶した兄を守るために立ちあがった。
「もう! アーサーがびっくりして倒れちゃったじゃない! ばかぁー!」
モニカから鋭い風魔法が放たれるのを見て、S級冒険者全員が「うぎゃー!!」とらしくもない叫び声を上げた。
「やめろモニカ! 風魔法を止めろぉぉぉ!!」
「へっ?」
しかしもう遅い。モニカの素晴らしい質の風魔法は、見事ヒュドラの首を七本も切り落とした。
「あん! 惜しい~! あと一本だったのに! もう一回――」
「頼むやめろモニカァァァア!」
慌ててリアーナがモニカの杖を吹き飛ばした。
S級が顔を真っ青にしてキョトンとしているモニカを見ている。
「どうしたの、みんな?」
「……じきに分かる」
モニカは首を傾げ、ヨタヨタとこちらに向かってくる首がほとんどなくなったヒュドラを見た。
「あ……?」
その瞬間、切断した首から二本の首――合計十四本もの首がものすごい勢いで生えた。
「ひょっ……」
「ヒュドラに斬撃は禁物だ……。切った首から二本の首が生えてくるから……」
「あれ……じゃあ私、とんでもないことをしちゃったんじゃ……」
「ちなみに言っとくが、ヒュドラの牙にはアーサーの大好きな毒がたっぷり詰め込まれてる。一度でも噛まれたら死ぬぞ。俺でもな」
カミーユはそう言って、剣を鞘に戻した。
「ヒュドラを倒せるのは魔法使いだけだ。頼んだぜ、モニカ」
「うっ……うん!」
「ヒュドラは水魔法と火魔法、毒魔法の耐性がある。なんでもこいつの先祖が神と戦って、火でボッコボコにされたらしい。それから子孫は火魔法属性がついたとかいう言い伝えがあるんだ」
「ほええー……」
「だから雷魔法で戦えよ。絶対に風魔法は打つな。分かったな?」
「うん! 迷惑かけた分がんばるね!」
ビクビクと氷の床の様子を窺っているモニカに、ジルは声をかけた。
「安心して。リアーナが海の底まで氷漬けにしてあるから、特殊な魔物じゃない限り襲ってこられないよ」
「特殊な魔物は襲ってくるの……?」
「うん。水中魔物なのに火魔法が使える変わったヤツは、自力で氷を溶かせるだろうね」
「ひぃん……」
「ま、そんな魔物ほとんどいないから安心して。このまま最奥まで散歩をするだけ」
アーサーは首を傾げてジルに尋ねる。
「ここの魔物は凍らせるだけで倒さないの? 十割殲滅だよね……?」
「もちろん倒すよ。ある程度まで進んだら、リアーナがそこまでの氷を溶かして水を蒸発させる。そのあと、水がなくなってペチペチ跳ねている水中魔物の上に雷を落とす。水中魔物はだいたい雷魔法が弱点だから、ほとんどそれで倒せるよ。それでも死なない魔物は焼き魚にしておしまい。簡単なお仕事」
「どう聞いたって簡単なお仕事じゃないような気がするのは僕だけ……?」
大仕事を任されているというのに、リアーナはカミーユと雑談しながらゲラゲラ笑っている。きっとこういったことをするのは、いつものことなのだろう。
「モニカ……リアーナってすごい人なんだねえ」
「うんうん! 私、こんな人に魔法を教えてもらってたんだー! すごいー!」
「リアーナだけじゃなくてS級冒険者みんなすごいし……。学院のみんながカミーユパーティを見て大騒ぎしてたの、今では納得ができるよぉ」
双子の会話を聞いていたジルは、クスクス笑って言葉を挟む。
「君たちだって充分すごいよ。だって僕たちと一緒に戦ってても遜色ないんだから」
「それは言い過ぎだよ! 僕なんてカミーユの五分の一も魔物を倒せてないんだから」
「カミーユの五分の一倒せたらたいしたものだよ」
五十メートル進むごとにリアーナが氷を溶かして水中の魔物を倒していく。こんな攻撃の仕方をされては、A級魔物であっても手も足も出ない。時々氷を溶かして襲い掛かってくる魔物もしたが、それらは弓使いに軽々倒された。
順調に奥へ進んでいく一行。あともう数キロで最奥というところで、氷の下から地響きがした。揺れ動く床にバランスを崩したモニカをアーサーが抱き留める。
「グォォォォォン!!」
氷の下から魔物の咆哮が聞こえた。双子はパニックになっておたおたしていたが、S級冒険者は少しも動揺していない。
カミーユは氷の床を足でトントンと叩き、小さく笑った。
「ヘッ。水中からのこの鳴き声。地下二階でこいつと戦うハメになるとはな。さすがはバンスティンダンジョンだ」
「よっしゃこーーーい!!」
大声と共に、リアーナが杖を大きく一振りして氷を溶かした。
「なんでそんなことするのぉー!?」
思わず叫んだアーサーに、リアーナはワクワクした顔で応える。
「見とけよアーサー! 今からすっげー魔物が出てくるから!!」
「なんでそんな楽しそうなのぉ!?」
「そりゃお前! こんなヤベエ魔物、めったにお目にかかれねえからだよ!!」
大きな波を立てて八本の首を持つ蛇の魔物が現れた。アーサーは「ヒィィィィッ!!」と悲鳴を上げてひっくり返る。一方モニカは、恐怖で気絶した兄を守るために立ちあがった。
「もう! アーサーがびっくりして倒れちゃったじゃない! ばかぁー!」
モニカから鋭い風魔法が放たれるのを見て、S級冒険者全員が「うぎゃー!!」とらしくもない叫び声を上げた。
「やめろモニカ! 風魔法を止めろぉぉぉ!!」
「へっ?」
しかしもう遅い。モニカの素晴らしい質の風魔法は、見事ヒュドラの首を七本も切り落とした。
「あん! 惜しい~! あと一本だったのに! もう一回――」
「頼むやめろモニカァァァア!」
慌ててリアーナがモニカの杖を吹き飛ばした。
S級が顔を真っ青にしてキョトンとしているモニカを見ている。
「どうしたの、みんな?」
「……じきに分かる」
モニカは首を傾げ、ヨタヨタとこちらに向かってくる首がほとんどなくなったヒュドラを見た。
「あ……?」
その瞬間、切断した首から二本の首――合計十四本もの首がものすごい勢いで生えた。
「ひょっ……」
「ヒュドラに斬撃は禁物だ……。切った首から二本の首が生えてくるから……」
「あれ……じゃあ私、とんでもないことをしちゃったんじゃ……」
「ちなみに言っとくが、ヒュドラの牙にはアーサーの大好きな毒がたっぷり詰め込まれてる。一度でも噛まれたら死ぬぞ。俺でもな」
カミーユはそう言って、剣を鞘に戻した。
「ヒュドラを倒せるのは魔法使いだけだ。頼んだぜ、モニカ」
「うっ……うん!」
「ヒュドラは水魔法と火魔法、毒魔法の耐性がある。なんでもこいつの先祖が神と戦って、火でボッコボコにされたらしい。それから子孫は火魔法属性がついたとかいう言い伝えがあるんだ」
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