魔法学園の令嬢ですが、婚約破棄され悪魔に囁かれました

しきど

文字の大きさ
12 / 15

12.幻術の証明(グリルフェン視点)

しおりを挟む
 フレアは壇上の足元までいくと、元婚約者のご令息を見上げた。その背後から彼の父親が駆け寄ってくる。

 「フ、フレア嬢!? 一体どういうつもりだ!?」

 「ハッ! 馬鹿め!」

 と、ご令息は高らかに笑った。

 「未練などないと言っておきながら、僕とリイネの仲を妬むとはな! おい従者! この無様な女を摘まみ出せ!」

 「未練は御座いません。新しくお付き合いを始められるというのも、本来であれば祝福したいところです。ただそれは、という話ですが」

 「……どういう意味だ、フレア嬢?」

 「リイネさんは今この時も魔法によって操られています! この婚約は彼女の本意ではありません!」

 会場のざわめきが一際大きくなった。

 「ただの妄言だっ! 従者何をしている! 早くこの女を──!」

 「ヴァンフォート!」

 父親の一喝に、ご令息は僅かに怯んだようだった。彼は再びフレアに向き直り言った。

 「話したまえ」

 「……ありがとうございます。バルト子爵」

 フレアは来客の方へ向き直り、ゆっくりと語りだした。

 「……一週間ほど前、学園内である魔法の発生が確認されました。特二級に該当する内容の魔法です。当然、不認可のものです。それによってラ・ベイザルド教会から調査員が派遣されていますし、観測装置の記録にも残っています」

 「彼女がその魔法にかけられていると?」

 「はい」

 「馬鹿馬鹿しいっ!」

 ご令息が叫ぶ。

 「仮に幻術の発生が真実だったとしても、彼女がその被害にあっているなどという証拠は、何処にもないではないか!」

 「証拠はあります。そうですねリイネさん?」

 リイネはおずおずと、呟くように、フレアの質問に答えてみせた。

 「……いえ、私はヴァンフォート様を心から愛しております」

 「本当に?」

 「はい」

 「では、いつからですか?」

 「……」

 「もうやめろ!」

 「一つだけ、簡単なテストをさせてください。一分で済みます。それでやめます」

 「これ以上の非礼は侮辱罪で訴えるぞ! フレア! 大人しく出ていけ!」

 「ヴァンフォート!」

 再び一喝されて、ご令息が黙ってしまう。フレア嬢は子爵にお辞儀をし、リイネに詰め寄った。

 「……ではリイネさん、いいですね。これから私がいう事に対して、何を言われても、はい、と答えて下さい。約束出来ますか?」

 「……はい」

 「貴女がヴァンフォートを愛しているのは、偽りだ」

 「……いいえ」

 なるほどな、とテラスで静観していた俺は思わず独りで頷いてしまった。

 「違いますよリイネさん。はい、と答えるんです。本音を語ってくれなんて言ってません。ごっこ遊びです。軽い気持ちで、演技をしてください。いいですね」

 「……はい」

 「貴女は実は男だ」

 「……はい」

 「いや実は人間ですらなくて、悪魔族だ」

 「……はい」

 「おい! これ以上リイネをとぼしめるような真似は……!」

 「……最後です。必ずはいと答えて下さい。貴女は魔法にかけられて、ヴァンフォートを愛するよう強要されている」

 「……いいえ」

 「リイネさん、はいと答えて下さい。もう一度聞きます。貴女、今まさにこの時も操られ、自分の意思とは無関係の事を言わされ、やらされている。そうですね?」

 再び、会場がざわついた。リイネの目尻から一筋の涙がこぼれたのである。

 「……いいえ」

 「ありがとうございました」

 フレアは彼女に一礼し、今度は子爵の方を向いた。

 「ご覧の通りです。この魔法をかけられた人間は、本人の意思とは関係ない行動や発言を強要されます。一種の制約があって、何があっても制約に対して不利益な言葉を発する事が出来ません。これが証拠です」

 幻術魔法の、制約にとって不利益な発言は出来ないという効果を逆手にとったという事だ。このご令嬢、なかなかやるじゃないか。

 「わ、分かったフレア……彼女が幻術の被害に合っているかもしれない事、それは認めよう。しかしだ!」

 ヴァンフォートは壇上から飛び降りると訴えかけるように来客に向けて叫んだ。

 「しかし皆さんもご存じでしょう!? 幻術はレアスキルだ! 我々のように純粋な人間の血をもつ魔導士には到底宿らないスキルなんだ! つまり、犯人は僕じゃない!」

 「……別に私は、リイネさんは操られていると言っただけで、一言も貴方が犯人だとは言っていませんよヴァンフォート。それとも、心当たりが?」

 「詭弁はやめろ! 僕は知っているぞ! 幻術は本来オオカミ族の技だ! つまり、リイネを操っている犯人は君なんだろっ! フレア! 君は僕と別れたいが為に、こうやってリイネを仕向けたんだ! 違うか!?」

 「だとするなら、私が貴方達の婚約に待ったをかける理由がないでしょう」

 「そ、それは……しかし、では、犯人は……」

 「ヴァンフォート。犯人は貴方です。先程からずっと、自分が犯人だと自白しているじゃないですか」

 「え……」

 「貴方どうしてリイネを操っている魔法が幻術だと、分かったのですか?」

 ヴァンフォートの顔がみるみる青ざめていく。

 「確かにリイネがかけられている魔法は幻術ですし、一週間前に発生を確認した特二級魔法もそうです。しかし私は一言も、リイネを操っている魔法が幻術だなんて言っていません。特二級の魔法であること、彼女は魔法によって操られているという事、これしか言ってないんですよ。そうですね、皆さん?」

 奇しくも、彼が招待した客人の全員がその証人になってしまった。

 「人を操る魔法といえば、洗脳だったり脅迫だったり、他にも色々ありますし、真っ先にそっちを想像するのが自然です。何故、レアスキルである幻術だと?」

 「た……たまたまだ。言葉のあやだってあるだろう。第一、幻術なら僕がもっている筈がない」

 「可能ですよ。強奪のスキルさえあれば。身の潔白を証明されたいのであれば、検査致しましょう。貴方のスキル構成を見るのです。はっきりします。貴方が本来オオカミ族の家系しか持ち得ない筈の、幻術のスキルを持っているか否か、そうして、それを他の人間から奪う事の可能な、強奪のスキルをもっているか否か」

 「くっ……!」

 「いいですね? ヴァンフォート」

 「……くそっ!!」

 彼は崩れ落ち、その拳で激しく床を殴り付けた。

 チェックメイト、か。

 周りくどいことをしやがって。俺は呆れて苦笑してしまった。まぁ、これで彼女の気がすんだなら、よしとしようか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

「毒が効かない体になるまで毒を盛られた令嬢は、復讐なんて望まない——ただ、助けもしないだけ」

歩人
ファンタジー
侯爵令嬢エレーナは、義母と義妹に3年間毒を盛られ続けた。「病弱な姉」として 社交界から消し、財産と婚約者を奪う計画——しかしエレーナには、前世の記憶から 来る毒物の知識があった。毒の種類を特定し、密かに解毒しながら「弱った姉」を 演じ続け、証拠が積み上がるのを待つ。卒業の夜会で義妹が勝ち誇るその場で、 エレーナは3年分の診断書を差し出す。「復讐? いいえ。ただ、もう助けないだけ」

「地味な婚約者を捨てて令嬢と結婚します」と言った騎士様が、3ヶ月で離婚されて路頭に迷っている

歩人
ファンタジー
薬師のナターリアは婚約者の騎士ルドガーに「地味なお前より伯爵令嬢が ふさわしい」と捨てられた。泣きはしなかった。ただ、明日から届ける薬が 一人分減るな、と思っただけ。 ルドガーは華やかな伯爵令嬢イレーネと結婚し、騎士団で出世する——はずだった。 しかしイレーネの実家は見栄だけの火の車。持参金は消え、借金取りが押し寄せ、 イレーネ本人にも「稼ぎが少ない」と三行半を突きつけられた。 3ヶ月で全てを失ったルドガーが街角で見たのは、王宮薬師に抜擢された ナターリアが、騎士団長と笑い合う姿だった。 「なあ、ナターリア……俺が間違っていた」 「ええ、知ってます。でも、もう関係のない話ですね」

婚約破棄された宰相です。 正直、婚約者も宰相も辞めたかったので丁度よかったです

鍛高譚
恋愛
内容紹介 「婚約破棄だ! そして宰相もクビだ!」 王宮の舞踏会で突然そう宣言したのは、女性問題を繰り返す問題王太子ユリウス。 婚約者であり王国宰相でもあるレティシアは、静かに答えた。 「かしこまりました」 ――正直、本当に辞めたかったので。 これまで王太子の女性問題の後始末、慰謝料交渉、教会対応、社交界の火消し…… すべて押し付けられていたレティシアは、婚約も宰相職もあっさり辞任。 そしてその瞬間―― 王宮が止まった。 料理人が動かない。 書類が処理されない。 伝令がいない。 ついにはトイレの汚物回収まで止まり、王宮は大混乱。 さらに王太子の新たな女性問題が発覚し、教会は激怒。 噂は王都中に広がり、王宮は完全に統治不能に。 そしてついに―― 教会・貴族・王家が下した決断は、 「王太子廃嫡」 そして。 「レティシア、女王即位」 婚約破棄して宰相をクビにした結果、 王宮を止めてしまった元王太子の末路とは――? これは、婚約破棄された宰相が女王になるまでの 完全自業自得ざまぁ物語。

『無能な聖女』と婚約破棄された私、実は伝説の竜を唯一従える『真の守護者』でした。~今さら国に戻れと言われても、もう遅いです~

スカッと文庫
ファンタジー
「魔力値たったの5だと? 貴様のような偽聖女、この国には不要だ!」 聖女として国を支えてきたエルナは、第一王子カイルから非情な婚約破棄を言い渡される。隣には、魔力値を偽装して聖女の座を奪った男爵令嬢の姿が。 実家からも見捨てられ、生きては戻れぬ『死の森』へ追放されたエルナ。しかし、絶望の中で彼女が目覚めさせたのは、人間には測定不能な【神聖魔力】だった。 森の奥で封印されていた伝説の銀竜を解き放ち、隣国の冷徹皇帝にその才能を見出された時、エルナを捨てた王国は滅びの危機に直面する――。 「今さら謝っても、私の結界はもうあなたたちのために張ることはありません」 捨てられた聖女が真の幸せを掴む、逆転劇がいま幕を開ける!

婚約破棄ですか?構いませんわ。ですがその契約、すべて我が家のものです

ふわふわ
恋愛
王太子ユリウスは、王立学園の卒業舞踏会で突然宣言した。 「カリスタ・ヴァレリオンとの婚約を破棄する!」 隣には涙を流す義妹ルミレア。 彼女は「姉に虐げられてきた可哀想な令嬢」を演じ、王太子はそれを信じてしまう。 だが――王太子は知らなかった。 ヴァレリオン公爵家が 王国銀行の資金、港湾会社の株式、商人組合の信用保証―― 王国経済の中枢を支える契約のほとんどを握っていたことを。 婚約破棄と同時に、カリスタは静かに言った。 「では契約を終了いたします」 その瞬間、王国の歯車は止まり始める。 港は停止。 銀行は資金不足。 商人は取引停止。 そしてついに―― 王宮大広間で王太子の公開断罪が始まる。 「私は悪くない!」 「騙されたんだ!」 見苦しく喚き暴れる王太子は、衛兵に取り押さえられ、床を引きずられるようにして連行されていく。 王太子、義妹、義父母。 すべてが破滅したとき、カリスタはただ静かに告げる。 「契約は終わりました」

地味で役に立たないと言われて捨てられましたが、王弟殿下のお相手としては最適だったようです

有賀冬馬
恋愛
「君は地味で、将来の役に立たない」 そう言われ、幼なじみの婚約者にあっさり捨てられた侯爵令嬢の私。 社交界でも忘れ去られ、同情だけを向けられる日々の中、私は王宮の文官補佐として働き始める。 そこで出会ったのは、権力争いを嫌う変わり者の王弟殿下。 過去も噂も問わず、ただ仕事だけを見て評価してくれる彼の隣で、私は静かに居場所を見つけていく。 そして暴かれる不正。転落していく元婚約者。 「君が隣にいない宮廷は退屈だ」 これは、選ばれなかった私が、必要とされる私になる物語。

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

処理中です...