魔法学園の令嬢ですが、婚約破棄され悪魔に囁かれました

しきど

文字の大きさ
13 / 15

13.皮肉な事だ

しおりを挟む
 ────



 「はいはい、それまでだ」

 不意に二階のテラスの方からそんな声が聞こえてきた。彼の姿を見た何人かが思わず悲鳴を上げてしまう。

 「あ、悪魔……!?」

 「どうもどうも、ああ失礼失礼、こんなナリをしているけど、これでも俺は教会の調査員だよ、ほら」

 と、ローブの中から手帳を取り出し、皆に示すカボチャ頭。

 誘ってはいたけど、まさか本当に来ていたとは。私は苦笑した。私の考えを尊重して、ずっと静観していてくれたのだろう。悪魔のくせに、律儀な奴。

 「さぁ、ヴァンフォートくん。必要なら俺が、この場で君のスキルを調べてやろう。学園の検査なんかよりよっぽど早く回答が出るぞ、どうする?」

 「……必要ない」

 「認めるんだな。分かった。じゃあ速やかにそこのお嬢さんにかけた幻術を解除したまえ。それから、フレアさんにもスキルを返すんだ。そっちはまぁ、今すぐこの場でとはいかないが」

 「……あぁ」

 「……調査員の方」

 グリルフェンは、声をかけてきたバルト子爵の方を向き答えた。

 「グリルフェン・アイザード・ウェンリールオールスだ。覚えてくれとは言わない」

 「グリルフェンさん。息子は……投獄ですか?」

 彼は、ううむ、と言った。

 「まぁ初犯だし、被害者次第だが、いきなり教会の厄介になる事はないんじゃない? 停学なり退学なり、処分は学園側で決める事になると思うよ」

 「……そうですか。ありがとうございます」

 「いや、そうなると思うって、ただの見解だよ。俺が決めるわけじゃない。俺は犯人を探しに来ただけ。な? フレア・ルナソル子爵令嬢?」

 「……なんで私にふるんですか?」

 急に矛先を向けられてびっくりする。

 「ヴァンフォート! このバカ息子がっ!」

 しかしそれ以上に子爵が急に大きな声を出した事に肩を震わせてしまった。

 「とんでもない事をしでかしてくれたな! 貴様は一族の恥だ!」

 ヴァンフォートはギリリと歯噛みをし、反発した。

 「父上には分からないでしょう! 僕がどれだけ、フレアとの婚約を不服に思っていたかなど!」

 「不服だった、だと?」

 「それはそうだ! 獣人という穢れた血を引いたものをツガイにあてるなど……兄ではなく、この僕に! いくら両家の約束だろうと、この上ない屈辱だっ!」

 癇癪を起こし、頭をかきむしって、天を仰ぐ。全く彼という人間とは重ならないが、そのポーズはまるで神に祈りを捧げる修道者のようであった。

 「……僕は、人間でいたかった……穢れた血を後世に伝える事が嫌だった。ただ、それだけだったんだ」

 子爵は深い溜め息を漏らした。ややあって、静かにこう語り始めた。

 「……なら教えてやろう。ヴァンフォート、貴様の血は既に、貴様の言う穢れというものに染まっているという事実を」

 「……え?」

 「我々の祖先にも獣人はいる。ハイエナ族だ。貴様の使った強奪の魔法も、彼等の血に由来するスキルものだ」

 「ぼ、僕が……ハイエナ族……!?」

 がっくりと崩れ落ちるヴァンフォート。

 「そんなっ……!!」

 ……まさか、彼も獣人の血を引く者だったなんて。

 皮肉な事だ。あれほど見下し、嫌悪していた存在が自分の中にもある。この時の彼の絶望は、私にも分かりかねるものだろう。分かりたくもないけれど。

 いやそもそも、私と別れたいだけだったら、それこそ、わざわざ新しい婚約者など作る必要はなかった。

 ヴァンフォートは、その要らぬ見栄によって自滅しただけなのだ。

 最後に、そういう捨て台詞吐いてやろうと思っていたのだけれど、もう彼の耳には私の声など届きはしないだろう。

 「……行きましょう、グリルフェン。もう用は済んだでしょう」

 私はそうカボチャ頭に語りかけた。

 「え? パーティーは?」

 「どう見たってそれどころじゃないでしょう」

 「いやしかしなぁ、もったいなくないかい?」

 と、チラリテーブルの上に並んだごちそうに目をやったのを、私は見逃さなかった。

 食いたいのか。いや、そもそも君は参加客じゃないし。

 「いいから」

 「ううむ」

 そう言って私は彼の手をとり、共に屋敷を後にした。

 外は、彼が一緒でなければ思わず涙が溢れてしまいそうなくらい、綺麗な星空が地平の彼方まで広がっていた──。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

「毒が効かない体になるまで毒を盛られた令嬢は、復讐なんて望まない——ただ、助けもしないだけ」

歩人
ファンタジー
侯爵令嬢エレーナは、義母と義妹に3年間毒を盛られ続けた。「病弱な姉」として 社交界から消し、財産と婚約者を奪う計画——しかしエレーナには、前世の記憶から 来る毒物の知識があった。毒の種類を特定し、密かに解毒しながら「弱った姉」を 演じ続け、証拠が積み上がるのを待つ。卒業の夜会で義妹が勝ち誇るその場で、 エレーナは3年分の診断書を差し出す。「復讐? いいえ。ただ、もう助けないだけ」

「地味な婚約者を捨てて令嬢と結婚します」と言った騎士様が、3ヶ月で離婚されて路頭に迷っている

歩人
ファンタジー
薬師のナターリアは婚約者の騎士ルドガーに「地味なお前より伯爵令嬢が ふさわしい」と捨てられた。泣きはしなかった。ただ、明日から届ける薬が 一人分減るな、と思っただけ。 ルドガーは華やかな伯爵令嬢イレーネと結婚し、騎士団で出世する——はずだった。 しかしイレーネの実家は見栄だけの火の車。持参金は消え、借金取りが押し寄せ、 イレーネ本人にも「稼ぎが少ない」と三行半を突きつけられた。 3ヶ月で全てを失ったルドガーが街角で見たのは、王宮薬師に抜擢された ナターリアが、騎士団長と笑い合う姿だった。 「なあ、ナターリア……俺が間違っていた」 「ええ、知ってます。でも、もう関係のない話ですね」

婚約破棄された宰相です。 正直、婚約者も宰相も辞めたかったので丁度よかったです

鍛高譚
恋愛
内容紹介 「婚約破棄だ! そして宰相もクビだ!」 王宮の舞踏会で突然そう宣言したのは、女性問題を繰り返す問題王太子ユリウス。 婚約者であり王国宰相でもあるレティシアは、静かに答えた。 「かしこまりました」 ――正直、本当に辞めたかったので。 これまで王太子の女性問題の後始末、慰謝料交渉、教会対応、社交界の火消し…… すべて押し付けられていたレティシアは、婚約も宰相職もあっさり辞任。 そしてその瞬間―― 王宮が止まった。 料理人が動かない。 書類が処理されない。 伝令がいない。 ついにはトイレの汚物回収まで止まり、王宮は大混乱。 さらに王太子の新たな女性問題が発覚し、教会は激怒。 噂は王都中に広がり、王宮は完全に統治不能に。 そしてついに―― 教会・貴族・王家が下した決断は、 「王太子廃嫡」 そして。 「レティシア、女王即位」 婚約破棄して宰相をクビにした結果、 王宮を止めてしまった元王太子の末路とは――? これは、婚約破棄された宰相が女王になるまでの 完全自業自得ざまぁ物語。

『無能な聖女』と婚約破棄された私、実は伝説の竜を唯一従える『真の守護者』でした。~今さら国に戻れと言われても、もう遅いです~

スカッと文庫
ファンタジー
「魔力値たったの5だと? 貴様のような偽聖女、この国には不要だ!」 聖女として国を支えてきたエルナは、第一王子カイルから非情な婚約破棄を言い渡される。隣には、魔力値を偽装して聖女の座を奪った男爵令嬢の姿が。 実家からも見捨てられ、生きては戻れぬ『死の森』へ追放されたエルナ。しかし、絶望の中で彼女が目覚めさせたのは、人間には測定不能な【神聖魔力】だった。 森の奥で封印されていた伝説の銀竜を解き放ち、隣国の冷徹皇帝にその才能を見出された時、エルナを捨てた王国は滅びの危機に直面する――。 「今さら謝っても、私の結界はもうあなたたちのために張ることはありません」 捨てられた聖女が真の幸せを掴む、逆転劇がいま幕を開ける!

婚約破棄ですか?構いませんわ。ですがその契約、すべて我が家のものです

ふわふわ
恋愛
王太子ユリウスは、王立学園の卒業舞踏会で突然宣言した。 「カリスタ・ヴァレリオンとの婚約を破棄する!」 隣には涙を流す義妹ルミレア。 彼女は「姉に虐げられてきた可哀想な令嬢」を演じ、王太子はそれを信じてしまう。 だが――王太子は知らなかった。 ヴァレリオン公爵家が 王国銀行の資金、港湾会社の株式、商人組合の信用保証―― 王国経済の中枢を支える契約のほとんどを握っていたことを。 婚約破棄と同時に、カリスタは静かに言った。 「では契約を終了いたします」 その瞬間、王国の歯車は止まり始める。 港は停止。 銀行は資金不足。 商人は取引停止。 そしてついに―― 王宮大広間で王太子の公開断罪が始まる。 「私は悪くない!」 「騙されたんだ!」 見苦しく喚き暴れる王太子は、衛兵に取り押さえられ、床を引きずられるようにして連行されていく。 王太子、義妹、義父母。 すべてが破滅したとき、カリスタはただ静かに告げる。 「契約は終わりました」

地味で役に立たないと言われて捨てられましたが、王弟殿下のお相手としては最適だったようです

有賀冬馬
恋愛
「君は地味で、将来の役に立たない」 そう言われ、幼なじみの婚約者にあっさり捨てられた侯爵令嬢の私。 社交界でも忘れ去られ、同情だけを向けられる日々の中、私は王宮の文官補佐として働き始める。 そこで出会ったのは、権力争いを嫌う変わり者の王弟殿下。 過去も噂も問わず、ただ仕事だけを見て評価してくれる彼の隣で、私は静かに居場所を見つけていく。 そして暴かれる不正。転落していく元婚約者。 「君が隣にいない宮廷は退屈だ」 これは、選ばれなかった私が、必要とされる私になる物語。

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

処理中です...